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Karte.11-2「彼女たちは敵です」

【ハルト】……ベルアーデ帝国騎士団第七隊所属、双剣銃を手にイエへ寄り添う青年騎士。18歳。

【イエ】……極東ニフ国の乙女で、大体いつもレベル1なのにチートのような守護精霊の力を使える白魔法師。16歳。

【マリー】……ドワーフのミニマムレディ、妖精機シュネーヴィを操る魔導技師にして第七隊のメイドさん。19歳。

【シェリス】……第七隊隊長、魔法剣ならぬ魔法シャベルを振り回すハーフエルフの残念系王女。20歳。

【アリステラ】……イエを守護する自称『闇の精霊』にして、自称『勇者』。自称17歳。

「関係って……なんだよ、それ」

 ハルトは考えるより先に問い返していた。シロリドの眼光が青年騎士を捉える。

「知ってるかい? 『白式』っていうのはね、アタシらの間でも()()()()姿()が無いのさ。神話の中の恐ろしさばかりが独り歩きしちまったのか、各地の聖女教会にゃちょいとずつ違う姿の『白式』が伝わってるんだよ」

「……それは知らなかったが、納得はできる。昨日、街の資料館で見た『白式』は人間なんだか魔物なんだかよくわからない姿だったし」

「そ、つまり『真白の幽鬼』、『金色夢魔』、『赤き岩塊』、『灰なる人狼』……この概念以外はぶっちゃけなんでもありなのさね。となるとここで問題が出てくる」

 椅子と尻の間で潰れていた数枚の資料が取り出される。

「どうしてアンタらは、何から何まであの『白式』にそっくりなんだい?」

 その内の一枚には、目撃証言から寄せ集められたのだろう『白式』たちの全身図が描かれていた。

 それらと対になる構図で……ハルトたちから唯一没収されていた武器たちが描かれていた。

「それは……」

「『それは』、なんて言うもんじゃないよ。そいつぁ言い訳できない時に言う文句さ」

「そうだ! 我々の調べでは、その『白式』たちは貴様らを狙っていたように見えたともいうぞ!」

 と。枢機卿の誰かが叫べば、他の者たちも続く。

「フルオラニア資料館の予約情報を見るに、この国を訪れたのははじめてのようだな! そんなおまえたちと時を同じくして、あの異形どもは現れた!」

「これは偶然か!? そうでなくともその格好や押収した武器の数々まで、ヤツらに瓜二つではないか!」

「聖騎士隊が誤認するのも無理ありません、ええ、ええ。あの冒涜的な破壊力を鑑みれば、あなたたちが彼奴らを『撃退』したというのも首を傾げずには……」

 吹き抜けの御堂に紙鉄砲が鳴り響いた。

「黙っときなって言ったろうがい映りたがりどもが!」

 もはや言うまでもなく、シロリドの一喝だ。

「まったく酔狂なジジババどもだねえ人が言おうとしてることをさも憎たらしげにベラベラと。そんなに仕切りたいなら席替えしてやろうかい? どんなもんかお手並み拝見といこうじゃないか、ほら誰でもいいから手ぇ挙げてみな」

 ……睥睨するだけで、長机の守り人たちは手を隠してしまった。さもありなんといった風に、女教皇は第七隊へ肩をすくめる。

「まあこいつらの言ってることもまるっきり妄言じゃないのさ。1つ1つはこじつけや偶然で済むが、それが3つも4つも重なりゃ人を貶められる程度の状況証拠にゃなる。イヤだってんなら……自分たちの口で否定してみせるんだね」

 対してハルトたちは、しばし黙していた。

 もちろん言いたいことはいくらでもあるのだから、(基本的には)穏和なマリーだって言葉には出さずともプクーッと頬を膨らませていた。

「……めんどくせ~ぃ。任せるのだわ兄弟」

「はぁ!? っておい、座るな座るな!」

 そしてこの姫君にいたっては。丸投げというより自分の担当は終わっているとでもいうように、玉座が据えられた段へ腰かけた。

 しかし悲しいかな、ハルトは拒否できなかったのだ。

(うまく話さなきゃダメだ……)

