表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王の友  作者: ARIKA
29/58

第4節

「はっはっは・・・」

セントは遠ざかっていく背中を追いかけて戦場を走っていた、普通は馬の速さに付いていけずに置いていかれるものだが。

その背中を見失うことはなかった、彼が馬の速さを抑えていたためでもあるが、それ以上に彼が身に着けている鎧が目印になっていた。

その鎧はアーサーが身に着けていた鎧と瓜二つで、金属製の表面は体が揺れるたびに光を乱反射させていた。

彼が通り過ぎるたびに、兵達は彼の方を振り返っていた。

その白金の鎧とその腰に着けた、カリバーンを見て皆は彼がアーサーだと錯覚をしていた。

もちろん腰の剣はカリバーンではなく、対の剣カレトヴルッフだった。しかし兵士達にその見分けがつくはずもなく、本人達さえ持たなければ分らないほど同じ外見をしていた。

(みんな、あれがアーサー様だと思って振り返っているのだろう。自分も先ほどの現場に居合わせなければ、気が付かないほどだし。)

セントは内心笑うのを堪えていたが、ふと一つの違和感を覚えた。

それは小さな違和感だった、普通なら疑問にも思わない事だった。

(アーサー様と護衛の方が似ている・・・・・珍しい黄金の瞳と髪の毛、背格好も同じくらいで年齢も近い。まさか・・・いや。)

疑問は疑念に変わる、セントの考えはあってはならない事だった。それでも1度考えてしまうとその思考は止まることはなかった。

(まさか兄弟・・双子・・。いや、ありえない。でも・・・)

その後ろ姿を見つめていた、一瞬彼の隣に別の後ろ姿がうすっらと浮かんできた。

その影は、彼と同じ格好をして、同じ馬に乗り同じ動きをしていた。

その影が次第に彼に重なっていった、そして影が重なると2つはまったく同じ動きをしていた。

セントはその影が、自分の憧れていたアーサーの後ろ姿だと気が付くのにそれほどの時間を要さなかった。

セントはその疑念も無理やり心の奥底に押し込めると、自らの頬を叩くとがむしゃらに走り出した。

この時心の奥に小さな棘が刺さってしまった、本人も気が付かないほどの小さな棘だったが。

しかし、どれだけ小さな棘でもそれが毒になり、少しずつでも広がっていくものだった。

それは本人が自覚しないうちに広がり、気が付いた時には取り返しのつかない事になる。

それでもセントは頭をからっぽにして走っていた、そのセントに続く様に通り過ぎて行った兵達も、彼の背中を追いかけて走り出していた。

一人二人と、まるでその背中に吸い込まれるように、何かに取りつかれたように陣形を無視して追いかけていた。

無秩序な動きを正すべき、隊長各の者さえその背中を追いかけていた。

彼を先頭に兵達が固まり、1本の槍のような形になっていた。

彼自身意図したわけではなかった、兵達も陣形を意識したわけではなかった。

自然にその形になったのだ、ただ目の前の希望に手を伸ばすために。

モーカム卿は前進していた3陣に追いつくと、すぐさま指揮官らしい兵を見つけだすと、周りにも聞こえるほどの大きな声で。

「第3陣は私の指示に従え、第4陣はクレータム卿が指示する。第3陣は私モーカムの指示に従え。異論があれば勝った後に聞く、その時私の首でもはねても構わない。しかし、今だけは私の指示に従え。私は将軍の命令で指揮権の委譲をされた、それだけは覚えておいてくれ。」

3陣の指揮官も、将軍の名と自らの命を懸けたモーカム卿の言葉に何も言い返すことが出来ずに。

兜を脱ぐと頭をかきむしると、頭を下げながら。

「了解。指示をお願いします。」

短く返事をした、モーカムは安どの息を吐くと勢いよく空気を吸い始めた。

「全軍このまま前進しろ、敵は中央に寄っているために側面はがら空きだ。敵が陣形を立て直す前に責め立てろ。ステインズ卿とウェリングバラ卿の敵討ちだ、殺しつくせ。」

肺一杯に詰め込んだ空気を吐き出しながら、隊全体に響かせるために大きな声で叫んだ。

兵達はステインズ卿とウェリングバラ卿の名前が出た瞬間、その顔つきが変わった。

その目には憎しみがこもり、歯を食いしばりながら掌を強く握っていた。

「2人の遺体を野ざらしにしていいのか、誰かが救わなければいけない。誰が救う、お前かそれともお前か。いや違うだろうお前たちで救い出せ、2人がどれだけ我々の為に尽力を尽くしてくれたか。忘れていはいないだろう、私も戦場で救われたことがある。ステインズ卿は豪快な所もあったが、よく皆を労う為に報奨金のすべてを酒につぎ込んで、我々に振る舞ってくれた。ウェリングバラ卿も何も言わずに、よく自分の報奨金を亡くなった部下達の家族に分け渡していた。」

兵達はモーカムの話にうなずいていた、中には泣き崩れる者もいた。

将軍だけではなく2人もかなりの人望があったのがよくわかった、モーカムはその感情最大限に利用するように、話を進めていた。

時には声を荒げて、時に悲しみに声を詰まらせていた。

兵達は段々と話に引き込まれていった、この中には2人に縁のない者もいた。

しかし、まるで自分も2人に会ったことがある様に思えてきた、一種の集団催眠だった。

個人の意識が集団に溶け込んで、自分の意思が集団の意識にすり替えられていた。

「全軍進め。アーサーを討ち取るぞ。」

モーカムは剣を振り上げると、そのまま勢いよく振り降ろした。

それを合図に3陣が走り出した、それぞれが奇声を上げながらがむしゃらに走り出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