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再会②

澄は学校から帰ってから美菜穂が来ることを母に伝え、昼ごはんを食べてからすぐに篠目駅に向かった。

待ち合わせの時間は二時である。

篠目駅は待ち合わせのスポットとして、利用する人が多い。

「あっ、美菜穂!」

澄は美菜穂に向かって大きく手を振った。

美菜穂は手を振りながら澄のもとに向かった。

レース衿付きで上半分が白、下のスカート部分はピンクと白のドットの組み合わせを着ている。

時計はピンクを基調とし、ラインストーンを敷き詰めていて、高級感あふれている。

鞄も茶色でサイドには花柄がついている。

しいて言うなら、どっかの御嬢さんのようなコーディネートである。

「澄、長く待ったでしょ?」

「ううん、今来たんだ」

それに待ち合わせで遅れるのは、人としてどうかとおもう。

「さぁ、行こうよ」

美菜穂は静かに手を差し出した。

澄は美菜穂の手を握った。

「わ、私、まだこの辺のことわからなくて…勝手に手をつないだりなんかして…」

「そんなこと気にしないよ」

正直手を握られると恥ずかしさが倍増する。でもうれしい。

二人は篠目駅から竹目小学校前でバスに乗った。

澄の家はバスを降りてから五分歩いたところにあり、赤い屋根が目印である。

近所でもひときわ目立つ家である。

澄が家のドアを開けると、一目散に母の美音子が来た。

「あらぁ、この子が美菜穂ちゃんなのね!」

美音子の目は輝いていた。

「こ、寿美菜穂と申します。よろしくお願いします」

美菜穂は恭しく玄関で挨拶した。

「まぁー、そんな堅苦しくならなくてもいいのよ。さぁさぁ上がって。澄の部屋は二階だから」

美音子は、澄の部屋は汚いけどと付け加えて、リビングに戻った。


部屋汚いけどは余計でしょ!

だいたい自分、こまめに掃除しているし!

澄はだれが来てもいいように、週に一回は掃除機をかけている。


「美菜穂、先に行ってて。お菓子取りに行くから。部屋は上がって右にあるから」

「わかった」

二人は靴脱いで、別行動をした。

澄がリビングに行くと、美音子が何か言いたげな顔をしていたが無視した。

お菓子は昨日作ったクッキーで、紅茶はダージリンにしよう。

お盆にお菓子とクッキーを乗せて部屋に戻った。

部屋に戻ると美菜穂は正座をして待っていた。

「美菜穂、そんな構えなくてもいいのに」

澄は苦笑した。

「はい、これお菓子ね。僕が昨日作ったんだ」

澄は美菜穂にクッキーを一枚差し出した。

美菜穂は静かにクッキーを食べた。

澄は息をのんだ。

これでまずい、なーんて言われたら、寂しい。

「わぁ、これ美味しいわ!甘い!」

美菜穂は目を丸くした。

澄は昨日蜂蜜のクッキーを作った。甘いものは疲労回復の役目がある。


あぁ、よかった。

澄は安堵の顔をした。

「澄の部屋ってシンプルでいいね。私こういうの好きなの」

澄の部屋は八畳の広さ。ベットと机が一体化した机、黒色のピアノ、テレビ、クローゼット、本棚がある。

勉強机にノートパソコンがあり、床に小さな机がある。カーテンは水色。

本棚はピアノの楽譜と、料理本がたくさん並んである。

「今日、僕をやたらからかってきた子いるじゃん。あの人とは幼稚園からの幼馴染なんだけど、家に来るたびにいちゃもんをつけられるんだなぁ…」

澄は遠い目をした。

阿部礼治には「澄の部屋は女子みたいだ。特に本棚」としょっちゅう言われる。

「あぁ、確か…阿部くんだっけ、からかってきたのは」

「そうだよ。阿部礼治。幼稚園から親同士が仲が良くてさ。愛称は礼ちゃん。クラスで絶対一人はいるような調子もんだよ」

澄は肩をすくめた。

「澄はなんていわれてるの?」

「普段は、きよっちゃんって言われるけど、たまに呼び捨てになる」

「じゃぁ、私もきよっちゃんって呼んでいい?」

「えーっ、美菜穂は呼び捨てでいいよ」

女子で呼び捨てで呼ぶ人は基本的に、家族、親類だけである。

「そうね。たしかに呼び捨てだったら特別感が増すよね」

美菜穂はほくほく顔になった。

それから二人は至福の時をすごした。

美菜穂にピアノを弾いてと言われ、澄はドビュッシーの『月の光』を弾いた。

澄は元々親のすすめで幼稚園からピアノを習っていた。

最初は嫌々していたが、だんだん年が上がるにつれてピアノの楽しさに引き込まれた。

小中学校の時は、ピアノのコンクールに出場したが頑張っても銅賞。

中学校では二年、三年とクラス対抗の合唱コンクールで伴奏を担当した。

現在は独学で、趣味の範囲でしている。

美菜穂もピアノを披露した。メンデルスゾーンの『春の歌』である。

澄は感情を聞き手を引き込ませるような演奏に、舌を巻いた。

自分自身も見習わなければならないところだったからだ。

「あっ、そろそろ帰ろうかしら」

腕時計を見ると六時前を差していた。

「そうだね。一人で帰れる?」

「えぇ」

いやぁ、美菜穂みたいな美人さんは狙われやすいんだけどなぁ。

まぁ、一人で帰れるといっているなら大丈夫かな。

「じゃぁ、また明日ね」

美菜穂は乙原家を後にした。



二学期が本格的に始まった。

美菜穂はすぐに日谷学園に馴染んだ。友達もすぐにできた。

そして澄と美菜穂がいる時間は今まで以上に増えた。

休日には、ショッピングに行く、遊園地に行く、お互いの家に行くなど。

美菜穂の姉、司は澄のことを気に入ってくれた。

『美菜穂はつらい目にたくさん遭いました。どうぞ、この子を幸せにしてほしいです』といわれた。

たまに喧嘩をするときもあったが、次の日にはだいたい元に戻っている。

そのたびに礼治には「ほんと、お前らって磁石みたいだな」と笑われた。

澄と美菜穂は大学は別々に進学した。

澄は音楽の教師を目指すために、美菜穂は幼稚園の教諭を目指した。



二人が出会ってから十年の歳月が流れた。


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