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後部座席に置いたクーラーボックスから、ビールをふたつ取り出し一つを助手席の男に渡した。
受け取った相手は素直に礼を言った。
カシュッ と缶ビールの口を開け、ぐびぐび飲み始める。
ぷはーっ 美味い! 気分爽快ってやつだ。
冷えてはいないが、それなりに美味い。
「なあ、・・・・」 男に話しかける。
隣りの男は、缶ビールの蓋をカシュッ、と開けながら応える。
「なんだい?」
「お前、さっき寝ながら差せーっ、差せーっ、 ていってたろ? ・・・あれ なんだい?」
差せ? 男はなんのことかわかんない、という顔をした。
ほら、お前が眠りこけてて、オレがおいおいって呼び覚ましただろ?
そのあとお前が正座してさ。
男は、片手を額に当て、しばらく考え込んでから
あーっ! と納得した顔で
「夢だよ、夢! あー、 いいとこだったんだよなー」
「いいとこって?」
「いや、オイラの馬がさ、あと少しで抜けるとこだったんだよっ!」
「オイラの馬?」
男がビール片手にこちらに顔を向け
「競馬だよ!、競馬!」 顔に力が入っている。
「あんた、競馬しないのかい?」
ちょっと面食らう。
「で、差せって なんなんだ?」 聞かれた男は、得意そうに続けた。
「差せっ!ていうのはさ、ゴール直前で後ろの馬が、前の馬を抜きそうな時に 差せっ、!っていうんだよ」
「馬に?」
「馬に!」
「寝言で お前、 馬に命令してたのか?」
男は残念そうに、
・・・・・・もうちょっとだったんだけどなぁ と本当に残念そうに残りのビールをぐぶぐび飲んだ。