 使命感とは少し違う。……傍らでいまだ俯きがちな乙女へと無意識に目が向けば、すでに覚悟は決まっていた。

 顔を上げたハルトに対して、シロリドが口の端を歪めたように見えた。

「ああちなみに言っておくけどね、アタシが目指す聖女教会は風通しの良さをウリにしてるのさ。このフローリナ礼拝堂の様子は年中無休で世界中の分教会に生中継してるから、嘘は吐かないほうが身のためだよ」

「な、っ……?」

 上を指差され、見てみれば。

 ーーギョガン ギョガン ギョガン……

 魚型の魔法具『ツーナ』たちが中空を泳ぎ、その出っ張った目で地上を俯瞰していた。

 そしてシロリドの玉座の陰をよくよく見れば、水槽型の魔法具『アクアズーム』が礼拝堂の立体幻影を映していたのだ。

(くそっ、どうする? アリステラのことは絶対話さないほうが良い……だけど、それで切り抜けられるか? 余計に怪しまれるんじゃ……)

 と、その時、

 ハルトは聞いた。風切り音に似せた口笛を。

 シェリスが。退屈そうに頬杖を付いた仕草に潜めて、天井の一点へ視線を送っていた。

 だからハルトは見ることができた……気づくことができた。

 天井近くの梁から、『光』がハルトの目めがけてちらつかされていたのを。

 そこに彼女がいた。

「……! ……!」

 あの楽隊員風シスター、エティルが妙な杖で光線のサインを送ってきていたのだ。

 両端にベルが据えられた、バトンのような杖で。

 彼女はそれを置くと、代わりに大きな羊皮紙を掲げた。

 そこには幅いっぱいにこう書かれていた。

 『嘘はつくな。ただし隠しごとがあるなら今は隠しておきな。Byシロリド』

 ……ハルトは面食らってしまった。

「どうしたんだい? これは裁判じゃないんだ、黙ってたって誰も弁護しちゃくれないよ」

 ……シロリドがこっそりとウインクしてきたので、なんともいえない面持ちになってしまった。

「……俺たちは……」

 だからこそハルトは、肩の力を抜くことができた。自分にできることへ集中できた。

「俺たちは、最近になってようやくまともに活動しはじめた騎士隊で……」

 ハルトは語った。

「ーーこの街には社会勉強の一環で来たんだ。帰ろうと思ってたらあの『白式』に出くわして、街を破壊しはじめたから戦ったんだよ。戦える人間として当然だろ』

 無難に、

「ーー追放された『星』の意志に代わり、在るべき形へ世界を廻すとかなんとか……俺たちもそれ以外には何も情報を得られなかったし、そもそも話の通じる相手じゃなかった」

 嘘はつかずに、

「ーー俺たちが見た限りでよければ、あいつらの戦いかたも話しておくよ。特にあの『赤き岩塊』はたぶん『無敵』の状態変化が永続付与されていて、持ってるスキルを全部使っても押し返すのがやっとだった』

 真摯に、

「ーー最後に。いくら調べてもらってもかまわないが、俺たちは偶然出会った仲間だ。俺たちはこの縁を大切にしてるし、あんたらに言われてるような疑惑はぶっちゃけ反吐しか出ないよ。……『白式』に似てる、なんて知るかよ」

