八話
「へぇ~それで大切な親友を置き去りに楽しくお食事としゃれ込んでいたわけですかぁ~そりゃよぉござんしたねぇ~」
「ゴメン…」
ふて腐れてそっぽを向くマリシナにひたっすら謝るローナ。
突然マリシナがくるっとこちらを向き「う・そ❤」と舌を出して笑った。
「も、もう。本当に悲しかったんだよ!!」
「ローナの声って全部同じに聞こえるよ…」
ガーンッ
親友の前でさえも声に感情がなかったんだ…
「でも、ストーシュ様やるねぇ~(猛アタックやんw)」
「う~ん。でも、次の食事何時とか分かんないし、あの人私の部屋知らないと思うし‥もうないと思うなぁ…」
「か~そこまで言っといて抜けてンなぁ~ムッスン」
む、ムッスン!?
いきなりですか‥
「…なんで私に関わるんだろ…」
「仲良くなりたいって言ってたんでしょ?」
「…なんで?」
「えぇーそりゃ一緒に居て楽しいとか心が安らぐとかじゃないのー?ローナは?楽しかった?」
「うん…」
「へぇ~人見知りのローナが珍しいね(こりゃひょっとするとひょっとするかも!?)」
「そうかも…ご飯に釣られちゃっただけかもだけど…」
「それでもすごいよ!!で?その噂のクソ執事は?楽しかった?」
「論外。」
マリシナ大爆笑。
「う~ん…でもさ、ローナ?」
「ん?何?」
「…その顔は知ってる人じゃない人が見たら分かんないよ…今楽しいでしょ?」
「すっっっっっっごく楽しいよ?」
無表情。
「うん。分かった。分かった。ローナ今日から表情の練習ね!!」
「えっ!?ひょうじょう?れんしゅう?」
「今までは必要なかったけどやっとめぐってきたチャンスだよ!!これを逃したらローナ結婚できないかもよ!!もうそんなに若くないんだから!!ラストチャンスかも!!」
「えっ!?チャンス?けっこん?なにそれ?別に新しい友達ができた位で大げさな…」
「(ヤダこの子鈍感…)新しい友達だって何年振りか言ってみなさい!!ライアスから何人できたの!?」
「…ライアスからは今日で一人目です…よって、2年ぶりです‥」
「はい!自分の現状のヤバさが分かったらそのイスに座る!!」
「は、はい!!」
言われたとおりに座るとロープで縛られた。
「ちょっ…え?何!?」
「コ~チョコチョコチョコチョコチョ…」
「えっうわっアッハハハハハハ!!なに?何すんのよ!」
「おぉ~普通無表情キャラって擽り効かないのに…効くんだぁ…」
「よ、弱いんだょ…擽り…」
「では!もう一回!!コチョコチョコチョコチョ…」
「ぅあ~うひゃひゃひゃひゃっ!!もう無理!!止めて!止めて!!限界!!」
「ハイ顔面スト~ップ!!その表情でキ~プ!!」
「え?」
おいてあった手鏡でローナの顔を映すと
そこには幼い顔をさらに笑顔で幼くする可愛い少女が映っていた。
「私…こんな顔できるんだ…」
しゃべった瞬間消えたが。
「あぁ~失敗だぁ~いい?今から言うことに従ってね?」
「え?うん。」
私って流されやすいのかなぁ…
「はい!両手の人差し指を出してぇ~唇の両端に指を片方ずつ添えてぇ~」
「添えてぇー」
「上へあげる!!」
「あげる!」
「そのままキープ!!」
「キープ!」
「口に力を加えてぇ~」
「……」
「目を細めてぇ~」
「………」
「口を開いてぇ~」
「………(顎がプルプルする…)」
「あいうえおー」
「あいうえお」
『あ』まではいいのだが『い』からはいつもの無表情に戻った。
声のトーン事態もいつもと変わらない。
「言葉はまた明日ね…おさらいよ!指を使わずに笑って~はい。口を開けて笑って~それを5回を3セット~」
ニッコリ(ンッパ)ニッコリ(ンッパ)ニッコリ(ンッパ)×5
笑うまでは出来るようになった。
「あぁ~すごい!可愛い!!超可愛い!!食べちゃいたい!!良かったーこれで笑えるじゃない!!あぁー私ってすごい!!」
「本当にありがと」
教えてもらった笑顔を見せるローナ。
それが今のローナの精一杯の感謝の笑顔だった。
「お礼なら子守歌で返して❤シューベルトね☆」
「うん。」
ずっと微笑を浮かべているローナ。
「ずっと笑わなくてもいいのよ?」
「ううん。なんだか、笑っていれば笑いながらお話しできる気がして…」
「できてるわよ?今」
「えっ!?嘘!!」
「喜怒哀楽の喜と楽はマスターしたね☆声もなんだか楽しそうだもん」
マリシナも嬉しそうに答えた。
「そうかなぁ…」
ローナは恥ずかしそうに笑った。
「そうだ!明日ムッスンに会ったら笑えるようになったんだーって笑って見せてあげたら?」
「え?どうして?」
「いいからいいから!!ね?そうしよ?さささっもう夜も遅いし寝よ!!」
「うん。」
ローナは小さな声で子守歌を歌った。
もっともマリシナは子守歌など聞かずに3秒で寝たが…。
こうして、ローナのなんだかとても長く感じられた一日は終わった…。
一日で何話使う気でしょうね。。。