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もしも魔法が使えたなら  作者: きすぎあゆみ
44/46

44・監視されているみたい?

続きです。

宜しくお願い致します。

皆様に楽しんで頂けましたら幸いです。

 魔法の練習を終えて恵一が温泉施設を去って行くのを、建物の影から静かに見守る者達が居た。


「出てきたわね」


 一人は同年代同性の平均身長適度で細身。目立たない様に濃い色の動き易い服装に身を包み、そのために女性特有の丸みをおびた身体のラインが顕になっている。髪の毛も動きの妨げにならない様に纏め手袋を着け、夏だと言うのに顔以外は全て隠されている。


「…そうみたいですね」


 もう一人は同年代同性の平均身長より高いために二人の身長に差は殆ど無い。しかしこちらは、動き易い服装のだが半袖短パンで、目立たない事は二の次に暑さ対策と動き易さに重点を置いている様にも見え、もう一人と比べるとかなり若く見える。黒く長い髪を頭に巻き付ける様に括り、動きの邪魔にならない様にしている。


「彼、毎日頑張るわね」


 年上の女性が年下の女性に声を掛ける。年上と言っても年若い女性で、二十代半ばに見える。何かの映画のスパイかと言われても可笑しく無い服装の美人だ。少し目付きが鋭いので、スーツを着せるとさぞ仕事が出来る女性な姿が似合うだろう。それは恵一のクラスの担任、姿月さくらで有った。


「そうですね、彼はマンガとかラノベにかなり影響されてますから…」


 年下の方の女性がそれに答える。年若い女性よりも更に年下なので、若いと言うよりは幼いと言った方が良いだろう。こちらは恵一のクラスメイトの、館林きららで有った。


「でも、独学で魔法の練習をするのには限界が有るでしょうし、後片付けにはもう少し気を付けた方が良いわね」


 さくらは、恵一が出て行った建物を見ながら言う。


「確かにそれは言えますね」


 そしてきららも、同感とばかりに頷く。


 しばらく待って恵一が戻って来ない事を確認した二人は、恵一が魔法の練習をしていた大浴場に入っ行く。大浴場の中は高熱の嵐が吹き荒れた後みたいな、惨憺たる有り様だ。


 石や建材が焼け焦げ溶かされ切り刻まれ穴を穿たれたりと、何をどうすればこの様な状況になるのか?それが大浴場の真ん中から外側に向かって円形に広がっているのだが、しかし建物の内壁や天井にはその影響は及んでいなかった。まるで炎の台風か竜巻が発生し、その直後に消えてしまったかの様な有り様だ。


「独学でこれだけの事が出来るなんて、中々筋は良いかも知れないわね」


 しかし消火仕切れずに所々燻っている場所が有る。放っておいても問題は無いだろうが、用心に越した事は無い。さくらときららは、水属性や氷属性の魔法を使い消火しきれずに燻っている場所を消火していく。


「そうみたいですね、魔法の適性だけなら私よりも有るみたいですし」


 燻っている所を探しながら、きららがおどけた様に言う。


「適性だけならね。でも、それを生かすも殺すも彼次第だけどね」


 さくらはきららの意見に同意しながらも、恵一のある問題点にも気が付いていた。


「それは言えますね。でも独学でここまで出来るのも凄いですね」


 きららもさくらの言いたい事が解ったみたいだ。


「まあそれはね…それに基本にもある程度は忠実みたいね」


「魔法練習用の結界の事ですか?」


「そう、結界が無かったらこの建物は吹き飛んでいたかもね…」


「この状況を見ると、否定は出来ませんね」


「でも、このやる気の半分でも勉強に向けてくれたら、もっと成績が良くなるのに…勿体無いわ」


 さくらの表向きの職業は小学校の先生だ。仮の…否、正式に採用試験を受けて教員として採用されている。


「先生としての意見ならそうでしょうけど、魔法協会の協会員としてはどうですか?」


 そして、イクスタール魔法協会にも所属しており、今は魔法協会からのとある依頼でこの場に来ているのである。


「独学ではその内限界が来るでしょうから、誰かに師事する事が出来ればればまだまだ伸びるでしょうね」


 恵一の魔法の適性を生かすも殺すも彼次第の話が、ここに繋がって来る。このまま独学で魔法の練習を続けるのか、それとも偶然か?はたまた必然か?運良く魔法を使える存在と出会う事が出来て、そしてその人物に師事する事になるのか?