 隠し事という『闇(人間性)』を受け入れながら。

「むしろ向こうが真似してるんじゃないかってキレそうなぐらいなんだ。妙な勘繰りはやめてくれ」

 唖然、呆然、それらを超越した気まずい静寂を背に受けながら……ハルトは語ってみせたのだ。

「……ハルトさん。私にも一つだけ」

「イエ?」

 するとどうだろう。イエが一歩踏み出した。

「星の意志に代わって世界を滅ぼす……あの『白式』さんたちは間違っています。正しいことなんて何もありません。私たちにとっても、彼女たちは敵です」

 ただし彼女が踏み出した先はシロリドではなく。……振り返ると、この礼拝堂を見ている皆へ断じてみせたのだ。

 ここまで朗々と語ってきたハルトが申し訳なく感じるほど、その一声は如実なる宣言だった。

「……聞いたねみんな。この子らは語るべきことを語ったよ」

 そしてシロリドが手を打った。

「これ以上根掘り葉掘り調べたいなら各々好きにしな。とりあえず、この場の結論はアタシが決めさせてもらうからね」

 チビた煙草をまた一本、灰皿へ積み上げて。

「釈放! ただし事と次第によっちゃまた召喚することもあるだろうから、せいぜいあの『白式』どもの続報を気にしとくんだね」

 拍手も喝采も無い。ただただ、ハルトたちは肩の力を抜いた。

 幸か不幸か第七隊の身元は明らかなわけで。一昔前に廃れた貴族政治でもあるまいし、特に正道を旨とする聖女教会において『推定有罪』は適切ではないだろう。

 ハルトが怖じ気づきそうになっていた礼拝堂の生中継もむしろ枢機卿たちの抑止となり、この期に及んでのハイリスクな追及を諦めさせていたのだ。

「エティル! この子らを案内してあげな!」

「ーーはっ、猊下! ユアホーリネス!!」

 ……ハルトたちが入場してきたのとは反対側の通用口から、いまいち隠しきれず息切れしながらエティルが現れて。

 騎士隊の拘束を解かれた第七隊は、悠々と退場していったのだった。


 ○


 礼拝堂での審問から、まもなく。

「こちらへどうぞであります! フォローミー!!」

「こちら、って」

 ハルトたちは聖庁舎から出る……ことなく、最上階の一室に通されていた。

「どなたかの……執務室ですか?」

「はい! 教皇猊下の執務室であります! オフィス!!」

 そこはパノラマガラスから天を望む、モノクロームな執務室だった。

 調度品はほとんどが大理石で設えられ、美術品として通じるほどの荘厳さに満ちている。

 基点となる執務机に、応接用だろうか小さめのテーブルセット。それにカーテンで秘された寝台と、大きすぎるようなクローゼット。

 ……それらが、室内の広さを『無駄』と断じるように中央へ寄せ集められていた。

「ありゃっ!? ハイフェアリーみっけ!」

 ーー こんにちは 第七 隊! ーー

 と、マリーが指差した先……、

 応接テーブルの上で、角付きフェアリーがおすわりしていた。

クリスタルの角はハイグレードフェアリー……略称ハイフェアリーの証。『INT』(啓蒙)と『RES』(人間性)値がより高いので術式の処理性能に秀でている。

 通常種フェアリーの機能が主に『念話』・『Fメール』・『《イークイップ》』・『《ステータス》』の四つのみにフィーチャーされているのに対して、ハイフェアリーは多種多様な応用術式をスマートに扱えるのだ。

