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第32話 光を返す糸



 灰晶洞窟迷宮から戻ると、俺たちはまっすぐ治療所へ向かった。


 発光キノコ人の胞子を吸い込んでいないか確認してもらうためだ。


 喉。


 目。


 肺。


 治療師は俺たちを一通り調べたあと、問題はないと告げた。


「濡れた布で口元を覆ったのは正解です。ただし、完全に防げるわけではありません」


「分かってる」


「目眩や吐き気、咳が出たら、すぐに来てください」


「ああ」


 治療師の話が終わると、隣に座っていたエドガーが立ち上がった。


「今日は素直だったな」


「毒や胞子は、後から症状が出る」


「受付の女に言われ続けた成果か」


「最初から知っていた」


「知っていても、来なかっただろう」


 否定できなかった。


 俺たちは治療所を出て、冒険者協会へ戻った。


     ◇


「《発光キノコ人》を二体ですか」


 受付の女性が、二重の防水布で包んだ素材を見ている。


「開けると胞子が漏れるかもしれない」


「分かりました。素材庫の担当者に、屋外で確認してもらいます」


 発光キノコ人の傘。


 石のような芯が通った根。


 どちらも、俺たちでは用途が分からない。


 受付の女性が提出書類へ記入する。


「土魔法による石杭も確認した、と」


「ああ。根を通して、離れた場所へ出していた」


「過去の報告とも一致しています」


 受付の女性は、俺たちが書いた簡単な地図を確認した。


「この空洞の先へ、下り坂はありませんでしたか?」


「あった」


 発光キノコ人がいた空洞の奥。


 岩壁の一部が裂けるように開き、その先に下向きの道が続いていた。


 戦闘後は胞子が残っていたため、詳しくは調べていない。


「その先が、第三階層へ続いている可能性が高いです」


「確認されている魔物は?」


「情報はあります。ただし、第三階層は報告数が少なく、正確ではありません」


 受付の女性が、別の紙を取り出す。


「岩や結晶へ擬態する魔物。透明に近い糸を張る蜘蛛型の魔物。土や石を身体へまとった大型の魔物などです」


「種類は確定していないのか」


「同じ魔物が別の名前で報告されている可能性があります。暗い洞窟内で、全身を確認できずに撤退した冒険者も多いので」


 俺は紙に描かれた簡単な図を見る。


 細長い脚。


 丸い胴体。


 蜘蛛に似た形をしている。


「糸は見えるのか」


「光の当たり方によっては見える、と書かれています」


「触れた場合は?」


「硬化して、武器や防具へ絡みつくそうです」


 糸蜘蛛の粘糸とは違う。


 ユーカリ森林迷宮の糸蜘蛛は、獲物の動きを止めるため、柔らかく粘る糸を使った。


 こちらは、絡みついたあとに硬くなるらしい。


「火には弱いのか」


「記録がありません」


「水は」


「不明です」


「切れるのか」


「不明です」


 受付の女性が、少し不満そうな顔をする。


「役に立たない情報ばかりで申し訳ありません」


「いや」


 確実ではないことを、確実だと言われるよりいい。


「分からないなら、確かめながら進む」


「確かめるために身体で触れるのはやめてください」


「触れるつもりはない」


「先ほど、毒針を身体で確かめたばかりですよね」


「掠っただけだ」


「結果の話ではありません」


 隣で、エドガーが小さく咳払いをした。


 笑いを隠しているように聞こえた。


     ◇


 素材の査定が終わるまで時間がかかるため、俺は一度家へ戻った。


 扉を開けると、野菜を煮込んだ匂いがした。


「おかえり」


 台所からアレナが顔を出した。


「どうしているんだ」


