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王の友  作者: ARIKA
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第4節

本隊では将軍が椅子に腰掛けながら前方の戦場を睨むように見ていた、その右手には兜を抱えるように持っていた、しだいに遠ざかる金属の叩く音と味方の足音を聞きながら、戦況を見守っていた。

不意に戦場に響いていたすべての音が消えてしまった、将軍の周りに居る兵士たちも不思議そうな顔をしながら、首をかしげていた。

1人の老兵が将軍に近付くと、少し腰を屈めながら耳元に口を寄せてきた。

「将軍。少々前線を見てまいります。」

その老兵は副将のクレータム卿だった、将軍は少しの間の後ゆっくりと頷いた、クレータム卿は将軍が頷くのを確認すると、将軍の前に出て一礼をした。

「失礼します。」

顔を上げるとタイミングを見計らった様に、兵士が馬の手綱を引っ張ってきた。

クレータム卿は手綱を受け取ると、そのまま馬に跨り前線に向かって駆けだした。

陣形の間を縫うように、進んで行くと再び金属の叩く音が聞こえ始めた、思わずほっと気息をついて安堵し、馬のスピードを落としていった。

そのまま2陣を抜けて、目の前が開けると丁度1陣が槍を構えて敵先頭に攻撃を仕掛ける時だった。

しかし、その時目の前で信じられない事が起きた、敵先頭が左右に分けれて後方の部隊と入れ替わったのだ。

これはまさか、クレータム卿は呼吸をするのを忘れて、食い入る様にうつり変わっていく戦場を見ていた。

アーサーの軍の先頭が左右に分かれて、ウェリングバラの両脇に回ったのを見ると、はっとするとそのまま馬の踵を返して駆けだした。

馬の腹を何度も蹴って、スピードを上げながら先ほど通ってきた道を逆に進んで、将軍の下に急いだ。

後方には情報が届いていないようで、進むほど兵の動揺はなかったが、空気が変わったのを察したのか、すれ違う兵士の顔つきは先ほどより険しく見えた。

将軍の下にたどり着くと、口で呼吸をしたまま急いで下馬した。

将軍も何かを察したように、眉間に皺がより視線が先ほどよりさらに鋭くなった。

「報告します。先ほど1陣のウェリングバラ卿が、アーサー軍に攻めかかろうとしたところ。」

荒い息を整える為に、1度言葉を切って深呼吸すると。

「アーサー軍に包囲されて、殲滅の危機に陥ってます。」

焦りと混乱のあまり経緯を省略したため、きちんとした報告が出来ず、周りの兵士たちは困惑して顔を見合わせた、すると将軍が重い口を開いた。

「なぜ、ウェリングバラが包囲されたのだ。」

それは皆が聞きたかった事だった、クレータム卿は最初何を聞かれているのか理解できていなかったが、眉間に皺を寄せて考える仕草をすると、次第に口と目が開いていって、何かに気が付いたのか急いで一礼すると。

「申し訳ありません。アーサーの軍は先の戦いで、ガイド卿が行った作戦の応用で、1陣目を左右に展開させて。その後方の2陣目の弓隊にウェリングバラ卿の部隊の足止めをし、左右に展開させた1陣でウェリングバラ卿の両脇を攻撃する様にして包囲しました。」

「包囲殲滅か。」

将軍は呟くように話と、深いため息をついて空を見上げた、開戦前まで空を覆っていた雲はなく、青空が広がり光が降り注いでいた。

その中を1羽の鳥が風に乗って空を飛んでいた、その鳥を目で追っていると。

「将軍、失礼します。」

急に名前を呼ばれて現実に引き戻されて、視線を下げていくと1人の兵士が跪いていた。

その兵士の鎧には赤い血が斑点様に付き、足元は土と泥で汚れていた。

「確かウェリングバラの副官クロスビーだったか、援軍の要請か。」

「いえ、違います。」

「ならば何用だ。」

隣にいたクレータム卿が立ち上がり見下ろすようにしていた、その口調は強めで珍しく苛立ちを隠しきれていなかった。

クロスビーは顔を上げて、将軍の目を真っ直ぐ見るとその口を開いた。

「私はステインズ様の命令でここに居ます。」

「ステインズ、なぜ2陣の者の名前が出てくる。」

「それは。」

将軍は立ち上がると、なだめる様に左手を突き出した。

「よい。続きを話せ。」

「私は主ウェリングバラの命令で、ステインズ様の下に伝言を伝えに行きました。そして、ステインズ様から将軍への言葉を伝えるためにここに来ました。ステインズ様は将軍へ、我は友と飲む酒が、我が最高の酒。生涯の友の所に酒を飲みに行くと。」

