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異能世界話  作者: 雨雲日月
間章1
13/13

間章:支部長ってもっとしっかりしたほうがいいんじゃ・・・

「お疲れ様です。」

「うん。朱音ちゃんもお疲れ様。」


ある日、彼女——朱音は、"異能力"の制御訓練に勤しんでいた。

同じ高校の先輩であるヒビキ先輩が稽古を行なってくれるというから、ワクワクしていたのだが、朱音が放課後に指定されていた小体育館に向かうとすでにその時には先輩はどこかに行っているようだった。

波津さんに聞いてみると見回りに行っているようで、もう少しで帰ってくるらしい。だから、少し自主練という形で朱音は舞を踊っていたのだった。


「朱音ちゃん、綺麗な舞踊れるんだねぇ。」

「あ、はい。一応神社の娘ですから。」


帰ってきた先輩に冷えているお茶を手渡していると、先輩は感心したようにこちらを見る。そういうと、先輩はそういえばそうだったなという顔で微笑む。


「先輩もお疲れ様です。そういえばFourtの仕事って何があるんですか?」

「えっとね、私たちみたいな学生とかはまだ簡単なものしかないよ。見回りでしょ?あとは低位の"異能"退治ぐらいかな…あとはそれぞれに報告がついてくる。なにがあったのか、不審なことはないのかとか。ある程度まとめると支部長さんがやってくれるよ。」


「え?あの人仕事するんですか?」

「アハハ…失礼だね。でもまあ仕事してないようには見えるけど、やってないと怒られるらしくて。」


なるほど?怒られるのが嫌で宿題(仕事)をやるのか。子供じゃん…


「それじゃあ、稽古始める?」

「あ、お願いしてもいいですか?」


そういい朱音は"異能力"を使用する。

その時額から二本の角が生える。その角は白磁とも黄金とも取れるような不思議な色合いを醸す。


「じゃあ、よろしく。」


それを見たヒビキ先輩はそう言ってより獣の本能を出す。

ヒビキは"生物型(ヴィオラギア)"であり、狼に変身することができるためその身体能力を通常時よりも向上させることができるようになる。そのため足を一歩踏み出し瞬時に距離を詰め切ることができるのだ。


しかしその行動を朱音は読み切って朱音も前に出ることで距離感を狂わせる。

そこで朱音は"異能力"を使用し最近使うようになってきた金棒をだす。

刀も使うのだが、慣れない身からしたら片刃の刀よりもその棘が痛い金棒で叩いたほうがいいと思うのだ。鬼の力として力も強くなるのも理由の一つである。


「『大地よ。沈め。』」


踏み出した足を絡めとるように地面が沈み込む。バランスを崩した朱音の胸にヒビキは鋭い掌底突きを放つ。


「カハッ!」


息を吸う間もないほど鋭い痛みが襲うが気力を振り絞り意識を保つ。


「燃えろ金棒——暖打弾(ダンダダン)!」

「エネルギーの扱いが雑になってるし、すぐに炎も使う。やっぱまだまだだね…」


朱音は炎を纏った金棒を振り抜くが、ヒビキはそれを軽くジャンプし飛び越える。

そのまま前に進むことで距離を離す。


「『吹き飛べ』」


一言…そのたった一言で朱音の体は宙に浮く。

見えない圧力が推進力となって背中の方から押し出していく。

朱音は体を捻り体勢を立て直そうとする…が、ヒビキの上段回し蹴りによって横に弾かれまた体勢を崩される。

朱音はすぐに立ちあがろうとするが、炎を使った反動か、エネルギー切れを引き起こす。立ちくらみのようにふらっとまた膝から崩れるように倒れてしまう。

それに追撃するようにヒビキが拳を振るう———ッ!!



「そこまでっ!」


振るわれた拳は朱音に当たることなく静止する。


「十分やったでしょ?ほら、治療するから治花さんを呼んできてね。」

「莉愛…よく止めれたね…」

「直線的だったしね」


朱音を狙う拳を止めたのは可愛らしい少女―――莉愛だった。

横から手首をつかみ勢いを消したのだった。


支部長(あの人)が止めに行けって言ってきてね。ケーキで手を打ってもらった。」


ん・・・?けーき?

ていうか支部長見てたの!?


「そこにあるカメラ、つながっているからね。防犯用とはいえ少しいやらしくも感じるよ。」

「アハハ・・・あ、治花さんもそろそろ来るって。」




「もう・・・ほどほどにするのよ?」

「・・・はーい」

「なんで実戦形式にしたの?」

「一応基礎は教え切りましたから。それで一回やってみようかなと。」


治花に少し怒られながら話すヒビキを横目に見ながら朱音は莉愛を抱き上げる。


「それで―――何か隠してない?」


朱音がそういうと莉愛はピクリと体を震わせ笑顔で朱音を見上げる。


「何も―――隠してないよー?」

「嘘おっしゃい。どこか痛めたんでしょ。」


治花がこちらを見る、それはまたか…と呆れるように。


「えへへ…少し手首をつかんだときに力消しきれなくて…」


そういう莉愛の手首は少し腫れていた。


「でもよく気付いたね。」

「あー先輩が怒られてるときに莉愛ちゃんがどこかぼーっと治花さんのほう見つめてて。そのあとに自分の手首を触ってたから痛めたのかなぁと。」




「それはそれは・・・いい洞察力だね!でもその洞察力でカメラには気づかなかったのかな?僕はちゃんと・・・お仕事してるよ?」

「あっ」


近くの扉からにこやかに見てくるひとりの影――――波津は青筋を浮かべていた





が。


「マスター?いつも仕事してるって本気で言ってます?」


治花によしよししてもらっていた莉愛が目を細めて凄む。

そのとき朱音にヒビキが


「逃げようか。これから長くなると思う。」

「え?え?あ…はい?」


そうやってササっと急いで席を外した学生組をよそに莉愛の怒りの炎は燃え上がる。


「全くマスターは子供なんですか!?いっつもいっつも期限が何とか言われてボクが「そろそろ仕事しませんか」と言いに行かなきゃ仕事しないくせに!そのほかの時間はゲームしたり遊んだり!…あ!今心で研究してるからとかほざいたでしょ!?研究もほぼ遊びじゃない!?研究関係の仕事だけ納期はしっかり守るくせに…まだもうちょっと改良の余地が~とか、依頼以上のことしたら喜んでくれるから~とかいうけどほんとは好きなものだから時間も忘れて取り組むだけじゃない!こんなんだから地方会議でも呆れられるし副支部長さんだって呆れるんだよ?何なら少し手伝うかぁってぼやいてたの聞いてるからね?…何々?ボクも遊んでるじゃないって?あれは仕事じゃん・・・お金稼ぎのためだし、そのほかはぶらぶらと回りながら困ってるところあれば助けてるししっかり放浪課としての責務は果たしています。マスターと違ってね!!第一マスターは支部長としての自覚を――――






バタンッと扉が閉じられる前に見えたのは正座して落ち込む成人男性と頭を撫でられながら激怒するかわいい少女の姿であった。

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