「そうなりますか…彼の魔法の練習を見ていると彼の持っているマンガとかラノベの影響で、無詠唱とかイメージで魔法を使っているみたいですし」


 恵一が行っている魔法の練習方法はあくまでも、マンガやラノベで得た知識を元にしているに過ぎない。それが悪いとは言わないが、やはり基本も疎かには出来ないし何より≪魔法の書≫には書かれていない、先達達の長年の経験や実績によるある種の口伝的な練習方法もあるのだ。


 それを知らなくても特には問題が無いのだが、その中には練習後の身体のケア方法なども含まれるため知っているのと知らないのとでは、長い目で見ると疲労の蓄積度や魔力の回復に差が出てくる事も有る。


「まあ、それはそれで悪くは無いから良いけど。でも、こんな所で魔法を使うのは近い内に限界になるでしょうね」


 いくら広いとは言っても所詮は建物の中なので、魔法の影響範囲の小さい魔法なら問題は無いが、広範囲に影響を与える魔法は使うことが困難になるだろう。


「魔法の威力とか、魔力や魔素の関係ですよね?」


 それに空気中に含まれる魔素≪マナ≫の濃度がそれ程多くない場所で頻繁に魔法を使っていると、どうしても空気中の魔素≪マナ≫の濃度が薄くなりそれを補うために広範囲の近場から魔素≪マナ≫を集めなくてはならない。そうするとこの辺り一帯の魔素≪マナ≫の濃度が著しく低下して魔法本来の現象を具現化させる事が困難になってしまう。


 魔素≪マナ≫の濃度により魔法によって引き起こされる現象の結果に影響が有る事を知っていれば問題は無いのだが、知らずに魔素≪マナ≫の濃い場所で同じだけの魔素≪オド≫を使用して魔法を使ってしまうと、一体どれだけ魔法によって引き起こされる現象に差があるのか?


 その事を知っているのと知らないのとでは、それも魔法を使うために必要な知識になってくるのだが…。


「一体どれだけの魔法を使ったのかは解らないけどこの辺りの魔素がかなり少なくなっているから、多少強な魔法を使ってもその効果はかなり弱まってしまうけれど…だからこそ逆に魔法の練習には持って来いなのかな?」


 魔法が強力になるに従い魔法の及ぼす現象の範囲も広くなっていくのだが、今の魔素≪マナ≫の濃度ではとてもでは無いが魔法本来の現象を具現化させる事は困難だろう。この場所で魔法を使う感覚で、他の場所で魔法を使ってしまうと一体どれだけの現象を引き起こしてしまうのか、考えるだけでも恐ろしい。


 今現在、師匠のいない恵一がその事を知っているのか、辺りの魔素≪マナ≫を視ながら魔法を使っているのかは解らないし、そこまで気を使っている様にも見えない。とにかく覚えた魔法を使いたいだけの様にも見て取れる。


「この魔素の量でしたら強力な魔法は使えないでしょうし…でも魔法を覚えたばかりでそこまで強力な魔法は使えますかね?」


 確かに恵一が魔法を覚えたのはつい最近だ。しかし、マンガやラノベの主人公に憧れて、魔法を夢見ていた少年の可能性は無限大だ。それがどういった方向に進んで行くのかも今は未だ未知数なのだ。


「どうかしらね…彼の適性は認めるけど、いくらなんでも魔素の少ない所で強力な魔法を使うなんて普通に考えると有り得ないわね」


 普通に考えるとあり得ないと言うよりは、魔素≪マナ≫不足で魔法の効果が著しく低下してしまうのだが、それはその魔法本来の効果を知らなければその事は解らないだろうし知り様も無い。そして今の恵一は魔法を使える事が楽しいので、威力や効果は二の次になっているのだが…。


「もしもの話ですけど、もし彼が普通じゃ無かったらどうですか?」


「私が言った事だけれど普通と言うのが何を指して言うのかは永遠の謎だけど、常識的に考えると魔法を使いたい子供なら覚えた魔法は使ってみたくなるでしょうね」


 そう、普通とは何を指して又は基準としているのか?それは多数の意見や考え方なのか、それとも平均値なのか?そもそも魔法と呼ばれる現実では有り得ない力を使う事が出来る、魔法使い達の普通とは?


「そうですね。彼の読んでいるマンガやラノベを参考にすれば沢山の魔法が有りますし、私達とは違う考え方や発想の魔法も有りますし…試してみたくはなると思います」


 そう、きららは恵一からマンガやラノベを借りて読んでいる。それ以前もアニメやマンガに出てくる魔法を試した事も有った。そして、中には実際に使う事が出来た魔法も有った。しかし、ラノベはと言うと自由な発想や独自の理論や解釈の魔法が物語の中に多数出てくる。それを全て試す事は出来てはいないが、幾つか試してみて中には発動出来た魔法も有った。それを考えると、恵一の頭の中にはマンガやラノベの知識が豊富だ。もしかするともしかする可能性は大いに有る。


「それこそ自由な発想で色々な魔法を使われると、何が起こるか想像も付かないから何か起こった時の対応も遅れてしまう可能性は有るわ…これは早めに手を打った方が良いのかも知れないわね」


 それが今回彼女達二人が恵一の前に現れた理由なのだ。≪魔法の書≫が売れた事、そして≪魔法の書≫の付録を召喚出来た事、それは新たな魔法使いの誕生で有り是非とも確保又は囲うべき人材なのだ。


 彼女達の任務は、≪魔法の書≫を購入した人物の特定と観察、そしてその人物をイクスタール魔法協会への勧誘する事であり、それは恵一の今の生活が大きく変わっていく分岐点でも有った。

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