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無能扱いで追放したら、勇者パーティが半年で崩壊しました 〜装備も補給も撤退判断も全部俺がやってたと気づいても、もう遅い〜  作者: 芋平


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73/113

第73話 欲を、認める

 中心に立っているのは、

 自分ではなかった。


---


「この案件、

 僕がまとめます」


 迷いのない声。


 カイル・エストラは、

 自然に

 前へ出た。


---


 誰も、

 驚かない。


---


「頼む」


 上司も、

 あっさりと

 任せる。


---


 リーネは、

 一歩後ろから

 その光景を見ていた。


---


 以前なら。


---


 あそこに

 立っていたのは、

 自分だった。


---


「……」


 胸の奥が、

 少しだけ

 ざわつく。


---


 悔しいのか。


 寂しいのか。


 分からない。


---


「リーネさん、

 この資料、

 確認お願いします」


 カイルが

 振り向く。


---


「……分かった」


 受け取る。


 役割は、

 補助。


---


 会議は

 速い。


 判断も

 速い。


---


「それで行きます」


 カイルは

 即断する。


---


 周囲も、

 うなずく。


---


 リーネは、

 口を

 挟まない。


---


 問題は

 ない。


 間違いでも

 ない。


---


 ただ。


---


「……速い」


 思う。


---


 昔の

 自分のように。


---


 会議後。


---


「どうでした?」


 カイルが

 聞いてくる。


---


「……良かったと思う」


 本心だ。


---


「ですよね」


 迷いがない。


---


「スピードが

 大事ですから」


---


 その言葉に、

 うなずきかけて。


---


 止まる。


---


 スピードは

 大事だ。


 でも。


---


「……全部が?」


 小さく、

 胸の中で

 問いが

 浮かぶ。


---


 夕方。


---


 机に向かいながら、

 思い出す。


---


 期待されていた頃。


 任されていた頃。


 中心だった頃。


---


「……嬉しかった」


 ぽつりと

 漏れる。


---


 重かった。


 苦しかった。


 でも。


---


「……嬉しかった」


 それも、

 本当だ。


---


 期待に

 応えること。


 任されること。


 信じられること。


---


 あれを

 否定したくは

 ない。


---


 夜。


---


「……私は」


 静かな部屋で、

 自分に問う。


---


「……任されたかった?」


---


 答えは、

 すぐに出る。


---


「……うん」


---


 強くなりたい。


 逃げたいわけじゃない。


---


 ただ。


---


「……飲み込まれたくなかった」


---


 それだけだ。


---


 期待を

 拒絶したかった

 わけではない。


---


 期待に

 押し潰される

 形が

 嫌だった。


---


 リーネ・アルヴェインは、

 その夜、

 初めて

 はっきりと

 認めた。


---


 **私は、任されたい。**


---


 でも。


---


 **任され方は、

 選びたい。**

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