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リミットオリジン ―凡人と言われた俺が最強にたどり着くまで―  作者: みみたん
第2章:カナンの回廊と覚悟の再会

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第29話:新たな夜明け

 静寂が、焦土と化した広場を支配していた。

 自走兵器『グラウ・ヴォルフ』が放った絶大なエネルギーは、一人の少年の肉体と、志を同じくする男たちの盾によって強引に捻じ曲げられ、霧散した。

 中心に倒れるアッシュの周囲だけが、まるで神域のように守り抜かれている。


 ニーナは煙の立ち込める焦土へと飛び込み、煤だらけになったアッシュの体を抱き起こした。


「ねえ、しっかりしてよ! アッシュ! 目を開けて!」


 ニーナの呼びかける声が震える。アッシュの肌は、【金剛身ダイヤモンド・ボディ】の代償か、触れれば火傷しそうなほど熱を帯びていた。

 その傍らでは、バルトを筆頭としたレジスタンスの重装戦士たちが、一様に膝をついていた。彼らが命を賭して掲げ続けた大盾は、プラズマの奔流を逸らし続けた限界を超え、持ち主の腕の中で音を立てて崩れ落ちていく。物理的な質量すらも失い、砂のようにボロボロと大地に消えていく盾の残骸は、彼らが文字通り死力を尽くして村人を守り抜いた証だった。


「……すまねえ、ニーナ。俺たちの盾だけじゃ、この爆風は防ぎきれなかったはずだ。この坊主が、真っ向から衝撃を引き裂いてくれなきゃ……俺たちも、今頃塵になってた」


 バルトが、崩れた盾の破片を見つめながら、掠れた声で呟く。その言葉には、精鋭としての矜持を上回る、少年への深い敬意が込められていた。


 村人たちは、ただ遠巻きにその光景を眺めていた。

 かつて自分たちを捨てて逃げた「裏切り者の娘」と、正体不明の少年。だが、彼らが今目の当たりにしたのは、命を賭して自分たちの盾となった守護者の姿だった。

 広場に集められていた子供たちが、一人、また一人と立ち上がり、アッシュを囲むように歩み寄る。


「……あいつ、俺たちを……」


「アイゼンの化け物を、一人で……」


 拒絶と蔑みに満ちていたカナン族の視線が、困惑、それから深い畏怖へと塗り替えられていく。


「ニーナ。今は叫ぶより、アッシュを冷やしなさい。魔導炉の熱をまともに浴びてるわ……死なせたくないんでしょ?」


 サナが焦土の縁に立ち、皮肉を交えることもなく的確な指示を投げかける。その瞳には、自分の想像を遥かに超えた成長を見せた少年への、隠しきれない強い執着が静かに灯っていた。


「わ、わかった……! 今すぐ……!」


 ニーナはサナの言葉に弾かれたように顔を上げた。

 アッシュの熱い体を冷やすべく、震える手で周囲のわずかな水分をかき集めようとしたその時、ふと、少し離れた場所に転がっている剣が目に入った。

 地面に突き刺さったままの黒鋼の長剣は、極限の熱に晒されたことで見る影もなく変り果てていた。刀身は不気味に歪んでひび割れ、熱で変色したその姿は、二度と物を斬ることなどできない「鉄の塊」へと成り果てていた。


 じーちゃんの教えをなぞるのではない。

 アッシュ自身の意志が、物理法則を捻じ伏せて掴み取った勝利の代償。


「……バカ。勝手に一人で、全部背負って……」


 ニーナは、アッシュの熱い体をさらに強く抱きしめた。

 かつてこの村を飛び出した時、自分は何も守れない弱者だった。だが、目の前の少年は、ボロボロになってもなお、一歩も引かずにすべてを守り抜いた。

 その背中に、ニーナの胸の奥で燻っていた迷いが、静かに、しかし確かな「覚悟」へと変わっていく。


 西の空から、夜の帳が降りようとしていた。


この回はあまりにも短いので、夜に32話もアップすることにしました(自分で首を絞めるスタイル)

私は完成したら割とすぐにアップするタイプですのでアップ時間は不定期なのですが、気長に読んでいただけると嬉しいです。

明日から1日1回更新に変えます。

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