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第十部 次々と来る来客

アークタイタンの存在を知ったユウトたちは、村に戻って今後の対策を話し合っていた。


ルミナスが机の上に広げたのは、魔力で描かれた銀河地図だった。


「……見てください。」


指差した先には、小さな光の渦が映し出されている。


「この場所だけ、空間が不自然に歪んでいます。」


ユウトは眉をひそめた。


「転移門か?」


「いいえ……もっと大きなものです。」


ルミナスの表情は険しい。


「銀河そのものが、誰かに開かれた跡です。」


その瞬間。


ドォォォン!!


遠くの空から雷のような轟音が響いた。


村人たちが外へ飛び出す。


空一面に巨大な光の輪が現れ、その中心から無数の流星のような光が降ってきた。


「敵か!?」


騎士団が武器を構える。


しかし降り立ったのは魔物ではなかった。


全長数百メートルはある巨大な飛空船。


白銀の船体に金色の紋章。


帆には見たこともない翼の印が描かれている。


「飛空船……?」


ユウトも息を呑む。


一隻ではない。


十隻。


二十隻。


さらにその後ろには数え切れないほどの船団が整然と並んでいた。


まるで空の海を航行する大艦隊。


村中が静まり返る。


船団は攻撃する様子もなく、一定距離で停止した。


その中から一隻の小型艇が降りてくる。


中から現れたのは、女性だった


白銀の髪。


深い蒼色の瞳。


豪華なコートを羽織り、その胸には翼を模した紋章。


彼女は静かに笑った。


「初めまして、通販の勇者ユウト様。」


村中が緊張する。


セリスは剣を抜き、リリィは魔法を構える。


「敵ですか?」


女性は首を横に振る。


「いいえ。ですが味方とも言えません。」


ユウトは前へ出る。


「あなたは?」


「私はレイシア。」


「天空商盟十二議長の一人です。」


その瞬間、周囲がざわついた。


王国でも魔族でもない。


世界中を自由に行き来し、巨大な商業都市を支配する伝説の組織。


それが――


天空商盟。


・・・


レイシアは村を見渡した。


「なるほど……。」


「この村から現代の技術が生まれているとは。」


通販食堂。


農場。


工房。


魔導冷蔵庫。


そして異世界ラジオ。


すべてを見て感心していた。


「まさか噂以上とは。」


ユウトは警戒を解かない。


「何の用ですか?」


レイシアは笑う。


「スカウトです。」


全員が固まる。


「え?」


「ユウト様。」


「あなたを天空商盟の最高技術顧問として迎えたい。」


村人達が大騒ぎになる。


「最高技術顧問!?」


「世界最高の商会じゃないか!」


「年収どれくらいなんだ!?」


レイシアは平然と言った。


「年収金貨五百万枚。」


「専用飛空艇。」


「世界中どこでも自由。」


「研究施設付き。」


「休日は自由。」


ユウトは苦笑した。


「待遇良すぎません?」


「当然です。」


「あなた一人で世界経済を変えてしまったのですから。」


・・・


セリスが一歩前へ。


「断ります。」


レイシアは少し驚く。


「本人ではありませんよ?」


「ユウトさんは村長です。」


「この村には家族がいます。」


リリィも腕を組む。


「ユウトさんはどこにも行きません!」


子供達まで叫ぶ。


「ユウト兄ちゃんはうちの村!」


レイシアは少し微笑んだ。


「……いい村ですね。」


・・・


その夜。


天空商盟の飛空艇へ招待される。


ユウト達は初めて乗船した。


中は完全に未来都市だった。


魔導エレベーター。


動く歩道。


巨大温室。


空飛ぶ荷物運搬ゴーレム。


さらには……


魔導コンテナ港まである。


ユウトは思わず叫んだ。


「すごい……。」


レイシアは説明する。


「私達は五百年間。」


「世界中の物流を管理しています。」


「ですが……。」


急に表情が曇った。


「近年、大きな問題が起きています。」


巨大地図が映し出された。


世界中の交易路。


その半分が赤く染まっていた。


「これは……。」


「輸送路が消えています。」


レイシアは頷く。


「第三勢力と言われていますが、本当は違います。」


「私達は追われる側です。」


ユウト達は驚く。


「じゃあ敵は?」


レイシアは静かに答えた。


「第四勢力。」


その瞬間。


部屋全体が静まり返った。


「彼らの名は――」

 

