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第9話 魔法の森

森は思っていたよりも広大で小さな町くらいなら余裕で飲み込めてしまう。


学園が南側にあるとしたら北に向けて高さの異なる木々が近い距離で並んでいた。



「この木だね」

飛鳥は硬い表情で目の前に生えている大木を睨んだ。



「魔樹だよ、典型的な」


魔樹という首を真上に向けても全貌が見えない大樹は世界に6つあるという。


その魔樹からは夜魔獣がたくさん生成されるらしい。



その6つの魔樹には強力な結界が施されているはずだが、ここの魔樹にはそれがない。正しく言うとなくなってしまったらしい。



「この魔樹は主に精神に影響を与える干渉魔法を使うんだよ。それは人でも獣でも反応してしまう」



「その干渉魔法とかで夜魔獣を動かしてたっていうことか?」


「いや、夜魔獣は本能的に動いてるからその干渉は受けていない」

手でバツを作り、首を横に振った。



「うーん、じゃあこの木を倒せば夜魔獣はいなくなるんじゃないのか?」


それだったら単純だ。

だが、まぁそんな上手く行くはずもなく…。



「倒せると、思うか?この太さだぞ。それに魔術で守っているから傷もつけれない」

試しに、と飛鳥は指の先から鉄を生成し鋭い刃にして目の前の大木に向けて放った。


が、その刃は大木に触れたと思うほどの距離まですごい勢いで飛ぶと床に金属的な音を立てて落ちた。




「何回も試してるんだが、やっぱり無理だ」


飛鳥は悔しそうな顔をする。



「………菜留なる

一言悔しさを噛み殺すようにその名前を呟いた瞬間だった。



いきなり炎が滝のように落ちながら湊と飛鳥を囲ったのだった。


「炎が、どうして…」

湊は突然の出来事に戸惑いながら周りを見回した。





〈菜留の無事を知りたいか?〉




地響きのような低い声が地面の底から聞こえてくる。


なる?誰だろう…。

飛鳥は知っているんだろうかとそちらを見ると真っ青な顔をして立ち尽くしていた。


「飛鳥!?」


「菜留…、は今…」



〈いい状態ではないが教えてやろうか〉

また地面の底から誰かの声が響く。


「…___っ!?」


飛鳥の顔が絶望に堕ちたような顔になり、崩れ落ちた。

「大丈夫か?飛鳥…」


なんとなく察しはつきつつも地面に跪く飛鳥の背中に手を置いた。


〈お前の妹は私にとっての愉しみだ。だが、お前が約束を反故するようなことがあれば仕方ないがその(・・)愉しみは手放そう〉



「お前ぇぇ゛………」


今までに聞いたことがないくらいの低く怒りを含んだ声は憎悪の念が深く刻まれており、湊はその迫力に鳥肌がたった。



〈さてと、私は帰るとするかな。頼んだよ冬樹飛鳥君〉


その声の主がそういうとあたりに響いていた轟音がなくなり元の森の静けさが戻った。





「…なぁ、飛鳥。さっきは別に無理に聞かないって言ったけど、教えてくれないか?事情を」

自分の立っている地面を睨みながら真剣な声で言う。


静寂に満ちている鬱蒼とした森の中では飛鳥の荒い息遣いがやたら大きく聞こえた。



知りたい、友達が今何に侵されているのかを。


「…分かった。帰ってから話そう」

拳をぎゅっと血が滲むほどに握り締めて声を絞り出した。


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