その姿は空から差す神々しいまでの光を美しいヴェールのように纏い天女のようであり朗らかに笑みを浮かべる様はヴィーナスのようであり…総じて天使という言葉がこれほどまでに合う人物はそうなかなかいるも(以下略
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流石にここまでは奥に進みすぎたかな…?
そう思い足を止めたその時空間が歪む。
「浜!速いよ―――ッ!?」
遅れてやってきた朱音もこの異常さを感じたらしく口を紡ぐ。
そう、こんな場所でこんな広々とした空間があるわけがない。せいぜいあってもこの二分の一、いや三分の一程度の広さだ。
「ねぇ浜。あそこにヒビが!」
朱音が指さす方向を見ると明らかに空中に浮かぶヒビを見つけた。これって何だろうと考えるよりも先にヒビから透明な破片が零れ落ちる。
そこから緑色の先端が尖った硬度のあるものが飛び出した。それは無造作に振るわれヒビを簡単に割り進めて…
「キェェアアアァァャ!!!」
先ほどのものは鎌であった。通常の50倍、いや70倍はありそうなほどの大きさの――カマキリ(の形をした”異能”)であった。
「先手必勝!!”異能力”、”健脚”!」
叫ぶカマキリ型の”異能”に対して速攻で”異能力”を発動し私は蹴りを入れ込む。
それに追従するように朱音も”異能力”を使い金棒を生み出し叩き込む。
「びっくりしたよ!”異能”ってああやって生まれるんだねっ!」
「うん。いやな直感が的中したのかな、とにかくどうやったら倒せるか考えよう」
軽く仰け反りつつも反撃だ、と言わんばかりに鎌をふるう”異能”。
それを避けながらバックステップで距離をとる朱音に返事をしつつ、今後について考える。
正直言って唐突に出て行ったんだ。帰るのが遅くなったらだれか確認しに来るだろう。
その時かすかに悲鳴が聞こえた気がした。
「向こうでもなんかあったのか!?」
「大丈夫かな?」
「でも私たちも向こうの心配する暇はないかもなぁ。とりあえず言われたことだけでも行うか。朱音、少しだけ時間稼いで」
「あ、そういえばあれやらないとだね!」
朱音は私が行ったことの意味を理解したようで私の前に立ち、金棒を上段の構えにとる。
”異能”は大きく鎌を振り、私もろとも朱音を切ろうとしたのだろうがそれを朱音に止められる。
朱音はその鎌に飛び乗り大きく跳躍する。
「炎も使えないんだから!なるべく急いでね!!」
周りが住宅街だったため炎を出せないらしくその自分が持つ筋力で振るう金棒でしか攻撃ができないらしい…がそれで充分ッ!!
私は腕についているそれのボタンを押すと、盤面が切り替わり怪しげな陣が出現する。ボタンを回して…
「我、”異界”の存在から俗世を守りて、撃滅の場を欲す。」
それは腕時計の形をしたアイテムであり―――
「―――”界幕”ッッ!!」
Fourtに入った時に渡された市民を守るためのものである。
「これはな、もし”異能”と戦うことになったら使わなきゃいけないんだが、”界幕”っていうんだけど。」
波津さんからそういわれながら手渡されたものは一見すると腕時計と変わらないもののように見えた。
強いて言えばアナログ時計にしてはボタンが多いという点ぐらいか。
「腕時計ですか?」
「僕が改造して腕時計型にしてるだけだよ、実際に腕時計としても使える優れものだよ。」
朱音も同じように思ったのか聞いているな。じゃあこれは何となってしまうんだよなぁ。
「説明するよ?じゃあ一般的な機能から。右側にあるボタンを回すと普通の時計同様時刻調整ができます。左下のボタンを押すと時計盤が発光します。長押しすると上から光が出ます。」
うん、ここまではちょっと便利な時計って感じだ。
「左上のボタンを押してみてくれ。」
そういわれ通りにボタンを押すと時計盤が下に下がり怪しげな陣が出てくる。二重丸の中に歪な星が描かれて真ん中に目のように嵌められた黒い石がある。
「なんですかこれ?」
「それがFourtのみんなが使ってる市民を守るための道具の一つ。”界幕”だ。本体は真ん中の石っころだよ。周りは効果の底上げ用の陣だから。再度右側のボタンを回すと効果範囲を決めれるよ。広すぎたらエネルギーが無駄になるから考えて使うように。後は…登録してあるから。」
なるほど、さっぱり何を言っているのかわからない。使い方は?
「使い方はなぁ、呪文詞を言ってから”界幕”っていうんだよ。そいつは幕の中をこの世界から半歩ずらす。戦闘エリアを区切ることができるってことだ。
エネルギーを認識できない一般人からしたら幕なんてない何も変わらない街の風景だし、エネルギーが見れるものなら暗く幕が張られているというのが分かるという代物だ。
ちなみにエネルギーを流した状態で幕に触れると半歩ずれた世界、つまり幕の中に行けるぜ。」
なるほど、なんとなくだが分かった気がしなくもない。どうすれば?