虚無教団ヴォイド


世界から文明そのものを消そうとしている組織。


便利な技術。


商業。


魔道具。


それらすべてを「罪」と考える狂信者集団だった。


彼らは各地で都市を襲撃し、


物流を破壊し、


文明を後退させていた。


レイシアはユウトを見つめる。


「あなたの通販能力は、彼らにとって最大の敵。」


「そして……」


「世界最後の希望なのです。」


その言葉と同時に――


飛空艇全体が大きく揺れた。


「敵襲!!」


見張りの声が響く。


窓の外には、黒いローブをまとった飛行魔物の大群。


その中心には、巨大な黒い飛空戦艦が浮かんでいた。


艦首には、不気味な黒い紋章。


「虚無教団……!」


_______________________


「敵艦接近! 距離三千メートル!」


乗組員たちは慌ただしく持ち場へ走っていく。


レイシアは指揮席に立ち、冷静に命令を飛ばした。


「第一砲門、展開!」


「防御結界、最大出力!」


「護衛飛空艇は左右へ!」


巨大な飛空艇の両側から、いくつもの砲台がせり上がる。


青白い魔力が集まり、一斉に放たれた。


ドォォォォン!!


空に無数の光が走り、敵の先頭部隊を吹き飛ばす。


しかし――


黒い飛空戦艦はまったく動じない。


「そんな……!」


乗組員の一人が青ざめる。


「あの戦艦、防御結界が強すぎます!」


レイシアは険しい表情で呟く。


「やはり……『奈落級』か。」


ユウトは初めて聞く名前だった。


「奈落級?」


「虚無教団が保有する最強クラスの戦艦です。一隻で国を滅ぼせるほどの力があります。」


その言葉にセリスとリリィも息をのむ。


その時、黒い戦艦から一人の男が姿を現した。


漆黒の鎧。


赤い瞳。


背中には黒い翼。


「久しいな、天空商盟。」


男は低い声で笑う。


「我が名はゼノス。」


「虚無教団・七大司祭の一人だ。」


レイシアの表情が変わる。


「まさか司祭自ら……!」


ゼノスはユウトを見つめた。


「異世界の商人。」


「お前の力は世界の理を乱す。」


「便利な道具、豊かな食事、発展する文明……。」


「人は楽を覚え、弱くなる。」


「だから我らが世界を浄化する。」


ユウトは静かに首を横に振る。


「違う。」


ゼノスが眉をひそめる。


「便利になることは悪じゃない。」


「便利になった時間で、人は笑ったり、誰かを助けたり、新しいものを作ったりできる。」


「俺は、そのために通販を使ってる。」


村のみんなの笑顔が頭に浮かぶ。


通販食堂で笑う子どもたち。


新しい農具ではしゃぐ農家。


漫画を読んで笑う魔王軍。


「だから、お前には負けない!」


ゼノスは冷たく笑う。


「ならば証明してみせろ。」


その瞬間、黒い戦艦の前方に巨大な魔法陣が現れた。


空が黒く染まる。


ゴゴゴゴゴ……


魔法陣の中から姿を現したのは――


全長五十メートルを超える黒い竜だった。


「虚無竜……!」


レイシアが驚愕する。


「絶滅したはずじゃ……!」


黒い竜は咆哮を上げ、飛空艇へ突撃してくる。


轟音とともに衝撃波が広がり、飛空艇が大きく揺れた。


「結界出力、六十%まで低下!」


「このままでは持ちません!」


ユウトは急いで通販画面を開く。


「何か使えるものは……!」


検索欄に指を走らせる。


『対空装備』


『大型ネット』


『強力接着剤』


『高出力ライト』


次々と商品が表示される。


「これだ!」


ユウトが取り出したのは、超高輝度LEDサーチライトだった。


「みんな、目を閉じて!」


スイッチを押した瞬間――


ギュイィィィン!!