「お父さんが、鍋を返してこいって」


 机の上には、以前借りた大きな鍋が置かれている。


 中には、新しい野菜スープが入っていた。


「返しに来た鍋へ、またスープを入れたのか」


「空で返すのは寂しいから」


「鍋は寂しがらない」


「ウィルは?」


 答えに困った。


 アレナは少し笑い、視線を壁へ向けた。


 そこには、役目を終えた《初心者用片手剣》が掛けられている。


「剣、飾ったんだね」


「ああ」


「壊れたの?」


「もう戦いには使えない」


 アレナが壁へ近づく。


 剣には触れず、少し離れた場所から眺めた。


「ずっと使ってた剣だよね」


「最初に手に入れた剣だ」


「ウィルを守ってくれた?」


「何度も」


「じゃあ、ここに置いてもらえてよかったね」


 ただの道具だ。


 剣自身が、喜ぶことはない。


 それでも、アレナにそう言われると、捨てずに持ち帰ってよかったと思えた。


「新しい剣は?」


「腰にある」


 俺は《疾風の鋼剣》を鞘ごと外し、机へ置いた。


 アレナが少しだけ身を引く。


「抜かないぞ」


「分かってる。ちょっと驚いただけ」


「前の剣より強い」


「ウィルも強くなったの?」


「少しは」


「じゃあ、前より怪我をしなくなる?」


 すぐには答えられなかった。


 武器は強くなった。


 《洞窟歩行》や《打撃耐性・小》、《土魔法耐性・小》も得ている。


 だが、進む先の魔物も強くなる。


「怪我をしないとは言えない」


「うん」


「だが、帰る」


 アレナは少しだけ目を伏せたあと、うなずいた。


「それならいい」


 迷宮主を倒したかではなく。


 どれほど強くなったかでもなく。


 帰ってくるか。


 アレナが知りたいのは、いつもそれだけだった。


「スープを食べる?」


「ああ」


「今日は黒パンじゃないよ」


「家で黒パンを食べたことはない」


「鉱山にいた頃の癖で、隠しているかもしれないと思って」


「隠していない」


「床下は?」


「何もない」


「天井裏」


「屋根を直したばかりだ」


「じゃあ、壁の中?」


「どうして黒パンを隠す前提なんだ」


 アレナは笑いながら、スープをよそった。


 俺も少しだけ口元が緩んだ。


     ◇


 翌朝。


 俺たちは灰晶洞窟迷宮へ向かった。


 今回の目的は、第三階層へ続く道の確認。


 無理に魔物を探すつもりはない。


 第一階層を抜け、第二階層へ下りる。


 途中で鉱喰いネズミ一体と遭遇したが、戦闘は長引かなかった。


 俺が盾で正面を逸らし、《疾風の鋼剣》で前脚を斬る。


 動きが止まったところへ、エドガーの矢が刺さった。


 剣を噛ませることなく、討伐できた。


《鉱喰いネズミ》を討伐しました。


鉱喰いネズミ討伐数:5体


次回ガチャチケット獲得まで:あと5体


 銀色の前歯と魔石を回収し、先へ進む。


 発光キノコ人がいた空洞へ着いた。


 青緑色に光っていた小さなキノコの多くは、光を失っている。


 中心となる発光キノコ人を倒したことで、周囲のキノコにも影響が出たらしい。


「胞子は」


「見えないな」


 濡らした布を口元へ巻き、慎重に空洞を通る。


 奥にある裂け目へ入った。


 通路は徐々に下っている。


 足元には細かな石が多く、ところどころに深い亀裂があった。


 《洞窟歩行》がなければ、何度も足を取られていただろう。


 しばらく進むと、空気が変わった。


 冷たい。


 土と湿気の匂いが薄くなり、代わりに乾いた石の匂いが強くなる。


 岩壁には、細い透明な結晶が混じっていた。


 簡易魔石灯の光を受け、白や青の光を返している。


「第三階層か」


