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王の友  作者: ARIKA
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第4節

(あれがアーサーだな。あいつを討ち取れば、褒美は思いのままだ。)

皮で出来た胸当てと、兜を被った兵士が白銀の鎧の兵士に忍び寄っていた。

兵士は槍を腕に持つようにして胸に抱くと、1歩1歩慎重に近付いていく。兵士は目の前に落ちている宝を逃すまいと、息を殺しながら。早くなる呼吸を下唇を噛むことで、無理やりをさえようとしていた。しかし力が入りすぎているために、歯は柔らかい唇に食い込み血が流れ、口元は赤く染まっていた。

口の中は鉄の味と血の匂いが広がっていた、唾を飲み込むたびに熱い何かが喉を伝って。体内に流れっていく気がした、それは血なのか。それともただの勘違いなのか。

兵士にとってはどちらでも良かった、ただ目の前のお宝を逃さないようにするだけだった。

しかし、自分はアーサーを殺すことは出来るのか。兵士は先ほどの光景が目に焼き付いていた、それを振り払うために何度も頭を振るが。先ほどの光景がちらついている。

(あれは奇跡だった。もしかしたら、自分は戦う相手を間違えたのか。)

目を閉じると、先ほどの光景が浮かびあがってきた。

それはまるで風の様だった、その動きはあまりにも自然で。そこに居る事が当たり前であるかのように、一陣の白い風が兵士の横を通り過ぎた。

兜を抑えながらゆっくりと振り返ると、白馬に跨った白銀の兵士の後ろ姿があった。白馬の足元は跳ねた血と泥で汚れ、綺麗だった毛並みは見る影さえもなかった。それでもその足取りは力強く、何事にも負けない強さが感じられた。その馬に跨る兵士は、全身を白銀の鎧で覆っていた。鎧は光を反射して、まるで自ら光を発しているかのように見えた。しかし、その鎧も所々血がこびり付いていて。その部分は怪しい赤黒い光を放っている。相反する二つの光を放っていた、その鎧を見ていると。背中に冷たいものが流れるような、寒気と吐き気が襲ってきた。戦場で数多見てきたはずの光景だが、なぜかその背中は今まで感じた事がない感覚が全身を駆け巡った。脳が拒否反応を起こして、全身に危険信号を送っていた。だからこそ目を離すことが出来なかった。

その背中を眺めていると突然。全身を鎧で覆った騎馬兵が、白銀の兵士の行く手を遮る様に目の前に出ると。その手に握っていたクレイモアを、頭上高く持ち上げると。勢いよく振り降ろした、白銀の兵士は槍で剣を防ごうとしたが、勢いのついた一撃を耐えることが出来ずに。槍は真ん中からひしゃげる様に折れてしまった、それでも剣の勢いは収まらず。金属同士がぶつかる音が響くと、次の瞬間には金属を引っ掻く音に変わっていった。女性の悲鳴に似た耳をつく音に、耳を塞ぎたい衝動にかられたが。歯を食いしばりながら、力一杯拳を握った。指の爪が掌に突き刺さり、皮膚を突き破り血がしずくの様に垂らしながらも。白銀の兵士から一瞬たりとも目を離さなかった。瞬きを忘れた目は充血して、赤く腫れていた。

兜の表面を削った剣先は、白銀の兵士を切るとこが出来ず。最初の目的を果たす事が出来なかった、もう1cm深ければ兜の上からでも頭を砕くことが出来た。それでも剣は馬の固い肉を裂き、柔らかい筋肉を切断しながら。確実に馬の命を削っていった。骨に食い込むようにして、やっとその動きを止めた。

剣は馬の背中に深々と食い込むと、馬の嘶きが木霊した。

馬は兵士にもわかるほどの悲鳴を上げると、前足を折りながら体制を崩した。騎乗していた白銀の兵士は、体制を整えようと手綱を前後に動かしながら。立て直そうとしたが、倒れかけている馬を制御できるはずもなく。

投げ出され兵士は空中で一回転すると、背中から地面に叩き付けられていた。この後当然の様に、騎馬兵の追撃があるだろう。

兵士の生殺与奪の権を握っているのは、今見下ろしている騎馬兵の物だった。

剣を振り降ろして首を跳ねるも、馬の足で頭を砕く事さえもできた。ここからでも、騎馬兵が唇を舐めまわしているのが見える気がした。しかし、現実は自分達が思っているように進むとは限らない。その理由をすぐに理解することが出来た、目の前で起きた出来事として。

兵士は不思議な光景を目にした、普通なら馬もこのまま倒れるはずなのだが。

白馬は前足を折りながらも、その場に踏みとどまる様にして。膝を地面に付けると、相手の馬の喉に噛み付き。喉をかみ切る様にして、首を後方に力一杯引いた。歯の隙間からは大量の血が流れ出て、口元を赤く染め上げている。自身の血か、相手の馬の血かわからないほど。お互いの血が混ざりあっている、まるで生き血を啜っているかのように。白馬は糸が切れたように動かなくなると、そのまま覆いかぶさる様に倒れた。相手の騎馬兵も想像だにしない事で対応することが出来ずに、バランスを崩すと馬から振り落とされた。

一瞬の無重力の後に強烈な衝撃が、背中から全身に広がっていった。頭は地面に数度叩き付けられ、兜の中でも激しく揺れた。騎馬兵は脳を揺らされたために、脳震盪を起して。小刻みに動く様に痙攣を起すと、全く動かなくなってしまった。


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