第109話 再設計
三日。
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その時間は、
短すぎた。
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だが。
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止まるわけにはいかない。
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ヴァルト市役所。
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会議室は、
夜でも明るかった。
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「まず整理します」
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リーネが言う。
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机の上には
地図が広げられている。
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空き地。
市場。
通路。
人の流れ。
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すべてが
書き込まれていた。
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「問題は三つです」
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指を立てる。
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「過密」
「無秩序」
「安全不足」
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担当官たちが
うなずく。
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「対策は?」
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カイルが聞く。
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「分けます」
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短い答え。
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「区画を分離」
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「通路を確保」
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「出店数を制限」
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地図に線を引く。
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赤い線。
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それは。
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“流れ”だった。
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「人の流れを固定します」
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「入口」
「通路」
「出口」
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「滞留を減らす」
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担当官が
驚く。
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「ここまで細かく……?」
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「必要です」
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リーネは即答する。
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「制度は」
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「現場で機能しないと意味がない」
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カイルが
ニヤッと笑う。
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「いいねえ」
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「ちゃんと現場見てる」
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次に。
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「許可制度を作ります」
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担当官が
顔を上げる。
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「許可?」
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「簡易許可です」
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「一日単位」
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「即時発行」
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「条件付き」
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紙を一枚出す。
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シンプルなフォーマット。
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「これだけ?」
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「これだけです」
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担当官が
戸惑う。
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「こんな簡単で……」
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「いいんです」
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「挑戦枠ですから」
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カイルが
笑う。
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「またそれか」
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「でも今回は正しいな」
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リーネは続ける。
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「条件は三つ」
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「安全確保」
「時間厳守」
「区域遵守」
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「違反した場合」
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「即停止」
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空気が引き締まる。
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「責任は?」
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「個人ではなく」
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「制度で管理します」
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担当官たちが
顔を見合わせる。
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少しずつ。
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理解が進む。
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「……なるほど」
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「自由ではあるが」
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「放置ではない」
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「そうです」
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リーネは
うなずく。
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「制御された自由です」
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その言葉に。
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カイルが
少しだけ笑う。
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「いいネーミングだな」
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夜が更ける。
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設計は続く。
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細かく。
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徹底的に。
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そして。
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三日後。
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空き地。
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以前とは
全く違う姿になっていた。
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整備された区画。
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広い通路。
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明確な入口と出口。
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整理された店舗。
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「……別物だな」
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カイルが
呟く。
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「はい」
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リーネは答える。
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「これが」
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「制度です」
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担当官が
静かに言う。
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「これなら……」
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「回るかもしれない」
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リーネは
前を見る。
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まだ始まっていない。
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ここからだ。
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「再開します」
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その一言で。
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第二段階が
始まった。
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