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王の友  作者: ARIKA
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第4節

アーサーの真上にあった太陽が傾き始めた頃、1人の伝令がアーサーの下に駆け込んできた。

「失礼します。」

「どうだ。」

「はっ。先ほどウェリングバラ卿の旗が、折れたのを確認しました。」

思いがけない知らせに、兵士たちの間にざわめきが起こった、そのざわめきが収まる間もなく、別の伝令が駆け込んできた。

「報告します。ステインズ卿らしき戦死者を発見しました。」

その報告で、兵士たちのざわめきは、どよめきに変わっていった。突然もたらされた朗報に歓喜の声を上げていた。しかし、中には「らしき」の単語に首を傾げるものもいた。疑問に思った1人には、ベディヴィアも含まれていた、彼女は小首を傾げると。

「らしき、とは何だ。正確な報告をしなさい。」

らしきを強調して、怒鳴るような声を上げると、兵士たちは静まり返り。先に来た伝令も萎縮して、肩を竦めていた。

後に来た伝令は、恐怖のあまり1度体を震えさせた後、額を地面に擦り付けると、震える声で。

「我が隊に突撃してきた騎馬で、他の兵に比べて体が大きく、高価な黒の鎧を着た兵士の死体を発見しました。その死体を守る様に、周りに兵士の死体がありました。しかしながら、その兵士は顔を馬に踏まれており、顔を確認知ることは困難でありまして。」

言葉の終わりに近づくほど、声は弱々しく小さくなっていった。

「そのため、ステインズ卿の可能性が高いと。思った次第で。それで、報告をしました。」

伝令は周りから注がれる視線に、脅えていた。歯をカタカタと鳴らし、手で体を抱きながら震えていた。そのため、言葉も変に区切られて聞きづらかった。

「アーサー様。例の策は、成功したと考えてもいいかと。」

「戦闘経験が豊富なだけに、上策より、下策の方が効果があるか。」

アーサーは誰に言うのではなく、そう呟くと、体を抱きながら震える兵士を見た。

伝令は目を合わすことが出来ず、ただ俯いているだけで、呼吸を荒げていた。

「敵は左右に展開している、第1部隊の側面を、両翼で攻撃してくる可能性が高い。このままだと、第1部隊の損害が大きくなる一方だ。本隊の歩兵と斥候隊を、第1部隊の援護に送れ。その後第2部隊を押し上げて、ウェリングバラ卿の部隊を攻撃して。敵の指揮系統を圧迫して、将軍に考える暇を与えさせるな。」

次々に下される命令に、ただ呆然と立ち尽くす兵士たち。

「何をしている、早くしないと敵が体制を立て直し、反撃してくる。そうなれば、数で劣る我々は不利だ。」

アーサーは動かない兵士に、苛立ちを覚え激を飛ばした。そのまま走り出しそうな勢いの、アーサーをなだめる様にベディヴィアが前に立ちふさがった。

「アーサー様。本体の9割の兵も援軍に送ったら、本隊は丸裸です。敵が大きく迂回してきたらどうしますか、援軍は歩兵だけにして、本隊は斥候隊に守らせながら、後退するのが得策かと。将軍は槍と盾を失いました、ここで引いても誰も我々の勝ちを疑いません。」

「そうですとも、もしかしたら他の諸侯も我々に賛同して。味方に付くかと、そうすれば戦わずとも敵は弱体化します。」

「確かにそうだな、盾と槍を失った将軍は内部崩壊をするかもな。」

「もしかしたら、王都では内部分裂を起こしているかも。」

「ここで万が一、アーサー様を失えば。勝てる戦いも、勝てませんぞ。」

ベディヴィアに続く様に、次々と堰を切って話し始めた。しかし、アーサーの表情は段々と険しくなっていき、突然立ち上がり。

「皆にもう一度問うぞ。ここで将軍を討たなければ、戦いは長引き他国が進行してくる。ここで終わらせるか。それとも、将軍と共に滅んで他国に領土を蹂躙されるか。どちらだ。」

アーサーは強い口調で言い放った、その言葉を聞いて皆口を噤んだ。

一瞬の静寂、誰も声を上げることが出来ずに、刻々と時間だけが進んで行った。

「主よ。」

静寂を破る一言が告げられた、簡単に言い放たれた言葉に驚き。この場にいたすべての人が、声の聞こえた方向に振り返った。

そこにいたのは、いつもアーサーの護衛をしていた。1人の兵士が跪いて、アーサーを見つめていた。その眼差しは鋭く、しかし暖かく不快感を与えるものではなかった。

皆の視線が1人の兵士に集まった、彼は柔和の笑みを浮かべると。

「主よ。ここは1度引いてください。」

「お前まで。」

彼は首を横に振ると、アーサーの言葉を遮りながら。

「援軍を送るのは賛成です。しかしながら、他の者の意見ももっともです。ここは一度後退して、戦場を広く見渡す時間が必要かと。それまでは、我々がこの場に踏みとどまり、この場を守ります。主は後方に下がり、敵部隊の連携の隙を付いて、部隊を繰り出すのが得策かと。」

「だがな。」

「主よ。皆は貴方の身が心配なのです。他の者に心配をかけないのも、司令官の務め。今まで司令官を失って、崩壊する部隊を幾つも見てきましたよね。その逆が、自分たちに起きないと言い切れますか。いえ、その光景を見ているからこそ、兵達は心配なのです。それに、将軍は不利を挽回するために、主のみを狙う可能性もあります。貴方は我々の旗印、生きていてください。」

彼は母親が子供に言い聞かせる様に、ゆっくりとした口調だった。他の者もその場に跪いて、言葉に合わせて頷いていた。

アーサーは項垂れると、大きいため息をつき、再び顔を上げて兵士達の顔を見渡した。

「わかった。」

息を吐くような言葉だったが、皆はその言葉に安堵を隠しきれなかった。

「ただし、援軍は送る。これだけは引けない。」

「わかりました。アーサー様が先ほど出した指示は実行します。くれぐれも、騎馬隊と後退してください。」

ベディヴィアはくれぐれもを、強調していた。しかし、先ほどと違い、その顔には笑みを浮かべていた。

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