第六部 戦いのあとの戦い
えーここから色々とスローライフじゃ無くなるので
よろしくお願いします。
――雷神の魔導砲、発射!!」
ドゴォォォォォォォン!!
轟音とともに放たれた極太の雷光が、大気を裂きながら終焉竜ゼルヴァグへと突き進む。
「グオオオオオッ!!」
ゼルヴァグも負けじと黒炎のブレスを放った。
雷と黒炎。
二つの力が空中で激突する。
ドォォォォン!!
衝撃波で森が大きく揺れ、遺跡の壁が次々と崩れていく。
「押し切れ……!」
ユウトは魔導砲へ全魔力を注ぎ込む。
雷光は少しずつ黒炎を押し返していく。
「今です!」
レンが叫ぶ。
「セリス!」
「任せて!」
セリスは岩場を蹴り、一気に空高く跳び上がった。
その姿はまるで一筋の蒼い流星。
「これが私の全力です!」
対竜魔剣に風の魔力をまとわせる。
「蒼天斬!!」
ズバァァァッ!!
剣がゼルヴァグの胸にある逆鱗を切り裂いた。
「グガァァァァァ!!」
竜が苦痛の咆哮を上げる。
「レン!」
「はい!」
レンは静かに目を閉じる。
「風の精霊よ、導いて。」
黄金色に輝く一本の矢が現れた。
「精霊穿ち。」
ヒュン!!
矢は一直線に逆鱗へ吸い込まれ――
ドスッ!!
深々と突き刺さる。
「今だ、ユウト!」
ユウトは叫んだ。
「終われぇぇぇぇぇ!!」
雷神の魔導砲が最大出力へ。
ドゴォォォォォォォォン!!
雷撃は逆鱗を貫き、そのままゼルヴァグの体内を駆け巡った。
全身に稲妻が走る。
「グオオオオオオオオオオッ!!」
悲鳴にも似た咆哮が響き渡る。
やがて――
バキッ……
胸の紅い結晶に亀裂が入る。
「割れた!」
リリィが声を上げる。
バキバキバキッ!!
結晶は粉々に砕け散り、ゼルヴァグの巨体は黒い粒子となって崩れ始めた。
「勝った……?」
誰もが信じられず、その場に立ち尽くす。
数秒後。
巨大な体は完全に消滅した。
静寂が森を包む。
そして――
「勝ったぁぁぁぁ!!」
討伐隊から歓声が上がる。
「終焉竜を倒したぞ!」
「奇跡だ!」
「ユウトたちのおかげだ!」
皆が涙を流しながら抱き合って喜ぶ。
数時間後。
ギルドへ戻ったユウトたちは英雄として迎えられた。
「乾杯!!」
ギルド中に歓声が響く。
「終焉竜討伐、おめでとう!」
「今日は飲み放題だ!」
宴会が始まり、冒険者たちは次々とユウトへ酒や料理を持ってくる。
もちろんユウトは未成年なので果実ジュースを片手に苦笑いしていた。
「こんな歓迎、照れるな。」
するとレンが隣へ座る。
「改めて自己紹介するわ。」
「私はレン。」
「王都のレンジャー部隊に所属するエルフ。」
「あなたを迎えに来たの。」
「俺を?」
「王都では、あなたの通販スキルの噂が広まっている。」
「ぜひ力を貸してほしいって。」
ユウトは少し驚く。
「俺なんかが?」
「終焉竜を倒した人を『なんか』とは言わない。」
レンは微笑んだ。
その笑顔に、リリィは少しだけむっとした。
「……。」
「どうした?」
「いえ、別に。」
セリスも二人を見ながら小さくため息をつく。
(また新しい女の子……。)
(しかも、とても綺麗……。)
レンはユウトの方を見て自然に笑う。
「あなたって、思っていたより優しい人なのね。」
「仲間を守るためなら、あんな高価な道具まで迷わず使うなんて。」
「そんな人、初めて見た。」
ユウトは照れ笑いを浮かべる。
「みんなが無事なら、それで十分だから。」
その一言にレンの頬がほんのり赤く染まった。
(この人……素敵。)
その様子を見たリリィは、ユウトの腕にそっと抱きつく。
「ユウトさん、今日は私の隣にいてください。」
