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王の友  作者: ARIKA
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第4節

ステインズは目の前で起こっている光景を理解するのに、少しの時間を要した。

幾つもの思考が駆け巡ったが、結局一番シンプルな答えにたどりついた、ただ自分の目の前でウェリングバラの部隊が窮地に立っている、ただそれでけだった。

「バリー。」

ステインズは大きな声を上げると、副官であるバリーを呼び付けていた。

「ここに。」

声の主は、ステインズより2回りは小さく目じりには皺が寄っていて、髪の毛のほとんどが白髪の50代ぐらいの老兵で、傍から見れば親子ほどに年が離れていた。

バリーと呼ばれた老兵は、ステインズが生まれてから彼の守り役として、数十年共に苦楽を共にしてきていた。

「目の前で友軍が窮地に落ちている、それを見逃すのは末代までの端だと思わないか。」

「確かに、友軍の窮地ですが。会議でもいっていましたが、想定内かと思います。ウェリングバラ様もそれを承知で、自分から言い出したのではないですか。」

ステインズは凍りつくような鋭い視線でバリーを睨めつけたが、バリーはそれでも全く動じてはいなかった。

2人の間に沈黙が長れていた、そんな時1人の兵士が駆け込んできた。

「お前は。」

ステインズはその兵士の顔に見覚えがあり、驚きを隠せなかった。

「貴殿はウェリングバラ様の、副官のクロスビー殿でしたか。」

バリーの問いに、頷きステインズの方に体を向けると。

「我が主、ウェリングバラ様の伝言をお伝えします。」

「ウェリングバラは来ていないのか。どこにいる、まさか。」

「我が主の言葉をそのままお伝えするので、失礼に当たる部分があると思いますが。なにとぞ最後まで聞いてください、処分はそのあといくらでも受けます。」

彼はそう言うと、額を地面に擦り付けるようにして頭を深く下げた。

バリーはステインズの顔をじっと見ていた、ステインズは首をゆっくり縦に振ると。

「許す。」

静かな声で一言だけ発した、歯を食いしばり覚悟決める声だった。

「それでは。我が生涯の友ステインズよ、私は当初の予定道理この場にとどまり、敵の出方を見るつもりだ。アーサーは俺の予想以上の男かもしれない、それでも俺は自分の役割は全うする。お前も熱くならずに作戦道理動け、お前は変に神経質なくせに1回熱くなると周りが見えなくなる。正直お前と一緒に戦場に出て何回死にそうになったか、だがなどんな事の後でもお前と飲む酒は最高だった。次共に酒を飲みかわすのはアヴァロンでかもしれない、最上級の酒を用意しておく。またなステインズ我が生涯の友よ。」

話の途中から涙声に変わっていたが、最後まで言い切るとその場に泣き崩れた。

ステインズも人目をはばからずに、涙を流しながら空に向かって雄たけびを上げていた。

流れ落ちる涙の1つ1つに思いであるように、彼の中で友との思い出が渦巻いていた。

「バリー。騎馬隊に突撃の合図を、歩兵はこの場に残り将軍の指示を待てと伝えろ。」

「ステインズ様、先ほども言いましたがここは抑えてください。」

「バリー勘違いするな。死にに逝くつもりはない、ここから見ていたら敵左翼の動きが鈍かった。展開する時の足並みの乱れ、そして何より右翼が展開してから幾分か後に展開が終わっていた。罠の可能性もあるが、あの状況で態々隙を見せるとは思えない。あの時間があればもうウェリングバラの部隊は殲滅されていた、それほど動きが鈍かった。そこで足の速く固い、重騎馬兵500で敵左翼の側面を突き、そのまま敵左翼を真っ二つにして、敵2陣の横を突くのもよし。隙あらば敵本隊の側面に回り込んで、アーサーの首を取る。」

バリーは口元に手を当てて、少し頷きながら考えるように唸っていた。

クロスビーはステインズが、ここまで冷静に状況を分析しているとは思っていなく、呆然としながら素直に感心していた。

「私もお供します。」

「爺が好きにしろ、しかし歳だから遅れても知らんぞ。我が槍を持て。」

バリーは軽く一礼すると、自分の馬に飛び乗った、その動きは年齢を感じさせない軽い動きだった。

ステインズの声が響くと、兵士が1本の槍を2人がかりで抱えながらやってきた。

その槍はランスと言われる、細長い円錐状の槍で長さが3メートルほどあり、他のランスより長く太かった、その分重量も増えて扱いが難しくなるが、彼はこのランスを好み今まで数々の戦功をあげてきた。

彼の乗る馬は、頭から鉄で出来た兜で覆われて、その全身を薄く長方形の金属製の板を、まるですだれのようにして纏っていた、すだれの様につなげる事で馬の動きを制限しない作りになっていた。

同じ装備をした重騎馬兵が彼の号令を待つかのように後ろに並んでいた、彼と唯一異なることろは、鎧の色とランスの長さが2メートルほどだった所だけだった。

「クロスビー。ウェリングバラは将軍への伝言はあったか。」

「いいえ、特に何も。伝えなくても分ると、そう仰ってました。

沈んだ暗い声だった、心なしか俯いているようにも見えた。

「ならば、貴様が俺の伝言を将軍に伝えろ。」

クロスビーはステインズの顔を見上げるように見ると。

「私にですか。」

「そうだ、貴様が伝えろ。ウェリングバラから死ぬなと命令されてるだろう。」

「なぜそれを。」

「あいつなら必ずそう言う。俺からも改めて命令する、この戦い必ず生き残れ。そしてどんな結末でも、最後までこの国の行く末を見届けろ。どんな手を使ってもだ。」

「なぜ、そんなに私を。」

クロスビーは言葉を詰まらせながら、弱々しい口調だった。

「ウェリングバラが貴様の事をよく自慢していた、自分にはすぎたる部下だとな。正直俺も貴様の事を評価している、友の部下ではなければ引き抜いていたぞ。」

後半は冗談めかして少し笑っていたが、その言葉の一つ一つに力がこもっていた。

クロスビーは感激のあまり再び涙を流した、今日だけで何度目かわからない涙を、悲しみなのか感激なのかは自分でもわからなかった。

そんな彼から視線を外して、前を振り向くとそのまま。

「将軍に伝えてくれ。我も友と飲む酒が、我が最高の酒。生涯の友の所に酒を飲みに行くと。確かに頼んだぞ。」

ステインズは言い終えると、そのまま馬の腹を蹴りそのままゆっくと進み始めた、その後ろを部下たちも馬の腹を蹴って進み始めた。

クロスビーは遠ざかる背中に、見えなくなるまで頭を下げ続けた。

「バリーすまない。こんな戦いに付き合せてしまって、お前は」

「すべてを言わないで下さい、私は貴方様の父ニール様に仕えて。貴方様が生まれて、そのまま守り役になりました。これほど光栄で名誉な事はありませんでした、最後まで付いていきますよ。坊っちゃん。」

バリーは柔らかい笑みを浮かべていた、それはまるで自分の子を見る親の様な笑みだった。

「坊っちゃんか。久しぶりに聞いたがまるで昔に戻ったみたいだな、だがいつまでもガキ扱いするなよ。俺はステインズ、ニールの息子で将軍の槍だ。その槍に貫けるものはないと言われているんだ。」

馬上で大袈裟にランスを肩に担ぐ真似をしながら、彼も微笑んでいた。

「構え。」

彼は真剣な顔つきなると号令をかけた、そして右手に持ったランスを右脇に抱えるように持つと、そのまま近付く敵の側面に突撃を仕掛けた。


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