 ーー マスターの到着 まで しばらく お待ちください! ーー

 標準装備のラバースーツではなく花を思わせるワンピース姿。内蔵定型文より自然に言葉を編んだカノジョの左右には二つのウィンドウが開かれていて。

『ーーやあおまえたち。内緒で参観させてもらっていたよ』

『ーーおつかれさん~。けったいな目に遭うてもうたなぁ』

「お、親父さんに女将さんっ?」

 ーー 幻影念話を 起動中 です! ーー

 ーー フレームレート 24FPSフェアリーパーセカンド! ーー

 幻影念話。ハイフェアリーだけが扱えるビジョン付きテレパシーによって、ベルアーデの帝王夫妻が映しだされていた。

 黒金色の軍服へ申し訳程度にマントを羽織った偉丈夫、帝王スツルク・アハトズィーベン・ベルアーデ。

 そして園芸師風のドレスとドリルじみたポニーテール金髪が際立つ、エルフな王妃ルーデリカ・ルル・ベルアーデだ。

「よぅ親父ぃお袋ぉ! なんでぃなんでぃ、こんなケンカぐれぇシェリスさんたちだけでナシつけられるってんのだわ」

『モチのロンやがな~、せやなかったらうちらの子として頼りないっちゅうねん』

『うん、おまえたちの親としては心配していないさ。ただしベルアーデ王家として放置というわけにいかないのでな、少しだけ根回しさせてもらったぞ』

「ーー図らずも傭兵帝国のお姫さんがたをしょっぴいちまったんだ、そりゃあ筋の一つも通しておかないと立ち行かないさね」

 背の向こうからの声と、足音も掻き消すほどの衣擦れの響き。

「猊下! おつかれさまであります! グッドワーク!!」

「あんたもね。適当に休んでおきな」

「はっ! 全力で~~休む~~であります! レスト!!」

「ほんとこの子はアホだね……」

 ズベーッと寝そべると瞬く間にいびきをかきはじめたエティルを蹴り除け、シロリドの登場だった。

『おかえり~シロばあちゃん。見とったらほんまモクモク吸いすぎやで、いくらハーブシガレットでも喫みまくったらええもんとちゃうんやさかい』

「そう思うなら今度はもっと強い葉を包みな。こんな駄菓子みたいなもんじゃアタシの喉は落ち着きゃしないよ」

『スーちゃんん~、うちのママルマンちゃん84号がくそみそに言われとるうう。次の()()()()重点地域はフルオラ半島にせぇへん?』

『こらこらシャレにならないぞルルさん。まだ西部も掌握できてないんだからその後考えような』

「ちょっとお二方っ、物騒なこと言ってないで説明してつかあさい? フルオラの教皇猊下って、たしか独立性を保つために他国とは直接的な外交をしないんじゃなかったかしらん?」

 そう、女教皇と帝王夫妻の間には既知の間柄のような遠慮の無さが見えていた。

『はは……実は俺たちみたいな首脳の間では公然の秘密なんだがね。女教皇シロリド猊下はフェアリーを使った非公式会談が大好きなのさ』

「からかってんじゃないよ『貴族殺し(ノーブレス)』。宗教国家とはいえ国は国さね、カシラが面突き合わせないでうまくいくもんかい」

『……20年も前の忌み名でからかわないでもらいたいんだがなあ』

「こちとら60年も前からこの国の権謀術数とやりあってんだよ、古傷の一つや二つ抉られたぐらいで情けない顔だねえ」

『とまあこんな感じの茶飲み友達やねん。まだいっぺんも直に会うたことはないんやけど。納得したぁ~? マリちゃん』

「う、うーん」

 シロリドは執務机から椅子をギギギギ引っ張ってくると応接テーブルの脇へ腰かけた。卓上のティーポットから直に麦コーヒーを呷ると、ウィンドウの向こうでスツルクとルルもハーブティーを啜った。

「なに突っ立ってんだい。座りなよアンタらも」

「けっ、ババアと間接キッスでコーヒー振る舞われたかねぇのだわ」

「安心しな、こいつぁアタシ専用だよ。茶と菓子は自分らで用意しな」

 ーー 『ハウフルチョーカー』 解除 ーー

 ーー 《ミニ・インベントリ》 ーー

 と、ハイフェアリーが演算すれば第七隊の首から魔封じの首枷が外れた。次いで簡易式の収納魔法から、続々とアイテムたちが排出される。

 二丁剣銃と、

 鉱石シャベルと、

 ーー ……ドック ーー

 ーー グランピーッ! ーー

 ーー ハッピ~ ーー

 ーー スリーピー…… ーー

 ーー バ、バッシュフル ーー

 ーー スニージー、っ、くしゅん! ーー

 ーー ドーピー? ーー

 鋼のメイドメカを成す、七つのパーツに搭乗した妖精隊だ。

「わああみんなあ~! おかえりいっ、寂しかったじゃろて~!」

「寂しかったのはおまえのほうだろぃ。へいイエ子っ、なんか飲みもんと食いもん!」

「わかりました。ミルクセーキとバーガーなら夜食用に作ってあったものが」

「ほんとに用意するのかよ。……ほんとありがたい、正直腹ペコだ」

 ーー 《インベントリ》 ーー

 得物を唯一持たないイエは、魔封じを解かれたこと自体が武器の返却である。次元の狭間からバスケットとリペアパウダーの大箱が取り出されると、まだ疲れ気味の第七隊は女教皇とともにテーブルを囲むのだ。