するとセリスも反対側へ。
「私も今日は隣です。」
「え、えぇ!?」
ユウトは突然両腕を取られ、周囲の冒険者たちからは笑い声が上がる。
「ユウト、羨ましいぞ!」
「終焉竜だけじゃなく、女の子の心まで討伐したのか!」
ユウトは真っ赤になりながら否定するが、三人のヒロインたちは楽しそうに笑っていた。
(にしても最近魔導設備とかが通販で出始めたけど何でなんだろうな…)
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終焉竜ゼルヴァグ討伐から数日。
街には平和が戻り、ギルドも久しぶりに活気を取り戻していた。
「ユウトさん! 今日も注文がいっぱいですよ!」
リリィは笑顔で店先の商品を並べている。
「このフライパン、本当に便利ですね!」
「この保存容器も追加でください!」
ユウトの通販店は以前にも増して大繁盛だった。
「今日は忙しいな。」
「ふふっ、それだけユウトさんが街のみんなに頼られてるってことですよ。」
セリスも微笑みながら商品を運んでいた。
その時――
ドォォォォン……
遠くで地面が揺れた。
「地震?」
店の棚が小さく揺れる。
レンは窓の外を見つめ、真剣な表情になった。
「違う……。」
「この魔力……遺跡の方角。」
同じ頃。
終焉竜が倒れた遺跡の最深部。
砕け散った紅い結晶が床一面に散らばっている。
その中心には、誰も知らない巨大な円形の紋章が刻まれていた。
竜は長い年月、その紋章を守る番人だったのだ。
結晶が完全に砕けたことで、封印が解かれる。
ゴゴゴゴゴ……
遺跡全体が大きく震える。
やがて床が割れ、その地下からゆっくりと巨大な腕が現れた。
それは生き物ではない。
黒銀色の金属で造られた腕。
腕だけで五メートル以上ある。
そして二本目。
三本目。
四本目と腕が展開され巨大な身体がゆっくり姿を現す。
高さ三十メートル。
古代文字で覆われた全身。
四本の腕を持つ、圧倒的な巨人。
まるでどっかのSF映画の将軍の様な見た目だった
《古代防衛兵器 アーク・タイタン》
数千年前。
高度な文明が造り上げた、自動防衛兵器だった。
「……侵入者……確認。」
低く機械的な声が遺跡に響く。
「封印解除……。」
「防衛任務……再開。」
ブォォォン……
全身の古代魔導炉が目を覚ます。
空気が震え、魔力の嵐が巻き起こる。
その一歩だけで、山全体が揺れた。
街ではギルドの警報が鳴り響く。
「緊急事態です!」
受付嬢ミリアが飛び込んでくる。
「遺跡から巨大な何かが出現しました!」
「魔物じゃありません!」
「金属でできた巨人です!」
ギルド中が騒然となる。
「なんだと!?」
「そんな魔物聞いたことねぇ!」
レンだけは表情を変えた。
「古代兵器……。」
「まさか、本当に存在したなんて。」
ユウトは驚く。
「知ってるのか?」
「エルフに伝わる伝承よ。」
「昔、この世界には古代文明が存在していた。」
「その文明は、自分たちを守るために『生きる兵器』を造ったと言われている。」
「もし本物なら……終焉竜より危険。」
その言葉に、セリスも息をのむ。
「終焉竜より……。」
ユウトは通販スキルを開いた。
《対象を確認》
《解析開始》
数秒後。
画面が赤く染まる。
《名称》
アーク・タイタン
《危険度》
SSランク
《推定勝率》
4%
「……4%?」
終焉竜よりもさらに低い数字だった。
ユウトは画面を見つめ、静かに拳を握る。
「またみんなで乗り越えよう。」
セリスは力強くうなずく。
「もちろんです。」
リリィは杖を握り直す。
「今度も絶対に勝ちましょう!」