「たぶんな」


 エドガーが小さな石を拾い、前方へ投げる。


 石が岩床へ落ちた。


 乾いた音が響く。


 魔物の反応はない。


 俺たちは赤い布を岩の突起へ結び、地図へ道を書き加えた。


 通路を進むほど、壁の結晶が増えていく。


 天井にも、細い結晶が垂れ下がっていた。


「待て」


 エドガーが俺の肩を掴んだ。


 そのまま、足元を指す。


 何も見えない。


 だが、簡易魔石灯を低く構えると、細い光が一本だけ浮かんだ。


 通路を横切る、透明な糸。


 光を受けた一瞬だけ、白く輝いている。


「受付で聞いた糸か」


「ああ」


 俺は投擲用石弾を取り出し、糸へ向けて軽く投げた。


 石弾が糸へ触れる。


 糸は切れなかった。


 石弾へ巻きつき、そのまま白く変色する。


 パキッ。


 乾いた音がした。


 糸が細い結晶のように固まり、石弾を空中へ固定した。


「硬化するのは本当らしいな」


「剣で触れない方がいい」


「ああ」


 《疾風の鋼剣》を使えば切れるかもしれない。


 だが、切れなかった場合、刀身へ糸が絡みつく。


 新しい剣を失う危険は冒せない。


「糸を張った魔物が近くにいる」


 エドガーが天井を見上げる。


 俺も簡易魔石灯を高く掲げた。


 岩壁。


 天井。


 結晶の隙間。


 何もいない。


 そのとき。


 壁に生えた結晶の一つが、ゆっくりと動いた。


「上だ!」


 エドガーが叫ぶ。


 天井から、白い塊が落ちてきた。


 俺は円盾を構える。


 重い衝撃。


 盾の表面へ、六本の細長い脚が食い込んだ。


 蜘蛛。


 胴体は人間の頭ほどだが、脚を広げると円盾よりも大きい。


 全身が透明に近い殻に覆われている。


 簡易魔石灯の光を反射し、周囲の結晶へ溶け込んでいた。


《結晶蜘蛛》


 魔物の名前が視界へ浮かぶ。


 結晶蜘蛛が、盾の上で身体を沈めた。


 腹部から透明な糸が伸びる。


 円盾の金属縁へ、糸が絡みついた。


「離れろ!」


 俺は盾を地面へ叩きつける。


 結晶蜘蛛が跳んだ。


 だが、糸は盾から離れない。


 蜘蛛の身体と円盾が、一本の糸でつながっている。


 糸が白く変色し始めた。


 硬化する。


 俺は盾を手放した。


 直後、糸が結晶の棒のように固まった。


 円盾が岩床へ固定される。


「盾を取られた」


 結晶蜘蛛が壁を走る。


 速い。


 透明な脚が結晶の間を動き、姿が何度も見えなくなる。


 エドガーが矢を放った。


 矢は結晶蜘蛛の脚を掠め、岩壁へ弾かれた。


「殻が硬い!」


「腹は?」


「見えん!」


 結晶蜘蛛が壁の上で止まる。


 胴体の周囲に、白い光が集まった。


「来るぞ!」


 細かな結晶の欠片が、雨のように飛んできた。


 盾は使えない。


 俺たちは左右へ分かれ、岩の陰へ飛び込んだ。


 数個の欠片が、右腕と肩へ当たる。


 革防具の表面が切れた。


 衝撃が身体へ伝わる。


 だが、岩殻サソリの鋏ほど重くはない。


 《土魔法耐性・小》が働いているのかもしれない。


 それでも、まともに顔へ受ければ目を潰される。


「エドガー!」


「動ける!」


 岩の向こうから声が返ってくる。


 結晶蜘蛛が天井へ移動する。


 姿を見失う。


 俺は《疾風の鋼剣》を抜き、周囲へ目を向けた。


 透明な糸が、何本も張られている。


 先ほどまでは見えなかった。


 だが、結晶蜘蛛が動いたことで、糸がわずかに揺れていた。


 一本。


 二本。


 頭の高さにもある。


 走れば、首や腕へ絡みつく。


「動くな!」


「ああ!」


 エドガーも糸に気づいたらしい。


