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第7話 舞人

朝、目が覚めてなんとなく隣を見るとそこには半裸の状態で怪我を治している飛鳥がいた。


「飛鳥…、また行ったの?」

ゆっくりと体を起こしながら尋ねる。


「…っ、びっくりした。起きたんだ」


驚いて後退り困った様子で頭をかいた飛鳥。

湊は少し顔を険しくさせると飛鳥に近寄った。



「ダメだって…もしまた同じことがあったら助けれないよ?」


「………」

諭すように言うが飛鳥は顔を背けて何も言わない。


そんな飛鳥に腹が立ち湊はスマホと財布を手に取ると部屋を出た。


「心配して言ってんのに…」

ボソリと吐いたひとりごとが人気のない廊下に沈んだ。



そのまま食堂に向かい、朝食を取った後学園内の図書館に足を運んだ湊は意外にも現実離れしていてザ・魔法図書館という雰囲気を醸し出す建物に感嘆の声をあげる。



湊は大量にある本たちの中から数冊魔術系の本を選び、眺めが良い席に座った。



魔法の成り立ちのことやこの世界とあの世界の関係。

なぜ秘術館から出入り出来るのか。


もしかしたら別の場所にもそういうところがあるのかもしれない。

と、知りたいことは山の如しだ。

ただ、図書館で知ることにも限界があるだろう。



例えば…門外不出の魔術とか、国家機密の禁術とか。




そのためにも自分が無双して教える必要性を感じさせたい。



「まずは、飛鳥のことをどうにかしないと」





次の日…


今は朝の5時。この間出かけた時刻と同じくらいだ。

湊は目を閉じたまま飛鳥の動きを感じる。


ほんの数分前に起きて今は着替えているようだ。



微かに目を開けて飛鳥を見ると湊は驚いた。

この前は体つき以前に怪我に気を取られていたが、均等でムラのない筋肉のつき方だ。


服を着ていれば細めの青年くらいにしか見えなかったが中はこんなに鍛えていたなんて…。



ただ、その綺麗な体つきに傷なのはやはりこの間見た傷跡に新しく入ったであろう傷だ。




着替え終わった飛鳥は部屋を出て行った。


「よし」

湊は頭の中でもう一度計画を浮かべて笑みを作った。



飛鳥には追跡用の精霊をつけておいて、その精霊を通して様子を見ようと思っている。



湊はその様子を見ながら眉間にシワを寄せた。



結果、予想通り飛鳥は毎朝人気のない森の中で何かを課せられたように戦っていた。



飛鳥は何かを隠している。

絶対にそうだと湊は確信した。







「飛鳥…」


「どうした?数学でも教えようか?」

数学のテキストを閉じながら飛鳥は言った。

確かに教えてもらいたいが…。


「えっと…お前、明け方」




「黙れ」


いきなり飛鳥の冷たく鋭い視線が湊の目に刺さった。


「…は、?」


「僕のことは僕の勝手だろ」

低い声が2人のいる部屋に響いた。



「…」


ちょうど湊が口を開こうとすると、部屋の扉が開いた。


「飛鳥ーいる?」

入ってきたのはとてつもなく可愛い顔をした男子だった。




きゅるんとした大きな目は湊を見て嬉しそうに目を細めた。

「新しい子だ〜かっこいい」


その人は遠慮なく部屋に入ってきて立ち上がっていた湊の目の前に来て自分の身長と比較し始めた。


「ボクより高いなぁ。175くらい?」


「そう、です…」


「てことは飛鳥と同じくらいかな、いいねぇ」



困惑しているとそれまで睨んでいた飛鳥は毒気を抜かれたかのように固まってしまった。



「って飛鳥元気ないなぁ。大丈夫?」

しゃがんで飛鳥の顔を見ると背中に手を回してさすってあげていた。



「…ちょっと気分が悪いんだ。ごめん」

というと飛鳥はベッドに入って毛布を頭から被ってしまった。



「君、名前何?」


その少年は世話が焼けると言わんばかりの顔で湊に尋ねた。






「湊くんね!かっこいいね〜。ボクは舞人まいとよろしく〜」


舞人はあの後、散歩に誘った。

まぁ、その理由も察しがつく。



「んと、飛鳥とはどう?」


「いい人だけど…最近はあんまり…」

価値観の違いだと思う。

大切なものの価値観の。




「だよね、飛鳥はどうしようもなくバカだからなぁ」


「バカ?」


さっきの2人を見て下に見ている感じはしなかったが、実はこの舞人って…。


「違うよ?悪い意味じゃなくてむしろ尊敬している部分がね。飛鳥がここにいる理由に忠実に、忠実すぎることが…」


そこまで言って舞人は苦笑いを浮かべた。



「今は知るべきじゃないかなぁ。君はお子ちゃまだからね〜」



………。



「…おこ、ちゃ、ま?」

湊はあんぐりと口を開けた。


「うん!生粋の」

満面の笑みで言うな!

とツッコミたくなったが我慢だ。


それよりも…

「この間とか、今朝の飛鳥の行動の件は先生方に伝えるから」

精霊の記憶にインプットさせて後で先生たちに報告するつもりでいた。



このことに対しての反応を伺いたかった。



「…やめた方がいいよ〜、それは君にも飛鳥にもボクにも利にならないから」


舞人は軽い調子でだけど本気でそう言った。

その言い方に湊は唾を飲み込んだ。



「君がどうしても伝えたいなら止めるからさ。簡単にそういうこと言わない方がいい」


舞人の迫力に圧倒されながら湊は思考を巡らせた。




「教えてもらえないと…納得できないんで言いますよ?」

慎重に、慎重に言う。


ここは魔法が使える世界。

相手の強さは分からない、だから警戒している。





「ボクは知らないよ。飛鳥の本心なんて。だから言わない」



舞人と湊の間に深い静寂が満ちた。


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