レンは弓に矢をつがえ、静かに微笑んだ。
「今回は、私も最後まで一緒に戦う。」
その時と同時刻
街は異様な静けさに包まれていた。
普段なら商人たちの威勢のいい声が響く広場も、今日は避難する人々であふれている。
「急いでください!」
「子どもを先に!」
ギルドの冒険者たちが住民を誘導していた。
その頃、ユウトたちは城壁の上に集まっていた。
遠くの山々から、一定の間隔で轟音が聞こえてくる。
ズン……。
ズン……。
そのたびに地面が震え、城壁の石がわずかに揺れた。
「来てる……。」
リリィが青ざめる。
やがて森の木々が左右へ倒れ、一つの巨大な影が姿を現した。
高さ三十メートルを超える鋼鉄の巨人――アーク・タイタン。
その四本の腕には、それぞれ異なる武装が装着されていた。
右上の腕には巨大な剣。
左上には大盾。
右下には魔力砲。
左下には巨大な鉤爪。
「まるで要塞だ……。」
ベテラン冒険者が絶望したようにつぶやく。
その瞬間、アーク・タイタンの目が青白く光った。
《対象確認》
《都市を古代遺跡への侵入拠点と認定》
《排除を開始します》
機械的な声が山々に響く。
次の瞬間――。
ドォォン!!
右下の魔力砲から青白い光弾が放たれた。
一直線に街へ向かう。
「まずい!」
ユウトはすぐに通販スキルを開く。
「防衛設備……防衛設備!」
画面が高速で切り替わる。
《購入可能》
・大型魔導障壁発生装置
・緊急防壁ユニット
・魔導迎撃砲
「これだ!」
ユウトは迷わず購入した。
眩い光とともに巨大な魔導装置が城壁の前へ出現する。
「起動!」
ブォォォン!
透明な光の壁が街全体を包み込んだ。
その直後――。
ドゴォォォン!!
光弾が障壁へ直撃する。
激しい爆発。
土煙が舞い上がる。
人々は息を呑んだ。
煙が晴れると、障壁には細かなひびが入っていたものの、街は無事だった。
「防いだ!」
「ユウトさん、すごい!」
リリィが笑顔になる。
しかしユウトは表情を崩さない。
「一発でこれか……。」
障壁の耐久力は半分以上失われていた。
「何発も耐えられない。」
その時、レンが森の方を見つめた。
「待って。」
「何か様子がおかしい。」
アーク・タイタンは街を見ていない。
正確には――街のさらに奥。
遺跡の方向を見つめていた。
「どういうこと?」
セリスが首をかしげる。
レンは静かに答える。
「この兵器は、本当に街を壊したいわけじゃない。」
「何かを探している。」
ユウトも通販スキルで再解析を始める。
《追加情報を取得》
《最優先任務》
『古代制御核の回収』
「制御核?」
「つまり、この巨人は何かを探して動いているのか。」
すると、ギルド長が駆け寄ってきた。
「ユウト!」
「大変だ!」
「遺跡の地下で探索隊が奇妙なものを見つけた!」
「青白く光る球体だ!」
レンの顔色が変わる。
「まさか……。」
「それが古代制御核!」
「アーク・タイタンは、それを取り戻すために動いている!」
ユウトは決断する。
「このまま街で戦えば被害が大きすぎる。」
「俺たちが先に遺跡へ向かい、制御核を確保しよう。」
セリスは剣を抜いた。
「私はユウトさんを守ります。」
リリィもうなずく。
「回復は任せてください!」
レンは弓を背負い、森へ視線を向ける。
「急ぎましょう。」
「もし制御核をアーク・タイタンに奪われたら……。」
その言葉の続きを、誰も口にしなかった。
四人は急いで遺跡へ向かう。
その背後では、アーク・タイタンが再び一歩を踏み出した。
ズン……。
その足音はまるで世界そのものが脈打っているようだった。
次回へ続く