 結晶蜘蛛は、姿を隠したまま俺たちが動くのを待っている。


 盾は固定された。


 通路には糸。


 天井からは結晶の欠片が飛んでくる。


 正面から追えば、こちらが不利になる。


 俺は剣を小さく振った。


 刀身の緑色の線が光る。


 弱い風が、通路を流れた。


 透明な糸が揺れる。


 魔石灯の光を受け、何本もの線が浮かび上がった。


「見えるか」


「見える」


 エドガーが答える。


「風を止めるな」


「大きく振れば、糸に剣が触れる」


「小さい風でいい」


 俺は短い動きで剣を振る。


 右。


 左。


 切り返すたび、弱い風が通路へ流れた。


 透明な糸が揺れ、白い光を返す。


 糸がない場所だけが、暗い道として残る。


「右側に通れる場所がある」


「ああ。だが、あいつはどこだ」


 エドガーが弓を構えたまま、天井を見る。


 糸は揺れている。


 その中で、一本だけ動き方が違う糸があった。


 一定の揺れではない。


 引かれるように、断続的に震えている。


 糸の先は、天井の大きな結晶へ続いていた。


「そこだ!」


 俺が指した瞬間、エドガーが矢を放った。


 矢が大きな結晶へ当たる。


 結晶の陰から、蜘蛛の脚が飛び出した。


 命中はしていない。


 だが、隠れていた場所は分かった。


 結晶蜘蛛が天井を走る。


 エドガーが二本目の矢を放つ。


 今度は前脚の関節へ刺さった。


 結晶蜘蛛の身体が傾く。


 天井から落ちた。


 俺は糸の隙間を進む。


 《洞窟歩行》が、足元の凹凸を伝えてくる。


 走らない。


 剣を大きく振らない。


 透明な糸の位置を見ながら、一歩ずつ距離を詰める。


 結晶蜘蛛が岩床へ着地した。


 傷ついた脚を引きずりながら、俺へ向きを変える。


 腹部が持ち上がった。


 糸を吐く。


 俺は左へ動いた。


 透明な糸が、肩の横を通り過ぎる。


 背後の岩壁へ当たり、白く硬化した。


 結晶蜘蛛との距離は、あと数歩。


 剣を振れば届く。


 だが、背中の殻は硬い。


「腹を見せろ!」


 エドガーの矢が、結晶蜘蛛の反対側へ飛んだ。


 倒すための矢ではない。


 岩床へ当たり、大きな音を立てる。


 結晶蜘蛛が音へ反応し、身体を横へ向けた。


 俺は円盾を失っている。


 正面から飛びかかられれば、防ぐものがない。


 結晶蜘蛛が身体を沈める。


 跳んだ。


 透明な脚が、顔へ迫る。


 俺は剣を横へ振らない。


 切っ先を下へ向け、身体の正面へ立てた。


 結晶蜘蛛の前脚が剣へ触れる。


 硬い衝撃。


 そのまま押し切られそうになる。


 俺は後ろへ一歩下がった。


 剣で止めない。


 結晶蜘蛛の勢いを受けながら、身体を右へ回す。


 魔物の身体が横へ流れる。


 腹部が見えた。


 透明な殻に覆われていない、白く柔らかな部分。


 俺は手首を返した。


 《疾風の鋼剣》の切り返し。


 風が刃を押す。


 下から上へ。


 白い腹部へ、刃が食い込んだ。


 結晶蜘蛛の身体が大きく跳ねる。


 硬い背中の殻へ当たる直前で、剣を止めた。


 深くは入っていない。


 だが、傷口から白い液体が流れている。


 結晶蜘蛛が脚を振り回す。


 一本が胸へ当たった。


 俺は横へ弾かれ、岩床を転がった。


「ウィル!」


「動ける!」


 すぐに立ち上がる。


 結晶蜘蛛は、腹部を守るように身体を低くしている。


 再び天井へ逃げるつもりだ。


 だが、傷ついた前脚では速く動けない。


 エドガーの矢が、後脚の関節へ刺さった。


 結晶蜘蛛が止まる。


 俺は糸のない場所を選び、踏み込んだ。


 大きく振らない。


 短い突き。


