第4節
「モーカム卿も動いたか、ならば我ら4陣も動くぞ。全軍前進敵軍を蹴散らせ。」
クレータム卿は戦場の反対側にいる、3陣が動くのを確認すると前進の号令を下した。
4陣の兵達は3陣とは対照的に、どこか落ち着いていた。
誰も声を上げずに列を乱さないで、静かに進んでいた。
まるでパレードなどを行進するように、ゆっくりと一糸乱れずに進んでいた。
クレータム卿はモーカム卿の様に、士気を上げるための演説もせずにただ自分に従うように言っただけだった。
クレータム卿自身心の奥底では先ほどの熱はまだ冷めておらず、すぐにでも叫び走り出したかった。
しかし、部下たちの中のクレータム卿は老練の指揮官、寡黙で冷静な人物だった。
そのイメージがしみ込んでいる中で、いつもと違う指揮を振るえば、味方を混乱させて士気の低下をしょうじさせる。
熱くなった頭を冷やしながら、現状を冷静に分析していた。
そのためクレータム卿は、自らの感情を押し殺して淡々といつも通りの命令を下した。
クレータム卿は気持ちを落ち着かせるために、汗ばんだ手を何度も開いたり握ったりを繰り返していた。
掌を握る度に爪が食い込んで、微かな痛みが伝わってきた。
その痛みは段々と強くなっていった、それは握る力が強くなってきて爪が深く食い込んでいったせいだった。
クレータム卿は腕に抱えていた兜を被ると、大きく深呼吸をして再び心を落ち着かせて。
右手を上げるとゆっくりと振り降ろして、再び前進の合図を送った。
両翼の3陣と4陣が前進したことで、必然的に将軍のいる本隊は戦場の後方に位置することになった。
傍から見ると将軍の本隊が孤立して、アーサーの作戦通りに進んでいるように見えるが。
全体の兵力を考えると、将軍の本隊は元々1000名の兵がいた。
そこにステインズの残した重歩兵1000が加わって、本隊だけでも2000の兵がいることになる。
それに3陣と4陣がそれぞれ1500の兵がいて、合わせると3000にもなった。
それに比べるとアーサーの軍は義勇兵を加えた3000名で、それも開戦直後の数であって、今は1陣と2陣も敵と交戦をしていてその数を減らしていた。
特にステインズの突撃は、想定内であってもその突破力はかなりもので、被害は少なくはなかった。
そして本隊もアーサーを逃がすために、騎馬兵と歩兵が後退していた。
そのため、アーサーの軍で戦える兵は最初の半分の1500にも満たない数しかいなかった。
全体の兵力差は5000対1500、3倍以上の兵力差があることになる、確かに将軍の1陣と2陣は甚大な被害をうけたが、戦場全体の優勢は揺るぎなかった。
なにより将軍は1陣と2陣の残兵を加えれば、その差は今以上に広っていた。