「あのー教皇猊下。聖女教会ってフェアリーの扱いにデリケートなんじゃあなかったんならあ? もっきゅもっきゅ」

「デリケートなだけさね。教義的には聖女に仇なした精霊の生まれ変わりともいえるからね、偉い神官ほど批判を恐れて遠ざけてるのさ」

 ーー 各 治療院の 状況を 集計します! 死傷者0 魔法治療中86 医学治療中31 累計治療完了者112 ーー

 シロリドはハイフェアリーを腕に乗せ、こちょこちょと愛でていた。

「だけどこんなに可愛くって役に立つ子たちを、どうしてそんなつまらん理由だけで払い除けるもんかね。おーよしよし」

「……治療院があるのですね。教皇さん、詳しく……」

「座りな白いのちゃん。逸る気持ちもわかるけどね、人にはやるべき時と場所ってもんがあるんだ。アタシゃそれを見極めるためにもこの子を使ってるんだよ」

 ……今にも飛び出していきそうだったイエは、まだ少し落ち着かない様子だったが座り直した。

「きっと大丈夫だ、イエ。こんな婆さんが『清く貧しく』な聖女教会のリーダーだっていうんだから、逆に頼りになるってもんだろ。な?」

「そう……ですね。シェリスさんのお父さんもお母さんも、王様らしくないのに素敵な方々です」

『イエくん?』『イーちゃん?』

 いちばん落ち着かなさそうだったのは画面越しの帝王夫妻だったが、ご両人が反論する前に咳払いが遮った。

「ふふん、生意気だが度胸はある小僧っ子だね。それじゃあ本題ついでにシスターらしく説法の一つでも垂れてやろうじゃないか」

 シロリドは大きすぎる袖を翻した。

「宗教の人間は誰も彼もが『清く貧しく』なんて言いがちだけどね。アタシに言わせりゃそれが人間らしくないってんだよ」

 斜に構えて女教皇は語る。

「人には欲もありゃ隠し事もある。それが人間性ってもんだし、そうでなきゃ人間じゃないのさ。アタシらは啓蒙()を旨にした集まりだけど、だからって(人間性)を捨てる道理は無い」

 闇は、『混沌』を顕すその概念から邪悪なものとして恐れられがちだ。しかし『調和』を顕す光が『反射』という一面をも有するように、人間性()には『受容』という一面がある。

「人の道とは(啓蒙)(人間性)を律すること。そして宗教ってもんは神話から己の律し方を学ぶ学問なのさ。それもわからずに清く正しく貧しくなんてガムシャラに唱えるだけの連中は、それこそ『困った時の神頼み』しかできない大馬鹿野郎どもなんだよ」

 いかにも、暗躍の彼女は神頼みより先に己のできることへ努めているようで。その一端である妖精が手の上で踊った。

「ま、ホントはこの子だって公にしてやりたいとこなんだが、立場上の建前ってもんがあるんでね。……アンタらもあるんだろ? 立場上の建前が」

 ウィンドウの中で、スツルクとルルが「話して大丈夫だったかな」「今さらやろ」と小声を交わしていて。

「さ、審問の続きだよ。今度は()()()を訊かせてもらうからね」

「……ええ。わかりました」

 応えたのはイエである。

 ローブの胸元から、抉られた『闇』のタリスマンをさらけ出した……。

(1話につき4部分構成の短編連作です)

(毎週月曜日、18時頃に更新中です)

(1話完結の翌週……つまり5週間に1回、次話の準備期間として更新にお休みを頂きます。よろしくお願いいたします)


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