 風が切っ先を押す。


 剣が、先ほど斬った腹部の傷へ突き刺さった。


 結晶蜘蛛の脚が、俺の腕へ絡みつく。


 透明な殻が防具を引っ掻く。


 俺は剣を抜かない。


 さらに一歩、前へ出る。


 切っ先が奥へ進んだ。


 結晶蜘蛛の身体から力が抜ける。


 脚が岩床へ落ちた。


 俺は剣を引き抜き、すぐに距離を取った。


 エドガーが矢をつがえたまま、倒れた魔物へ近づく。


 結晶蜘蛛は動かなかった。


「終わりだ」


「ああ」


 視界へ文字が浮かぶ。


《結晶蜘蛛》を初めて討伐しました。


ガチャチケットを1枚獲得しました。


所持ガチャチケット:2枚


灰晶洞窟迷宮討伐記録:7/10


 七種類目。


 残りは三種類だ。


 俺は《疾風の鋼剣》の刀身を確認した。


 刃こぼれはない。


 結晶蜘蛛の背中へ無理に斬りつけなかったからだ。


「盾を回収するぞ」


 エドガーが言った。


 円盾は、硬化した糸によって岩床へ固定されている。


 糸は細い。


 だが、剣で切るのは危険だ。


「糸の根元を壊す」


 盾へ絡んでいる部分ではなく、岩床へ接着した部分を確認する。


 俺は小型ハンマーを取り出した。


 硬化した糸の周囲へ、慎重に打ち込む。


 一度。


 二度。


 岩床の表面が剥がれ、硬化した糸が盾ごと外れた。


「剣を使わないのか」


「糸が刃へ絡んだら困る」


「学んだな」


「受付に、身体で触れるなと言われた」


「それも覚えていたか」


 円盾に残った糸は、町へ戻ってから職人に外してもらった方がいい。


 無理に剥がせば、盾の金属縁まで傷つける。


 俺たちは結晶蜘蛛の魔石と、腹部にある糸を作る器官を回収した。


 硬い背中の殻も一部だけ外す。


 透明な殻は、光の角度によって白や青に輝いた。


「この糸は使えるかもしれん」


 エドガーが、結晶蜘蛛の糸腺を見ている。


「弓にか」


「そのまま弦にはできん。だが、加工できれば罠や補強材にはなる」


「硬化する性質を残せれば強そうだ」


「ああ。ただし、味方まで固めないように使う必要がある」


「食料を投げるよりは役に立つ」


「まだ根に持っているのか」


「食べ物を粗末にするな」


 エドガーは真顔だった。


 俺たちは第三階層の入口へ、赤い布を結んだ。


 今日は、ここまでだ。


 新しい魔物を一体倒した。


 通路の糸の性質も確認した。


 これ以上進む必要はない。


 戻る前に、俺は簡易魔石灯を奥へ向けた。


 光を受け、暗闇の中で何本もの透明な糸が輝く。


 一本や二本ではない。


 通路の奥。


 天井。


 左右の岩壁。


 数え切れないほどの糸が、第三階層の奥へ続いていた。


 さっき倒した一体が、すべてではない。


 むしろ、入口を守る一体にすぎなかったのかもしれない。


「次は、糸を切る方法が必要だな」


 エドガーが言った。


「ああ」


「火を試すか」


「洞窟の中で使って大丈夫なのか?」


「だから、町で先に試す」


 持ち帰った糸で性質を確かめる。


 火。


 水。


 油。


 衝撃。


 剣を危険にさらす前に、試せることはある。


 俺たちは第三階層へ背を向け、来た道を戻った。


 討伐記録は、7/10。


 ガチャチケットは、2枚。


 迷宮の奥へ進むほど、魔物の性質は複雑になっている。


 強い剣だけでは足りない。


 相手を知り。


 失敗を減らし。


 使えるものを増やしていく。


 それでも、道は前へ続いている。


 暗い通路の奥で、透明な糸がもう一度だけ光を返した。


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