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王の友  作者: ARIKA
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第4節

(兵達の目つきが変わった、先ほどの脅えを残しながら。狂気で恐怖を誤魔化している。一時的な心理効果だが、これが一兵卒まで伝染すればいけるか。)

クロスビーは殺気立った兵達の顔色を窺いながら、冷静に状況を分析していた。

この場で将軍の意図に気付き、状況を理解していたのは彼だけだっだ。

老兵のクレータム卿でさえ、一度は狼狽えし覇気が失われていた、将軍の言葉を聞いて。途中まで出かけた弱音を飲み込み、その場の勢いに体を任せていた。

今までは古参であるため、兵達の意見を集約して上官への意見を述べたり。

会議などでは進行役を担ってきた、つまり全体を一歩後ろから見なければいけない立場だった。

確かに年の功もあった、しかしそれ以上に実績を残してきた。今は亡き将軍の副官として、数々の武功を上げ。

時には進言を行い、時にはなだめてきた。その数々の行動が結果に繋がり、今の立ち位置を形成していた。

しかし心の奥では、時には勢いに身を投じたい願望があった。何も考えずに流れに乗って、その場の状況に流されて、皆と高揚感を味わってみたかった。

今までは己が意思を殺してでも、将軍の安全と武功のみを考えていた。

自分一人の気持ちより、上官である将軍の事を一番に考えていたためである。幸か不幸かクレータム卿は副官としての才があった。

どんな組織でも1番は無理でも2・3番には向いていた、人を先導していく能力はなかったが、人を補佐する事には長けていた。

そんな彼だからこそ、初めて何も考えずに勢いに身を任せれる状況に歓喜し心が震えていた。

顔には笑みを浮かべ、握りしめた手は汗ばんでいた、小刻みに震える体を抑え込みながら。歯を食いしばっていた、そうでもしないとこの場で叫び声を上げて、走り出してしまいそうだった。

兵達にとって当たり前でもクレータム卿にとっては、新鮮で心躍る事だった。

「クレータム卿。」

将軍の激が飛んだ。

「はっ。」

クレータム卿はピンと背筋を伸ばすと、姿勢を正して体を硬直させた。

「貴様は右翼と合流して、そのまま敵部隊の側面を突け。そのまま敵部隊をおしこめろ、奴らが陣形を整える前におこなえ。モーカム卿。」

「はっ。」

「貴様は左翼部隊の指揮を取れ、敵右翼は任せる。貴様も敵部隊の側面を突いて、後方におしこめ。3・4陣で敵部隊を押し込めれば、敵の陣形は壊滅的なダメージを受ける。もう立て直しは行えない、可能なら敵部隊を中央に集めて包囲したいが。無理はするな、数の上でもこちらが多い。無理せずに奇策に気を付ければ負けはない。その後アーサーをどう料理するかは。」

将軍は口元の片方だけ上げると、不敵な笑みを浮かべた。

「お前たちに任せる。」

その一言は兵達の指揮を高めるのには十分な言葉だった、ここにいる者の中にはアーサーに友を兄弟を殺された者もいた。

だからこそ、日に日にアーサーに対する憎しみは膨れ上がっていた、その反面アーサーに対する恐怖と憧れも大きくなっていた。

もし自分が逆の立場なら、アーサーの様な人間になりたいと。民からは信頼され、味方からは憧れの目で見られる。

そう、誰もが英雄にあこがれていた。歴史に名を刻む本当の英雄に。

自分たちの名は、悪名として残る。いや、自分たちの名は悪名でさえ残らない。

もし残るとしても、将軍と共に反乱を起こした兵達。名すら残らない、反乱兵と歴史には刻まれるだろう。

それに比べて、アーサーは勝てば救国の英雄。負けても祖国に命を捧げた、忠臣として。後の人々に伝えられるだろう。

だからこそ、自分たちはアーサーに憧れる。しかし、アーサーが憎い。

そんな自分たちが、アーサーの命を握る立場に立てる。ただそれだけの優越感が兵達の士気を高めていた、ただの嫉妬や妬み。

己が理想のためでもなく、信念のためでもない。かっこ悪いが戦うには十分な理由だった。

「全員行け。アーサーが動く前に」

「了解。」

兵達は勢いよく走りだした、己が死地に向けて。

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