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第五部 強力終焉竜討伐作戦

ギルド中に緊急鐘が鳴り響く。


「緊急依頼だ!」


受付嬢のミリアが慌てた様子で叫ぶ。


「遺跡周辺で正体不明の魔物が確認されました!」

「数は三十以上!」

「通常のオークやウルフではありません!」


ギルド内が一気に騒然となる。


「三十だと!?」

「そんな数、聞いたことねぇぞ!」


ベテラン冒険者たちでさえ表情を曇らせていた。


ミリアは依頼書を掲げる。


「討伐隊を編成します!参加できる冒険者は至急集まってください!」


その時──。


「俺たちも行こう。」


ユウトが静かに立ち上がる。


「もちろんです。」


セリスが剣を握る。


「今回は気を抜かない。」


リリィも真剣な表情で頷いた。


最近の戦いを通して、彼女も以前よりずっと頼もしくなっていた。


「ユウトさんがいるなら安心ですね。」


「油断は禁物だけどな。」


三人は討伐隊へ加わることになった。


数時間後。


遺跡周辺。


普段なら魔物の鳴き声が響く場所。


しかし今日は異様な静けさだった。


「静かすぎる……。」


セリスが周囲を警戒する。


「嫌な感じがします。」


リリィも杖を強く握った。


ユウトは地面を見る。


「あれ……?」


土には巨大な足跡。


オークよりも遥かに大きい。


「こんなの見たことないぞ。」


討伐隊長が顔をしかめる。


その瞬間。


ズン……


ズン……


地面が揺れ始める。


「来るぞ!!」


森の奥から現れたのは──


漆黒の身体。


全身を硬い甲殻で覆われた巨大な獣。


さらにその背中には赤黒い結晶が何本も突き出していた。


「なんだ……あれ……。」


誰かが震えた声で呟く。


その一体だけではない。


木々の間から。


一体。


二体。


三体。


十体。


二十体。


次々と姿を現す。


「群れだ!!」


討伐隊に緊張が走る。


普通の魔物とは明らかに違う。


目は真っ赤に輝き。


口から黒い霧を吐いている。


「魔力反応がおかしい……。」


リリィが驚愕する。


「普通の魔物の十倍以上あります!」


「なんだって!?」


隊長が青ざめた。


その瞬間。


一匹が信じられない速度で飛び出した。


「速っ!!」


ドゴォン!!


前衛の冒険者が盾ごと吹き飛ばされる。


「ぐあああっ!!」


「回復班!!」


リリィがすぐに治癒魔法を放つ。


「ヒール!」


傷は塞がる。


しかし魔物は止まらない。


二匹。


三匹。


一斉に襲い掛かる。


「ファイアランス!」


リリィの炎が命中する。


だが。


「嘘!?」


炎がほとんど効いていない。


「魔法耐性まであるの!?」


セリスも剣で斬りかかる。


ガキィン!!


「硬い!」


まるで鉄を斬ったような感触だった。


「普通の武器じゃ通らない!」


討伐隊は一気に押し込まれていく。


「くっ……!」


ユウトはすぐに通販画面を開く。


(分析開始。)


《対象解析》


【名称】

クリムゾン・ガーディアン


【危険度】

Aランク


【特徴】

・高い魔法耐性

・強力な再生能力

・群れで行動

・核を破壊しなければ再生する


「核……?」


ユウトは目を細める。


赤黒い結晶。


「あれが弱点か。」


「セリス!」


「はい!」


「背中の結晶だけを狙え!」


「分かりました!」


セリスは一気に駆け出す。


風のような速度で魔物の懐へ飛び込む。


「はぁぁぁぁ!!」


一閃。


キィィィン!!


赤い結晶に剣が当たる。


バキィッ!!


結晶が砕けた瞬間。


巨大な魔物は悲鳴を上げ、その体が黒い粒子となって崩れ落ちた。


「倒した!」


「本当だ!」


討伐隊に希望が戻る。


「弱点は背中の結晶だ!!」


ユウトが叫ぶ。


冒険者たちも一斉に結晶を狙い始める。


しかし──。


ドゴォォォン!!


