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客人②

「美菜穂、君のおじいさんとおばあさんが来ているんだけど・・・」

澄は美菜穂に問うた。

「おじい様とおばあ様が?」

玄関を一瞥すると源之助と久乃がいた。

「澄くんだったね、私たちは今までまともに美菜穂と向き合ってやれなかった・・・」

源之助は申し訳ないといわんばかりの顔つきだった。

「美菜穂や、一度家に戻ろう」

美菜穂は青菜に塩になった。

「澄くん、美菜穂を一度帰らせてまたここに来させます」

息子の圧力に負けた私たちに美菜穂を守る資格はない。

「美菜穂、僕はいつでも待っているから一旦家に帰りなよ」

美菜穂は安心しきった顔になった。

「うん」

そういえば、じいちゃんとばあちゃんにはどうやって説明したらいいんだろう。

「後で銀次郎さんとトキさんに連絡しておくからね」

久乃が澄の不安を打ち消した。

「澄、また後でね」

美菜穂は靴を履いて乙原家を後にした。



これでいいんだ。自分がしたことは間違っていないはず。

でもなんか心にぽっかり穴が開いた気分だ。

美菜穂と出逢って短いけれど、初めてできた女友達だ。そして初めて恋した少女。

彼女がつらい境遇にあっている話を聞いたとき、守りたいと思った。

最初はただの一目ぼれだった。

一緒にすごしていくうちに気が合うというか、波長が合うというか・・・ずっと長い付き合いをしたいと思った。

僕の初恋は線香花火のようにはかなく消えていくのだろうか。




美菜穂が乙原家に戻ってきたのは、夕方だった。

美菜穂は重い荷物を抱えてやってきた。

「わぁ、結構荷物重そうだなぁ。僕が持っていくから、美菜穂は茶の間に座ってて」

美菜穂は茶の間にある座布団に正座した。

美菜穂の荷物は和室の隅っこに置かれた。


よく考えたら、じいちゃんとばあちゃんはいつ戻ってくるのだろう。


澄が考え事をしていると、茶の間にある電話が鳴った。

「美菜穂はでなくていいから、座ってて」

澄が受話器を取った。

「はい、乙原です。どなたですか?」

『あぁ、澄か。じいさんじゃ』

「じいちゃんどうしたの?」

『あのなぁ、寿さんとこの美菜穂ちゃんがしばらくうちでとまることになっただろ?でもなぁ、わしとばあさんは今日帰れないから、今日は澄がみてくれ』

「えぇー!?」

戻ってこないの!?いろいろな意味でまずいと思うけどなぁ。

要するに今日は美菜穂とふたりっきり!

『ということで、頼むなぁー』

銀次郎は電話を切った。

澄は受話器を置いて、心の中でガッツポーズをした。

しかしできるだけ顔に出さないようにしよう。



「美菜穂、おなかすいてないか?」

「うん、まだ夕飯食べてないのよ」

澄は時計を一瞥した。六時半をさしている。夕食にはちょうどいい時間帯だ。

澄は台所で食材を探し始めた。

おっ、ちりめんじゃこに青じそがある。後はごぼうに牛肉があるなぁ。

よし、今日はじゃこと青じその炒飯に新ごぼうと牛肉の土佐煮にしよう。

「今日は美菜穂のために作るからね」

澄は満面の笑みを浮かべた。



料理が出来上がったのは一時間後だった。

澄はお盆を抱えてちゃぶ台に置いた。

「これ、全部澄が作ったの!?」

美菜穂は目を輝かせた。

「そうだよ、口に合うかどうか分からないけど」

美菜穂はじゃこと青じその炒飯を一口つけた。

「おいしいわ、これこんど作り方教えてよ」

気に入ってもらえてよかった。

「そうだお風呂がもう入っているから、先に入って良いよ」

もし美菜穂がきたときにというときに先にお風呂を入れていたのだ。

「わかったわ」

食事中二人はたわいない会話をしていた。

「なんか、新婚さんみたいだね」

美菜穂は肩をすくめた。

「うーん、確かに・・・」

なんかうれしいような恥ずかしいような。

大切な人と過ごすひと時は、お金にも銀にも変えられない。

「ご馳走様、先にお風呂入るね」

美菜穂は風呂用具を取りに行き、風呂場に向かった。


よく考えたら、美菜穂は今から一糸まとわぬ姿になるのかぁ。

いやいや、こんな事考えてる場合じゃない!


澄は食器を下げて洗い始めた。


あぁー、よからぬことを考えてしまう!

洗い物の最中、澄は葛藤との戦いだった。


美菜穂が風呂から上がってから続けて澄が入った。

二人がお風呂からあがった後、テレビを見ていた。

「あぁ、もうこんな時間か、寝ないといけないなぁ」

時計は十時半をさしていた。

「あ、あのね、私暗いところで一人で寝るの怖いの」

ということは一緒に寝てくれということか。

「それはつまり一緒に寝てくださいということ?」

美菜穂は静かにうなづいた。

「分かった。そうしよう」


二人は一緒に和室に布団を並べた。

「じゃ、お休み」

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