第104話 最初の改革
空き地の風景は、
数日で変わった。
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最初は一つだった仮設店舗。
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今は。
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二つ。
三つ。
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少しずつ増えている。
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「……増えたな」
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カイルが
感心したように言う。
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「はい」
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リーネも
静かにうなずく。
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最初に手伝った店主たち。
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そして。
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それを見ていた
別の店主たち。
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「やってみるか」
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その一言が
連鎖した。
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今。
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空き地は。
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小さな市場になっている。
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人も増えた。
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笑い声もある。
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以前のヴァルト市には
なかった光景。
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「これ」
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担当官が
呟く。
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「本当に同じ街か……?」
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数値では変わっていない。
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だが。
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空気は変わっている。
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「売上どうだ?」
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カイルが聞く。
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「黒字です」
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店主が答える。
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「小さいけど」
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「確実に」
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リーネは
資料を見る。
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数字が出ている。
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小さい。
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だが。
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確かに上がっている。
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「これなら」
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担当官が言う。
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「報告できるかもしれない」
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NEAへの報告。
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そして。
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議会への実績。
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カイルが
ニヤッと笑う。
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「どうだ?」
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「いけそうだろ」
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リーネは
少しだけ考える。
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そして。
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「まだです」
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即答だった。
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カイルが
眉を上げる。
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「え?」
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「これじゃダメか?」
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「ダメではありません」
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「ですが」
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リーネは
空き地を見る。
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賑わい。
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笑顔。
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活気。
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「これは」
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「一時的です」
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担当官が
顔をしかめる。
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「一時的?」
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「はい」
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「まだ制度ではない」
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沈黙。
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カイルが
腕を組む。
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「どういうことだ?」
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「今は」
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「“やっていい”状態です」
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「でも」
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「“続けられる仕組み”ではない」
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リーネの言葉は
静かだ。
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だが。
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本質だった。
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「人が動いたのは」
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「制度が変わったからではなく」
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「きっかけがあったから」
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カイルが
小さく笑う。
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「まあ俺だな」
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「ええ」
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即答。
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「おい」
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担当官が
少し考える。
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「……つまり」
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「このままだと」
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「また止まる?」
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「はい」
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リーネは
はっきり言う。
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「制度にしないと」
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「人は戻ります」
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沈黙。
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空き地の向こう。
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人が笑っている。
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だが。
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それはまだ。
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安定していない。
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「……じゃあどうする?」
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カイルが聞く。
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リーネは答える。
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「広げます」
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「制度として」
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担当官が
息を呑む。
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「この街全体に?」
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「はい」
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その言葉は。
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次の段階を意味していた。
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小さな成功。
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だが。
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ここからが本番だ。
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制度は。
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“成功すること”ではなく。
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“続くこと”が重要だからだ。
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