「エネルギーはな、まだ操れないみたいだから僕が一回分籠めとくよ。それにしてもエネルギーが分からず力を籠めたら”異能力”が発動するってどういうことだよ。」
こっからは愚痴のようなものだったっけかな?とりあえず”界幕”って叫ぶと石が淡く光り輝きぶわっと広がる感じがした。
周りを見ると青い空の下に黒い靄がかかっているように見える。うん、成功したみたいだ。
正面に目を向けるとカマキリと頭を金棒で殴り飛ばしている朱音が見える。うん、化け物みたいだ。
「ちゃんと張れたみたいだね!」
「うん。朱音も持ちこたえてくれてありがとう。」
どういたしましてと答える朱音を見てみると大きな傷はないように見えるがかすり傷や切り傷が意外と多いみたいだ。余裕ではなかったのだろう。
”異能”は体を起こしこちらを睨みつける(見た目がでかいカマキリなのでそう感じとっただけだが)と軽く飛びあがり後退する。私たちを警戒しているようだ。ならば今のうちにやっとくか。
「朱音、刀貸してくれるか?」
今私たちはFourtに入ってはいるが正式に本部に認められているわけではないため、帯刀、帯剣が認められていない。そこで挙げるは朱音の”異能力”だ。”界幕”の中だと一般人に見られるわけでもないしいいだろうという(勝手な)判断だ。
「どうぞ!」
「ありがと。よしこれで存分に戦えるな。」
私の”異能力”が足の強化で武器も持っていないから、蹴りだけしか使えないのだがあの外骨格を蹴りで壊せるとは思わないしな。
「さあ、やろうか!」
そう私が言い切る前に”異能”の巨体が高速で飛行するようにこちらに近づく。油断をしていたわけではないから反応できたが―――いや、きついッ!!
振り下ろされる両手の鎌を朱音とほぼ同時に受け止めるが、その速度も相まってより攻撃が重く感じる。横にそらして前に進むことで空いた下の空間を通り過ぎて足で踏ん張りすぐさま後ろを向き刀を振るう…がその外骨格によって刃は阻まれる。
「いやかったいッッ―――」
正面では二つの鎌を両方から振るわれている朱音が見える。
―――身軽な方がいい。
刀を手放し足に大きく力を籠め、前へ駆ける。切られるその瞬間を糸が針の穴を通るようにすり抜けて朱音をお姫様抱っこで回収する。
「大丈夫!?」
「うん…」
朱音を下ろしながらほこりを払う。
いや、でもこれジリ貧だなぁ。相手の攻撃を避けれてもこちらの攻撃が決まらなきゃ意味がない。こちらの体力がなくなって避けれなくなる。
疲労ががくっときた足を何とか立たせつつルートを決める。刀を手放したのは正解だったとは思ってるけど、どうしようか…取りに行かないとな―――――――ッ!?!?!?
「浜、上っ!」
叫びとも取れる朱音の声と暗くなった足元を見て今の現状を理解する。
動かなきゃいけない・・・のはわかっているが動けない、なんで、なんでなんで?
やばい
「『動くな』」
影と接近する動きが停止するのを背後で感じる。
この能力は…?ヒビキ先輩?いやでも声的にさっきまで聞いていた声と同じ―――
声の方へと振り向けば、カラカラと車輪が回る音とともに近づいてくる人が目に入る。
「少しは見直したよ。ちゃんと”異能”がいて、俺が到着するまで生きているんだからな。でも喋れもしない”異能”相手に2:1で勝ててないのはどうかと思うぞ。」
その毒舌っぷりを披露しながら現れた福田君は喉が痛むのか左手で喉を抑える。
「ッく、やはり東雲先輩の”異能力”は反動が大きいな。とりあえずこちらに来てくれ二人とも。」
そう言う福田君のそばへ私たちは駆け寄る。
「何秒持つかわからないがな、せっかくの機会だ俺の”異能力”についてしゃべろうか。俺の”異能力”は”ブティック&クローゼット”だ。まぁ簡単に言えば”コピー&ペースト”だよ。」
身体を止めていた力がなくなったのか”異能”はその場で鎌を振り下ろす。
「ッチ、もう動けるのか。”クローゼットdress up氷結”、凍り付け―――」
それを見てすぐさま手を前へ突き出し”異能”の動きを凍らして止める福田君。って鼻血出てる!?
「あ?鼻血はいいよ気にすんな。”クローゼット”の同時使用の代償だよ」
また声に出てたか…
「でもどうするの?勝ち筋が見えない。」
「――――俺もなんだよなぁ。クソッ、もっと強いのコピッとけばよかった。」
そう悪態をつく福田君と悩む朱音を見ていると不意に空が明るく輝く。
”界幕”で暗くなってるはずじゃ――――
そう思ったその一瞬、光は収束し”異能”の頭から降り注ぐ。のと同時に”界幕”が頭上から砕け散る。
「天使だ―――」
私と朱音のどちらがつぶやいたのだろうか、いやどちらもつぶやいたのだろうか・・・
砕け散る”界幕”と降り注ぐ暖かな光が相まってより神々しいものを感じる。
天使だった。
その姿は空から差す神々しいまでの光を美しいヴェールのように纏い天女のようであり朗らかに笑みを浮かべる様はヴィーナスのようであり…総じて天使という言葉がこれほどまでに合う人物はそうなかなかいるものではないというのを直感で感じ取る。そうか迎えが来たのか・・・そう思うほどに天使なのだ。
いったいどれぐらい天使と思っているのだろうか。
光は落ち着くと”異能”は塵のように崩れ落ちてきており倒せているのを目視でも確認できた。
そこで天使は口を開く。
「皆さん、無事でしたか?お怪我はありますか?治しますよ。」
―――――――――声も美しく、鈴が鳴るようにころころとしており、まさに天使であった。
界幕についての軽い説明
先人からの遺物。遠い昔、物の怪や魑魅魍魎、悪鬼羅刹と言われていた時代からのもの。結界術の応用でちょっとした常識改変が行われている。
メタい話
まあ呪〇廻戦の帳みたいなもの。世界観的に、あと、ある人物を出したいがために設定として出しているところがある。これがないと普通に街破壊が行われて面倒だから。半歩ずれた世界で壊したりしても大丈夫だが少しでも幕から出ると街破壊。だから炎なんて広がるものは使いずらいんですよ(朱音に言ってます。もっとましな能力にしろよ。作者に言ってます。)




