第2.5部 異世スロサブストーリー パート1
サブストーリーです
これから時々上げていく予定です
「……眠い」
リリィはふらふら歩いていた。
原因は昨夜である。
「新作漫画、一気読みしちゃった……」
「魔王と同レベルになってるぞ」
朝。
通販食堂。
悠人は呆れ顔だった。
「でも続き気になったし」
「気持ちは分かるけど」
なお魔王は現在進行形で寝不足らしい。
終わっている。
「今日は配達でしたっけ」
「おう。共同市場の追加注文な」
最近は共同市場の影響で物流量が激増していた。
人間側。
魔族側。
双方から注文が来る。
「人気商品は?」
「プリン」
「安定だなぁ……」
そんな雑談をしながら。
悠人たちは王都の大通りを歩いていた。
今日も平和である。
……のはずだった。
「きゃあああっ!!」
突然。
悲鳴が響く。
「!?」
角を曲がった瞬間。
暴走した荷馬車が突っ込んできた。
「危ねぇ!」
御者が叫ぶ。
馬が完全にパニック状態だった。
周囲の人々が慌てて逃げる。
だが。
「……え?」
リリィは反応が遅れた。
足が止まる。
迫る荷馬車。
一瞬で距離が潰れる。
「リリィ!!」
次の瞬間。
ぐいっ――と腕を引かれた。
「きゃっ!?」
強く引き寄せられる。
その直後。
荷馬車がすぐ横を通り抜けた。
ガシャァァン!!
木箱が散乱する。
周囲が騒然となった。
「大丈夫か!?」
「怪我は!?」
リリィは呆然としていた。
気づけば。
悠人に抱き寄せられている。
「……あ」
「危なかった……」
悠人は本気で焦った顔をしていた。
「ったく、ちゃんと前見ろよ」
「……」
「リリィ?」
顔が近い。
心臓がうるさい。
妙に熱い。
「……っ」
リリィは慌てて離れた。
「だ、大丈夫!」
「ほんとか?」
「平気だから!」
声が少し裏返った。
その様子にセリスが首を傾げる。
「リリィ様、顔赤いですよ?」
「赤くない!」
「いや赤いな」
「うるさい!」
その後。
荷馬車騒動は無事解決した。
怪我人もいない。
平和に終わった。
……リリィ以外は。
「…………」
帰り道。
リリィは妙に静かだった。
「どうした?」
「別に」
「ほんとか?」
「……ほんと」
だが全然落ち着かない。
頭の中で何度も再生される。
『危なかった……』
引き寄せられた感覚。
近かった顔。
優しかった声。
「うわぁ……」
「なんだ急に」
「なんでもない!」
完全に挙動不審だった。
夜。
通販食堂。
リリィはソファに埋まりながら天井を見ていた。
「……これ、もしかして」
「恋ですね」
「うわぁぁぁぁ!?」
隣にいたセリスが即答した。
「なんで分かるの!?」
「分かりやすすぎます」
「そんなに!?」
「はい」
リリィはクッションへ顔を埋める。
「いやでも違うかも」
「どこがです?」
「だってユウトだし」
「理由になってませんよ」
すると。
タイミング悪く。
「ただいまー」
「ひゃあっ!?」
「なんで悲鳴!?」
帰宅した悠人がびくっとする。
リリィはまともに顔を見れなかった。
「お、おかえり」
「……?」
悠人は不思議そうだった。
一方。
セリスはニヤニヤしている。
「青春ですねぇ」
「やめて」
その夜。
リリィは全然眠れなかった。
寝返りを打つ。
「……無理」
思い出すだけで顔が熱い。
完全に恋する乙女だった。
その次の日
「……で?」
通販食堂の二階。
セリスはニコニコしながら紅茶を飲んでいた。
「で、じゃない」
向かい側では。
リリィがクッションを抱えてうずくまっている。
「いやぁ、まさかリリィ様が」
「うるさい……」
昨日からずっとこんな調子だった。
原因は当然。
悠人である。
「恋って突然なんですねぇ」
「その言い方やめて」
「でも事実ですよね?」
「……」
否定できなかった。
むしろ。
認めるほど実感してしまっている。
「はぁ……」
リリィは顔を埋める。
思い出すだけで恥ずかしい。
腕を引かれた感覚。
近かった距離。
焦った顔。
『危なかった……』
「うわ無理」
「重症ですね」
「誰のせいだと思ってるの」
「ユウト様ですね」
「そうだけど」
セリスは楽しそうだった。
だが。
「……セリスは?」
「え?」
「セリスだってユウト気になってるでしょ」
ぴたり。
セリスが固まった。
「……」
「分かりやす」
「ち、違います!」
「顔赤い」
「赤くないです!」
お互い様だった。
数秒後。
二人同時にため息をつく。
「なんかもう疲れた」
「ですね……」
そして始まる。
女子会である。
「どこが好きなの?」
「急だな!?」
「私は聞きましたよ」
「ぐっ……」
リリィは少し悩む。
「……優しいところ」
「おぉ〜」
「あと普通に助けてくれるし」
「はいはい」
「ご飯美味しいし」
「そこ重要なんですね」
「かなり」
生活感が強かった。
「セリスは?」
「わ、私は別にそういう……!」
「はい次」
「押し切らないでください!」
だが逃げられない。
セリスは観念したように小さく呟く。
「……一緒にいると楽しいです」
「へぇ」
「あと安心できますし」
「うんうん」
「無茶苦茶なことしてるのに、どこか落ち着くというか……」
「もう好きじゃん」
「〜〜〜っ!!」
真っ赤だった。
その時。
下の階から声が聞こえる。
「セリスー、醤油どこー?」
「ひゃっ!?」
セリスが飛び上がる。
「動揺しすぎ」
「む、無理ですよ!」
「普通に返事すればいいのに」
「今顔見たら死にます!」
「大げさだなぁ」
でも。
リリィも少し分かる。
今の悠人を直視すると。
たぶん自分も危ない。
「……これ、どうする?」
「何がです?」
「いや、この気持ち」
セリスは少し考えたあと。
ふっと笑った。
「今のままでいいんじゃないですか?」
「今のまま?」
「楽しいですし」
「……まあ」
確かに。
今の毎日は好きだった。
笑って。
騒いで。
一緒にご飯を食べて。
その時間が心地いい。
「急に関係変わるのも変な感じだし」
「ですよね」
妙に納得してしまう。
すると。
「でも」
セリスがいたずらっぽく笑った。
「誰かに取られるのは嫌ですね」
「……」
「……」
空気が止まる。
「セリス」
「はい?」
「それ本音?」
「……どうでしょう」
笑ってごまかしているが。
耳まで赤かった。
その時。
突然ドアが開いた。
「おーい、なんかお菓子――」
「「入ってこないで!!!」」
「えぇ!?」
悠人は理不尽に追い出された。
下の階へ戻りながら。
「なんなんだ……?」
本気で分かっていなかった。
一方。
二階では。
「危なかった……」
「ですね……」
二人同時に胸を押さえていた。
完全に恋する乙女である。
「とりあえず明日からはアプローチをしようと思う。」
「そうですね、そうしましょう」
たぶんこれから。
通販食堂の空気は少しずつ変わっていく。
今回は恋愛ストーリーを入れてました
尚サブストーリーの出来事はメインストーリーへの
影響がある物もあるのでよろしくお願いします




