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王の友  作者: ARIKA
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第4節

伝令が王都に駆け込み、砦陥落の知らせが将軍の下に知らされた。

謁見の間で知らせを受けた将軍は思わず、手に持っていた手紙が、自らの意思を持っているかのように、将軍の手から逃れてそのまま重力に従いながら、ゆっくりと左右に揺れながら足もとに落ちた。周りに居た兵達も早すぎる陥落に衝撃を受けて、呆然と立ち尽くす者や、口を開けたままの者もいた。

将軍は手紙を拾うこともなく立ち上がると、すぐに方針の変更をするために主だったものを集めた。

兵士たちは、走る様に部屋を出ていった、その後ろ姿を見送った後静かに椅子に座り、自分の考えをまとめ始めた、兵を走らした時間で状況の整理と、方針の転換の考えを巡らした、それから30分もしないうちに人が集まってきた、その中にはクレータム卿の姿もあった。

将軍は辺りを見渡すように顔ぶれをを確認すると、再び立ち上がり重い口を開いた。

「皆聞いていると思うが、つい先日クレイガボン砦が僅か1日で陥落した。約1000名ほどいた守備兵のほとんどは戦死、残った者も捕虜になり捕まった。この戦いで前線指揮を執っていた、カールトン卿は戦死、司令官のコービー卿は捕虜になった。物資は半年分はあり、数か月は敵を足止めして、我らの部隊との挟撃は不可能になった。正直アーサーがここまでやれるとは思ってはいなかった、初陣から今まで不利な状況を、奇襲や奇策を使って打ち破ってきた。もう新兵と侮れない、歴戦の指揮官として当たらなければ、再び敗れる可能性がある。ケイリー周辺の状況を報告しろ。」

将軍の横に立っていた、副官と思われる40歳前後の長髪の男が1歩前に出てきた。

「了解。現時隣国は、去年占領した地域の統治がうまくいってなく、断続的な反抗を受けているために、我らの国に攻撃してくる心配はありません。しかし、それも収束に向かってきていると報告が入ってきました。そのため、すぐにとは言いませんが、収束後戦力を整えば十分我が国に攻め込んでくる可能性があります。国内ではアーサーの勢いが強く、中立を保っていた者や、早期に我らに下っていた者の中から、アーサー陣営に駆け込むのが増えてきています。クレイガボン砦の一件で更に、アーサーに付くものが増える可能性があります。緘口令を敷いていますが、民の中で広がるのも時間の問題かと。そうなると、商人もアーサー寄りになる可能性が高く、物資の確保や輸送の心配も出てきます。可能性の問題が多いですが楽観視できる状態ではありません。」

現状が報告されるにつれて、集まった者達の顔には焦りの色が隠せなくなってきた。俯くものが多い中から、後ろの方で1本の腕が挙げられた、その腕は皺が多く、老いた腕だったがその太さは、年を思わせないほど太く幾つもの古傷があった。

その主は、先日の戦いで苦汁をなめさせられた、クレータム卿だった、将軍が頷くと前に居た兵達が、次々と左右に分かれて1本の道を作り出した。

その道を静かな足取りで進んだ、皆クレータム卿を見ていたが、それは卑下や見下す目ではなく、興味、驚き、期待が込められていた。人の視線の中を進み最前列に出ると、跪き頭を下げた。

「先の戦いでの失態がある中、こうして呼ばれ再び発言を許してくれたこと、感謝しきれません。」

「そう言うな、皆も貴殿の功績を疑っている者はいない。先の戦いも、よく兵をまとめ上げてくれた。」

「しかし、先の戦いで数多の将兵と、司令官までも失う失態。副将に任じてくれた将軍の期待に応えられず、死んで逝った者達に示しがつきません。」

「そこまで言うなら、次の戦場で挽回をしてくれ。どんな者も勝ち続ける事はできない、いつか負けるのだから。」

「了解。その言葉には感謝しきれません。それで、今回の事ですが。自分は戦場でアーサーと対峙しました、その時感じた事なのですが。奴の軍勢の士気は異常に高く、民たちの中でアークトゥルス王の再来と言われているのは、伊達ではありません、しかも今までの常識では使われない策を使います。難しい策と、簡単な策を組み合わせる事で今までの常識を無視しています。あるいみ子供のイタズラじみた所も垣間見えました、次当たる時は2流3流の愚策を使ってくる可能性が高いと、小官は考えます。具体的なことがなく、推測で物事を語っていますが。どうか心の隅に置いてもらえれば、死んで逝った者も少しは救われるかと。」

クレータム卿の声が部屋の中に響き、水を打ったように静かになった、その沈黙を破ったのは、黒い鎧で身を包んだ巨漢な兵士だった。

「将軍ぜひとも自分に先陣の誉れをください。小官が必ず、父の名に懸けて我がランスの先に、アーサーの首めを突き刺してやります。」

それは、クレータム卿が敗れた戦いで、初めに戦死したニール卿の息子で、彼に負けず劣らずの巨漢で、将軍の槍と隣国に名を馳せたステインズ卿だった。

彼は自らの拳で胸を叩くと、兵達をかき分けながら出てくると、クレータム卿の横に立ち跪いた。

周りがざわめく中、彼より一回り小さい兵が出てくると、ステインズ卿の肩に手を置いた、その顔は微笑んでいたが瞳の奥には強い意志が込められていた。

「お前1人にいい恰好させるかよ。」

「ウェリングバラか。」

「今まで共に戦場を駆けまわって、お前の父親には世話になりっぱなしで。恩1つ返さないで、何がお前の親友だよ。なぁ戦友よ。」

巨漢が小刻みに揺れ始めると、手を目に当てて覆い隠し、鼻を啜る音が響き震えた涙声で。

「お前も十分格好つけだろ、戦友よ。」

ウェリングバラも彼の隣に跪くと、強く大きな声で。

「小官にも戦友と肩を並べる、機会をもらいたく。お願いいたします。」

ステインズ卿も守りに定評があり、将軍の盾と呼ばれ、ランスと盾として将軍の下で双璧と呼ばれていた。

将軍にすれば、若い兵達が前線に出たがるのは止めたかったが。それを許せる雰囲ではなかった、将軍は顔を少し上げて、鼻を啜ると。

「年は取りたくないな、涙腺が緩んで仕方ない。」

副官にしか聞こえないほどの小さなか声で、そう呟くと、号令を下した。

「皆の気持ちは固まった、ウェリングバラ、ステインズ貴殿らには今回の戦いでは先陣を務めてもらう。クレータム卿貴殿は今回の戦いでも、副将として出陣してもらう。そして今回は我自ら指揮を執る、ケイリー貴殿にはこの王都を任せる。我らがアーサーと対峙している時、横槍を入れられたくないのでな。」

「了解。」

皆名前を呼ばれるたびに返事を繰り返した、この瞬間将軍はアーサーとの決着をつける決断を下した。

そう次の戦いで、必ずどちらが死ぬ、そうしないと早期には終わらせることは出来ない。その戦いには若い兵は抜きで、老兵達で挑むつもりだったが。若者たちの想いに負けてしまった、しかし将軍は久しぶりに若き頃戦友と駆け回った。

熱い想いが心を満たしていた、もし自分の思い描いた通り進まなくても後悔はしない。今はただ一人の兵として、戦場を駆けまわりたかった。

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