遺跡の奥から、とてつもない衝撃が響いた。


地面が激しく揺れ、古い遺跡の壁が崩れ始める。


「まだ何かいる……!」


リリィが青ざめる。


すると、遺跡の最深部から低く響く咆哮が聞こえた。


「グオオオオオオオオオオッ!!」


その咆哮だけで、周囲のクリムゾン・ガーディアンたちは一斉に動きを止め、まるで王を迎えるように道を開ける。


暗闇の奥から、ゆっくりと姿を現したのは、高さ十メートルを超える巨大な漆黒の竜だった。


背中には禍々しい紅い結晶が脈動し、その黄金の瞳がユウトたちを見据える。


ユウトの通販スキルが、自動的に警告音を鳴らす。


《警告》


危険度:Sランク


個体名:終焉竜ゼルヴァグ


現時点での勝率──8%。


「勝率……8%?」


ユウトは通販スキルの表示を見て息を呑んだ。


これまでどんな強敵でも、勝率がここまで低く表示されたことはない。


目の前に立つ終焉竜ゼルヴァグは、まさに災害そのものだった。


ギロリ……


黄金の瞳が討伐隊全員を見渡す。


その視線だけで体が震える。


「こ、こんなの勝てるわけ……」


若い冒険者が剣を落とした。


隊長が叫ぶ。


「落ち着け! 陣形を崩すな!」


しかし、その言葉もむなしく――


ゼルヴァグは大きく息を吸い込む。


「まずい!」


ユウトは直感した。


「全員伏せろーーーっ!!」


次の瞬間。


ゴオオオオオオオオォォォッ!!


漆黒の業火が一直線に放たれた。


森が焼ける。


岩が溶ける。


遺跡の壁すら一瞬で崩れ去った。


討伐隊は散り散りになり、吹き飛ばされる。


「うわぁぁぁ!」


「ぎゃああ!」


爆風だけで十数人が戦闘不能になった。


「ヒール! ハイヒール!」


リリィは必死に回復魔法を連発する。


額には汗が滲み、息も荒い。


「まだ……まだ倒れないで!」


セリスはユウトの前に立つ。


「ユウトさんは私が守ります!」


「セリス……!」


「私は騎士ですから!」


そう言うと、ゼルヴァグへ向かって駆け出した。


「はぁぁぁぁっ!」


全力の斬撃。


ガギィィン!!


しかし竜の鱗には一本の傷もつかない。


「そんな……!」


ゼルヴァグの尻尾が横薙ぎに振られる。


ドォォォン!!