将軍は目を瞑ると、目頭に指を当てて再び空を見上げた、先ほど飛んでいた鳥はどこかに行ってしまったのか見当たらず、雲が静かに流れていた。

「ウェリングバラは何か言ってなかったか。」

「我が主は何も伝えなくても分ると、そう言ってました。」

「ウェリングバラのみならず、ステインズも覚悟を決めたのか。なぜか年を取ると涙もろくなるものだ。」

その目からは涙が溢れ出て頬を伝っていた、その涙を拭いもせずにただ空を見上げていた。

クレータム卿や周りに居た兵士も、俯くようにして涙をこらえていた。

「ステインズは攻撃にでたのか。」

クロスビーは溢れ出る涙を拭いながら、涙声のまま。

「敵左翼の動きが鈍いため、騎馬で攻撃をしかける。残していく歩兵は将軍の指示で動かせと。」

「感情のみで、動いているわけではないのだな。特に咎める事はない、クレータム。先の戦いで、ガイド卿に作戦の提案したのは貴殿だと聞いている。この作戦の利点と弱点、アーサーのこの後の動きを、推測でいいが貴殿の意見を聞きたい。」

この場の人の視線がクレータム卿に注がれた、1度咳払いをすると。

「この作戦は部隊の連動が1番重要で、敵をギリギリまで引き付けて陣の入れ替えを行い。敵部隊の不意と、みえていた敵の兵科が変わることで急な対応が出来ず。2つの意味で混乱と被害をあたえれます、そして1陣目の部隊を敵側面と、後方まで延ばすことが出来れば、包囲殲滅も可能です。しかし、連動が不十分なら陣形が乱れ、逆にこちらが混乱崩壊に陥りかねません。先の戦いでは、全体の練度と士気が低く、連携が難しかったため1陣と2陣の入れ替えのみでいきました。結果論でありますが、アーサーの動きは理想でした。」

その言葉を聞いて、奥歯を噛みしめる者や俯く者がいた。

「しかし、他にも弱点があります。今敵側面に展開と言いましたが、後方に回らずに両脇から挟撃しているなら。敵は弱い側面をさらしているはずで、そこを突けば一気に崩壊させることも出来るかと。その点ステインズ卿の動きは適切かと、足の速い騎馬のみで側面を突いて、そのまま突破すれば。敵部隊を崩壊させつつ、味方の救援や敵前列の側面にも回れます。私がアーサーなら、伏兵を置いて突撃を防ぎますが。辺り一面に身を隠せるところはないため、馬除けの柵かもしくは。」

辺りを見渡す仕草をした後、何かに気が付いたのか目を見開いて言葉が途切れた。

「どうした、続きを。」

「申し訳ありません。私ならわざとステインズ卿に左翼部隊を攻撃させて、左翼部隊をそのまま後退させた後に、何か足止めの罠を仕掛けて、動けなくした後にステインズ卿とウェリングバラ卿の部隊を1か所に集めて殲滅します。」

それは最悪の予想だった、空気が凍りついたように沈黙が流れた。

「それなら、わざと左翼に隙を見せたという事か。」

もう涙と流している者はいなく、クレータム卿の話に聞き入っていた、話が進むたびに不安な顔つきをする者が増えていった。

将軍は兵士たちの顔を見渡すと、左手を横に薙ぎ払うと。

「落ち着け、これは最悪の事態の場合だ。最悪の事態を想定するのはいいが、それに飲まれるな。我々が出来る事は、クレータム卿の話した通りに進んだ時の対応策と、ステインズが成功した時の対応だ。」

将軍が一喝すると、周りは静まり返り真剣な顔つきに戻っていった。

将軍が再び口を開こうとしたとき、1人の伝令が駆け込んできた。

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