北向きに風を、若人は上る
なんもかんも――が悪い、みんながかわいそうだ。リゼロは心が重くなるぜ
1時間遅れましたが更新です
新章です
―――GW―――
それはこの国、日本にいる学生たちが待ち望む長期休暇。
それはこの国、日本にいる大人たちが疲れた心を癒すちょっとした休み。
それはこの国、日本にいる大人たちの中にも普段と変わらない日常を送る何の変哲もない時間。
しかし、ある少女たちからしたら初めての大人たちと出会い瞬きの時間ほどで来た少し大変な一週間+αである。
・・@・・
窓の外には燕が羽ばたいているのが見える。
前を向けば大山先生が英語を教えている。
こんな平凡な日常がついこの前、変わったのだということを実感する。
寝たらあれは嘘でした。なんてことはなく力を籠めればいつもより進む足は速くなる。
そんな能力を手にして悪いやつと戦いますって本の中のお話だと思っていたのだが。
黒板に書かれた例文をノートに写しながらそんなことを考える。あんな動きをするのなんて小さいころに山で駆け回った時以来だからか、指や腕の筋肉が痛むのを感じる。
それにしてもフブキ先輩は無茶苦茶だ。能力使って全力で攻撃をよけろって、慣れてない人からしたら無理なんだよ!しかも当たったら凍りますだって?
そういう理不尽を肌で感じ少し大変さを感じることができたのはよいことかもしれないが。
「はぁ。」
ため息も出てしまうものだ。ほんとあぎれるぜ。
「何ため息づいでらのだすか?中園さん。せば次のこの質問は中園さんが答えでたんせ。」
何を言ってるのかわかりづらいがっつり秋田弁をしゃべる大山先生に多分私に対していってるっていうのを感じ急いで問に対する答えを読み上げる。
「My brother really wanヅ――――ッ―――!?」
噛んだ。
「さっき舌大丈夫?痛そうだけど。」
「だいじょぶだいじょぶ。それよりも学食いこっか。」
昼休み心配そうな顔でこちらを見てくる朱音に笑顔で答え、学食へ歩き出す。
いや、実際はめっちゃ痛いし今でもヒリヒリしてるぐらいだけどそれでも私は耐えるのです。だって強いから。うん。
「ねぇねぇ聞いたー?あの子先輩に告白したみたいだよー?」
「あ、それ知ってるー!でも好きな子いるからって振られちゃったんでしょ?かわいそーだよねー」
「今日新刊の発売日だってよ!」
「マジ!?放課後買って帰るかー」
「買ったら読ませろよなー」
そんな声が飛び交う中、ある声が耳に入る。
「車いすの子、今日来てたよ。」
「なんか怪我したって子?松葉杖じゃなく車いすなあたり結構重症なのかなー」
「少し喋りずらいオーラ出てるよなぁ」
車いすの子。私は知っている。というか昨日会った。それも旧校舎のほうで。それが意味することは彼もこちら側だということ。
昨日私たちが放課後行ったらエレベーターから出てくる彼を見たのだ。見てたら睨まれたけど。
「そういえば彼のこと紹介してなかったね。君たちよりも前から”異能力”を発現していた子でね。活動は高校生からって決められてるから、今年から参加するようになったんだけど一発目の任務で一般人を守るために足を怪我してね。今車いすなんだよ。」
そういう波津さんの顔はどこか厳しく見えた。そのことをちょうど来ていた莉愛に聞いてみると
「ボクたちFourtはね、なるべく一般人を巻き込まないように行動しなければいけないの。巻き込んだうえにけがを負わせかけたというだけでほんとは怒られるほどのものなんだけどね。」
とのこと。ちなみに私の初任務は朱音とヒビキ先輩と一緒に廃屋の中で光る目のようなものを見たという通報の調査だった。廃屋だったからほかに人もいなかったし、いた”異能”は弱かったから結構あっさり終わった。
ただ、狭い場所、燃える場所などの苦手な場所で”異能力”をどれだけセーブしながら、使うことができ、戦えるのかを鍛えるうえではすごくよかったとだけ言っておこう。
そう周りの声に耳を澄ませ、朱音と会話していると食堂についた。
「今日何食べようかな、カレーかなぁ」
「カレー好きだねぇ。昨日の夕ご飯もカレーだったんじゃないの?」
カレーは便利なのだ。一回作れば2,3日は食べれる。野菜もお肉も入れて栄養が取れるしね。
「私は日替わりかなぁ。今日は―――チキンカツ!いいね!」
そういって朱音はニコニコ笑顔で食券を買って列に並ぶ。私もカレーの食券を買っていこうとすると、列に並んでいる小さな子と目が合った。
その子はよく見る制服ではなく白シャツにジーパンを履き、黒のキャップを目深にかぶっている。
大人のお姉さんのような格好だがその魅力を小さな身長がノーと突き立てる。
って莉愛!?
まあここの学食は外部の人でも食べに来ていいけどさぁ…?でもわざわざ何で?
こっちに気付いた莉愛はカレーを受け取って、こちらに近づいてくる。
「放課後、連絡あるから来てね。」
「あ、はい…」
伝えたかったからかぁ。
それを伝えて莉愛は通り過ぎて出口へと向かう。あのまま旧校舎向かう感じかな?
「どうしたの?買いに行かないの?」
「ぇ、あぁ買いに行くよ。それと朱音、放課後、九に行くよ」
「う、うん分かった。」
そのまま私は列に向かう…とそういえば
「そういえば朱音…莉愛来てたの気付いた?」
「え?まじ!?」
いつも以上に声が出てますよお嬢さん。
「いやーちゃんと来てくれてよかったよ!」
そういった波津さんはにこやかに両手を広げる。
昼休み莉愛に会った放課後、私たちは旧校舎の三階にある会議室に来ていた。いつもは支部長室とか名乗ってるほぼ自宅のようなところからテレビ電話をつないでるだけだったのに、波津さんが直々に来ていることから重要さを少し理解した。
「莉愛がちゃんと伝えてくれるかどうか心配したからサ!」
その件の莉愛は会議室の端に備え付けられているソファーに座って本を読んでいる。
恰好はいつもの私たちの高校の制服になっていた。
「別にマスターが行けばいいんじゃないんですかー?わざわざ自分のお昼ご飯買いに行かせてさぁ。」
「え?あれ莉愛ちゃんのじゃなかったんですか!?」
「そーだよーボクは買ってあったサンドウィッチだよー。」
そういって体勢を変えながらページをめくる。
パシらせ屋を見ながら私たちは本日呼ばれた内容を聞く。
「ふっふっふー!それはねぇ!今週末から始まるGWに東京に行ってもらうんだよ!」
そういって誇らしげにふんぞり返る。
「「そういうのはもっと前から言ってくださいよ――ッ!!」」
「大変だよなぁ。ホウ・レン・ソウがしっかりしてない人相手するの。」
会議室のドアを開けているフブキ先輩がしみじみとつぶやく。
「ちなみに僕たちはGW北海道に里帰りするんで。終わり際にお土産渡すよ。」
そう言って去っていく。何しに来たんだあの人。
「と、、、とりあえず行くのは決定事項だからさ。また準備しといてね。同伴者で副支部長もついて行かすからねー。」
「「そういう大事なことは先に言ってくださいよ――ッ!!」」
呆れたって顔をしてジュースを飲まないでください莉愛さん…




