31話 遠い異国の話をしましょう
少し長めです。
顔パスをご存知だろうか?
王城に行くと、
待ってたよ、もう!遅いんだからプンプン!と門番に言われた。
冗談だ。さすがにそんなことを言われた日には、山で修行をしたくなると思う。
まあ、でもすぐに来てくださいと言われた。
一人でとも。
まあ、王城だし大丈夫だろ。
殿中でござる!みたいな事にはならないだろう。
閑話休題、ん。何か不味いことをしたかな?と呼び出された生徒のような考え事をしながらついていく。
ふーむ。ワカラン。
まあいいや。ケセラセラ。
なるようになるさ!
着いたのは、『箱庭』。
例の、少女との、場所だ。
後ろに気配を感じたので振り向くとやはりそこには少女が立っていた。
「御機嫌よう。ガルディさん」とリンと鳴る鈴の如く、明瞭で軽快で透き通る声で話しかけてきた。
まるで、雰囲気が違う。
「…」
声が出ない。
空気を吸うのも難しい。
静寂が場を包む。
ただ、それだけ。
いつの間にか、門番はいない。
周囲には俺と少女だけ。
「そういえば、名乗っていなかったようですね。私は、第二王女、アリスと申します」そんなことは、誰でも分かる。
カリスマ性というか、気品に富んでいるから。
その場所にいたのなら。その雰囲気に魅せられるだろう。
「王女様でありましたか。知らないとは言え私の今までの無礼をどうかお許しください」と言う。
深い礼をしながら。
「いえ、無礼なことなど一つもありません。どうか、頭を上げてください」と仰られた。
アリス、聞かない名だな。
勿論、この世界ではだけど。
そういえば、気高い性格が語源だったかな?
少し余裕を取り戻してきた。
長い銀髪で小柄、漆黒のドレスは上半身は締め付けるかのように体型に合わせているが下半身はふわりとしているスカートを履いている。
それらが、月に照らされて、さらに黒に染め上げていた。
「さあ」と少女に席に座りなさいと促される。
変わらない自己中と素早さ。
「失礼」と言い座る。
何だかな。
少女も座り、口を開く。
「私が第二王女だというのは驚かないのですね」
伏線はたくさんあったからな。
行動が自由である。
初対面の貴族に命令できる。
箱庭を使用できる。
等々、細かいのを合わせるとかなり。
しかし、なにより
「言葉や仕草が美しく、隠しきれない気品がありましたので、薄々は」
「そうでしたか。ところで、敬語をやめていただけますか?私は公式的には王女ではないですし」
「王女ではないというのはどういったことですか?」
「我が姉は愚者です。ガルディさんも其れには気づいているでしょう?」
答えようがないな。愚者って…
もし、俺が王女…第一王女の事を愚者なんて言ったら国家反逆罪とかになるぞ。
「…」
故に、口を噤まざるをえない…
「そうでしたね。ガルディさんには答えようがない問いでしたね。では、私は”あれ”を愚者だと思っております。そして、私は”あれ”に比べて優秀すぎる。これは、客観的事実ですよ」
「私から見ても、アリス様は優秀ですよ」
どう呼ぼうか迷ったがアリス様にすることにした。
王族というのは、氏がない唯一の貴族だからな。
氏で呼びようがない。困ったものである。
「ガルディ様からそう言われるととても嬉しく思いますよ。さて、話の続きをしましょう。我が姉は唯一、人より長けているところを挙げるのならば、他人に任す事ができる、でしょうか。姉は王が崩御された場合、王女となるでしょう。されど、”あれ”は政は好きません。二人の兄はある程度のやる気はあるようですが、執政はおこないたくないようです」
「そうですか…」何も言えないな。
この国大丈夫かよ。
「王、つまり私の父にあたる人は、女王を第一王女、つまり姉にして、第一、第二王子を印を押す係と言いますか、書類にサインをする係といった形にします。そして、政をおこなうのを私にする、といった事にしたいようです。私をそれに賛同しております。兄、姉も同様に。本来であればこのような事にはならないのですが、三大公爵は、大臣にはなりたくないようですし、公爵より下になりますと、意見が通らなくなります。バイヌ侯爵やランプ侯爵であれば話は別ですが、バイヌ侯は三大侯爵同様に大臣になる気は無いようですし、ランプ侯はそもそも、後継がいないと騒いでいますからね」とアリス様は一息で仰られました。
ふぅと言いながら紅茶を飲んでおられます。
バイヌ侯の場合は、フラーシスしかいないから、もし、大臣になったのなら後継がいなくなりますよね。
「故に、アリス様が、大臣になるという事ですね」
「ええ。大臣になるのは王族以外の貴族が普通ですからね。昔は平民がいたようですが、結局は辞任しておりますから」
「現在の大臣には、問題でもあるのですか?」
「高齢というのが唯一にして、最大の問題ですね」とアリス様は困ったように仰られた。
まあ、実際困っているのだろうが。
「そうだったのですか」
「ええ。ですから、私は現在は平民という状態です。ガルディさんには敬語をやめて欲しいのですが」
王族からの命令と同義。
断ったら死。
断らない方が死から遠のく。ほんの少しだが。
ぐっ。
「わかった。しかし、君が平民というのならば、貴族として命令をしよう。敬語をやめろと」
「分かりました。しかし、私は敬語以外の話し方を知らないので、このままでよろしいでしょうか?」
そんな逃げ方があったとは、知らなかったぜよ。今更遅いな。
「勿論良い。けれど、”僕”も平民からの願いを叶える筋合いはない。故に、敬語で話させてもらう。さて、本題は何でしょうか?」もういいや。めんどい。
そもそもさ、ガルディさんという呼び方を平民からされる事はまず無いからな。
「…そうですか。まあ、言ってみただけですので。本題ですか。いえ、もう少し、会話を楽しみましょう。何か面白い話をしてください。ガルディさんは面白い話しかしませんが。」
「この話はただの虚言のような、空想のような話です」
遠い異国の話をしましょう。
流れる星の下。月光の中で。
そう、話し始める事にした。
突飛な妄想で絵空事。
そんな話。
この話は作者がかなり書きたかった、場面です。
と言いますか、この場面の為にこの作品を書き始めたと言っても過言では無いでしょう。
そういった場面が他にも幾つかあるのですが。
そんな訳で、長めになってしまいました。
無駄話?
無いっすよ…
次回は書きまする。




