初めてのアルバイト 2
そしてバイト初日、感想から言うと、私は無能という役割を懇切丁寧に全ての分野において発揮した。まず、一緒に働く従業員への挨拶で
「ヨ…ヨロシクオネガイシマス」
と、緊張のせいで片言の外人みたいになってしまった。それで皆が少しでも笑ってくれれば違ったのかもしれないが、皆の口角は1ミリも動かず、それから5秒間私の耳に入ってきた音は、時計の秒針が動く音だけだった。
その地獄の挨拶の後、私はベテランらしき従業員の人に、品出しを教えてもらった。
「新しく出す商品を後ろに置いて、賞味期限の近い商品を前に置くんだよ」
「…へ、へあ」
そう私は返事をし、品出しをした。商品を出すスピードは歴然としていた。私は途中(同じ人間という生物であるのか!)と疑いの念を向ける程に全くもって、全然に、本当にもうやんなるくらい違った。
その後、品出しが終わり、レジを教えてもらう事になった。その瞬間である!ベテラン従業員さんの言語が、日本語から私の知らない異国の言葉に変わってしまったのだ‼︎
「あー、このレジはねー、4×2>^〆÷〒7(-0:):4こえやね「lusyus7t÷8〆|9〒々\でねえ、ここをs(t々84するとね…」
この辺りから私の頭はパンクし、その後の事は断片的に何となくしか記憶にない。
唯一記憶にあるのは、その後ベテラン従業員さんの補佐を受けながら本番のレジ打ちという展開になり、お客さんがレジに来るのを待っている間、不安と緊張で私の口の中の水分は全て枯れ果て、水分が欲しいが手元には無く、
「水分補給に行ってもいいですか?」
とも言えるはずも無く、私の口臭は、生き物すべてを不快にさせる臭いを放っていただろう。その臭いは、ライオンなどが私を襲い食すなどした時には威嚇など、その臭いに怯んでいる隙に逃げる、などの効果があるかもしれないが、レジ打ちには全くもって必要の無い臭いであった。その後、一人のお客さんがレジに来て、商品を何点かレジの前に置く
「…あっ、んあー!」
私が緊張や不安で何か訳のわからぬ言葉を発してしまった次の瞬間、お客さんが(うわっくさっ)という顔をしたのである。
…その瞬間からなにも覚えていない、というより私の脳は防衛本能で記憶する事を拒否したのであろう。
その夜半、自分の部屋の扉の締まりを完璧にし、窓を閉め、自分の部屋を完全に密閉状態にしたのを確認し、ベッドに横たわり、枕に顔を埋めたのち、また発狂した。母が顔色を変えて寝床から起き上がり私の部屋に入ると、何か訳の分からぬ事を枕に叫んでる息子を蹴破るように蹴り、闇のように静かになった。その後、私に対する家族の中の階級が、[最下層]から[害のある最下層]になったのは言うまでもない。
そして私はバイトを辞めた。