「きゃあっ!」


セリスは何本もの木をなぎ倒しながら吹き飛ばされた。


「セリス!」


ユウトは駆け寄る。


幸い鎧のおかげで命に別状はなかったが、立ち上がるのも苦しそうだ。


「ごめんなさい……全然通じません……」


「無理するな。」


ユウトは彼女を支える。


その時。


通販スキルが再び反応した。


《特殊商品を解放します》


《ドラゴンスレイヤーシリーズ》


《魔導徹甲弾》


《対竜結界装置》


《雷神の魔導砲》


「新商品……!」


だが値段を見て顔をしかめる。


「高すぎる……!」


これまで貯めてきたポイントをほとんど使い切る額だった。


「でも……。」


ユウトは迷わなかった。


「仲間の命には代えられない!」


購入。


眩い光と共に巨大な木箱が現れる。


討伐隊全員が驚く。


「またユウトの不思議な力か!」


箱の中から現れたのは、漆黒の金属でできた巨大な砲台だった。


「これが雷神の魔導砲……!」


さらに、セリスには対竜用の魔剣を手渡す。


「この剣ならいける!」


「ありがとうございます!」


リリィには魔力回復ポーションを何本も渡した。


「リリィ、遠慮なく使え!」


「はい!」


ゼルヴァグが再び咆哮する。


「グオオオオオオ!!」


大地が揺れた。


「全員、時間を稼いでくれ!」


ユウトは魔導砲へ魔力を流し込む。


ギィィィィ……


砲身が青白く輝く。


「あと少し……!」


しかしゼルヴァグは、それを待ってはくれない。


巨大な翼を広げ、一気に空へ飛び上がった。


「飛んだ!」


「上だ!」


空一面を覆うほどの巨体。


その口には、先ほどよりもさらに巨大な黒い炎が集まり始めていた。


「まずい……!」


ユウトの魔導砲は、まだ充填が終わらない。


「ユウトさん!」


セリスが叫ぶ。


「ここは私たちが守ります!」


リリィも杖を掲げた。


「絶対に撃たせます!」


二人は傷だらけの体で、それでも迷うことなくユウトの前へ立つ。


そして次の瞬間、終焉竜ゼルヴァグは空から滅びの黒炎を放った


「来るぞ!!」


空高く舞い上がった終焉竜ゼルヴァグは、巨大な口を開いた。


その喉の奥で、漆黒の炎が渦を巻く。


周囲の空気が震え、木々は音を立てて枯れ始めた。


「これを受けたら……街まで消し飛ぶ。」


ユウトは直感した。


ここで止めなければ、多くの命が失われる。


「セリス!」


「はい!」


「五秒だけ時間を稼いでくれ!」


「必ず!」


セリスは新たに手にした対竜魔剣を握りしめた。


剣から蒼白い光が溢れ出す。


「今度こそ……!」


彼女は地面を蹴った。


ドンッ!!


まるで風になったような速度でゼルヴァグへ接近する。


「はぁぁぁぁぁぁ!!」


全力の一撃。


ガギィィン!!


今度は違った。


竜の鱗に一本の傷が刻まれる。


「やった!」


討伐隊から歓声が上がる。


しかしゼルヴァグは怒りに満ちた咆哮を放つ。


「グオオオオオオッ!!」


巨大な前脚が振り下ろされる。


「くっ……!」


セリスは間一髪でかわしたが、衝撃波だけで吹き飛ばされる。


「きゃあっ!」


木へ激突し、膝をつく。


それでも彼女は立ち上がった。


「まだ……終われません!」


一方その頃。


リリィは討伐隊を支えていた。


「ヒール!」


「プロテクト!」


「マジックバリア!」


魔力は限界に近い。


それでも彼女は杖を下ろさない。


(ユウトさんを守る……!)


その想いだけで魔法を放ち続ける。


ユウトは巨大な魔導砲へ魔力を送り続けていた。


《充填率 72%》


「まだか……!」


《80%》


ゼルヴァグは再び黒炎を集め始める。


「間に合え!」


《91%》


「ユウトさん!」


リリィが叫ぶ。


クリムゾン・ガーディアンの群れがユウトへ迫っていた。


「私が止めます!」


魔力は残りわずか。


それでも彼女は炎を放つ。


「フレイムストーム!!」


巨大な炎の渦が魔物たちを包み込む。


しかし数が多すぎる。


「きゃっ!」


一匹がリリィへ飛び掛かった。


その瞬間。


シュッ!!


銀色の矢が魔物の額を貫いた。


「えっ?」


さらに。


シュン!


シュン!


次々と魔物が倒れていく。


森の奥から一人の少女が現れた。


長い銀髪。


透き通るような青い瞳。


緑色の軽装鎧に身を包み、美しい弓を構えている。


「間に合ったみたいね。」


彼女は静かに微笑んだ。


「あなたは……?」


リリィが驚く。


「私はエルフのレン。」


「王都のレンジャー部隊所属よ。」


彼女は素早く周囲を確認すると、ユウトを見つめた。


「あなたがユウト?」


「そうだけど……。」


「話はあと。」


「まずは竜を倒すわ。」


その言葉にセリスも頷く。


「心強い援軍ですね。」


レンは素早く矢をつがえる。


「終焉竜の弱点は胸の逆鱗。」


「そこだけは鱗が薄い。」


「本当か!」


ユウトは通販スキルを確認する。


《情報更新》


《解析成功》


《弱点:胸部・逆鱗》


「レンの言う通りだ!」


《充填率 100%》


魔導砲がついに完成した。


青白い雷が砲身を包み込み、大地に無数の稲妻が走る。


「みんな!」


「道を開けろーーー!!」


セリスは最後の力を振り絞り、ゼルヴァグへ突撃する。


「うおおおおおっ!!」


レンも同時に矢を放つ。


「精霊よ、その矢に力を!」


黄金の矢が竜の胸を狙う。


リリィは最後の魔力を使う。


「ユウトさんに力を!」


支援魔法がユウトを包み込む。


ユウトは深く息を吸った。


そして巨大な砲の引き金を引く。


「――雷神の魔導砲、発射!!」


轟音とともに、極太の雷光が一直線に終焉竜ゼルヴァグへ向かって走る。


雷鳴が空を裂き、世界が白く染まった。


果たしてこの一撃は、終焉竜を倒すことができるのか。



                  次回へ続く

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