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「これからどこへ向かうんだい?」 隣りの男が、心細そうに尋ねてきた。
うーん、わからない と答えるオレ。
「えー、無目的?」 驚く男。
「目的はある! お前みたいな人間を探す! ・・・・・ただ、行き先がわからないだけだ」
「頼りねぇなぁ」 がっかりした様子だ。
「お前なぁ!」
そのあと、男がぽつりと言った。
「でも よかったよ。 あんたと出会えて。 オイラひとりで、 ホント 途方に暮れてたんだ」
一瞬 車内にしんみりとした空気が流れた。 場の空気を変えようと
「ところでさ お前、名まえなんて言うんだよ?」
「・・・・言いたくない・・・・・・」男は 居心地悪そうに言った。
だが そのあとぽつりと、DD、といった。
「DD? 本名じゃねえよな。どうみても日本人だし」 オレの言葉に対し
「あんたはなんて言うんだい?」 と訊いてきた。
ガモンだ、と答えた。
「ガモン? 何語だい?」
「日本語だ! ガモウ ガモン 呼ぶなら ガガ でいい」
ガガ? とちょっと不思議そうにこっちを見る。
そして急に話題を変えてきた。
「ところでさ 昨夜 あんたがオイラに使った技は何だい?
オイラの鉄パイプをひらりと躱してバシュッ とオイラの右手を蹴ったの!
ブルース・リー みたいだったぜ!」
いいながら思い出したのか蹴られた右手を擦りだした。
右手は、青黒く変色していた。多少腫れている。
オレは男の右手を見ながら 悪かったな、 と一言詫びた。
「いいよ、最初に殴りかかったのオイラだし」
ビールまだあったよね、と言いながら後部座席を振り返り クーラーボックスに手を突っ込みゴソゴソやる。
はいよ、とDDがビールを差し出す。受け取ったビールの銘柄とDDのビールを見比べる。
「替えてくれ」
ぇ?という表情のDDのビールを奪い 代わりにオレのビールを手渡す。
不思議そうな表情のDDに、オレはこっちが好きなんだ、とタイガービールをぐびぐび喉に流し込んだ。
「そんなに違うもんかねぇ? オイラは酎ハイの方が好きだけど」 とスーパードライの缶に口をつける。
お互い 一気に飲み干し ぷはーっ、これで冷えてればなぁ と二人同時に同じセリフを口にした。
道は相変わらず オレたち以外のクルマが行き交うこともなく 歩道に人影も全く見えない。
視界に広がるのは無人の街並みと路上駐車のクルマたちだった。
気が付くと隣で むしゃ むしゃ むしゃ むしゃ その音に、ん? 横を向く。
DDがオレのとっておきのビーフジャーキーを喰っていた。
「オイ、それ オレがとっといたやつだぞ!」
「え? そうなの でも オイラも好きなんだ」
ふざけるなっ! と運転してることも忘れ掴みかかる。
オレの勢いに気圧されたDDが、わかったよ、返すよっ 悪かったよ、と謝った。
当たり前だ! とビーフジャーキーを奪い返したオレに
「あーーーーっ」と DD。ごまかすなっ、とオレ。
「じゃないよっ! 前っ! 前っ!」
正面に向き直ったオレの視界に真っ赤なスポーツカーが飛び込んできた。