昼間の太陽にも負けないほどの強烈な光が空を照らす。


虚無竜は突然の光に目を焼かれ、苦しそうに暴れ始めた。


「今だ!」


レイシアの号令で飛空艇の主砲が一斉射撃。


ドドドドドドドン!!


光弾が命中し、虚無竜は大きく吹き飛ばされた。


「やった!」


乗組員たちが歓声を上げる。


しかしゼノスは笑みを崩さない。


「面白い……。」


「やはり異世界の知識は厄介だ。」


彼は静かに手を掲げた。


すると、奈落級戦艦の後方に次々と黒い影が現れる。


一隻、二隻……十隻……二十隻。


黒い飛空戦艦の大艦隊だった。


レイシアは息をのむ。


「まさか……本隊!」


黒い飛空戦艦が空を埋め尽くす。


数十隻――いや、それ以上。


天空商盟の兵士たちは顔を青ざめさせていた。


「これでは勝てない……。」


「戦力差が大きすぎる!」


レイシアも唇を噛む。


「撤退するしか……。」


その時だった。


空が突然、白銀の光に包まれる。


ゴォォォォォン……


まるで空そのものが割れるような轟音。


誰も見たことのない巨大な光の裂け目が現れた。


ユウトは驚いて見上げる。


「あれは……空間が裂けてる?」


裂け目はどんどん広がり、その向こうには無数の星々が輝いていた。


「星空……?」


リリィが震える声で呟く。


「違う……あれは夜空じゃない。」


「本物の宇宙よ。」


次の瞬間。


巨大な銀色の戦艦が姿を現した。


全長は数キロメートル。


青白い光を放ちながら、ゆっくりと異世界の空へ降りてくる。


さらに後ろから何百隻もの艦隊が続く。


天空商盟の飛空艇とは比べものにならない巨大さだった。


虚無教団の兵士たちも騒ぎ始める。


「な、何だあの艦隊は!」


「聞いたことがない!」


艦隊の先頭にある旗には、金色の星を囲む青い翼の紋章が描かれていた。


レイシアは目を見開く。


「あの紋章は……まさか!」


銀色の旗艦から、一人の青年が転移してくる。


白い軍服。


蒼いマント。


腰には光り輝く剣。


彼は静かにユウトへ歩み寄った。


「初めまして。」


「私はアルト。」


銀河交易船団アストラル・キャラバン総司令官です。」


ユウトは聞き返す。


「銀河……交易船団?」


アルトは穏やかに頷いた。


「私たちは、この世界の住人ではありません。」


「はるか宇宙――数万もの星々を結ぶ交易国家から来ました。」


周囲は静まり返る。


「異世界だけではなく、宇宙にも文明が……。」


アルトは続ける。


「あなたの『通販』の力を感知し、この世界へ急行しました。」


「その能力は、宇宙でも極めて珍しいものです。」


その頃、黒い艦隊ではゼノスが驚きを隠せずにいた。


「銀河交易船団だと……?」


部下が慌てて報告する。


「司祭様! 記録にあります!」


「数千年前、星の彼方から現れ、魔神を封印した伝説の艦隊です!」


ゼノスは舌打ちした。


「伝説ではなかったか……。」


アルトはユウトに一枚の透明な結晶板を渡す。


中には無数の星が映っていた。


「これは銀河地図です。」


そこには、数え切れない恒星と文明圏が表示されている。


そして地図の中央には、赤く点滅する巨大な領域があった。


「この赤い領域は?」


アルトの表情が険しくなる。


「銀河帝国アークタイタン。」


その名を聞いた瞬間、空気が張り詰めた。


「宇宙の三分の一を支配する巨大帝国です。」


「そして虚無教団は、その帝国と密かにつながっています。」


ゼノスは不敵に笑った。


「そこまで知られていたとはな。」


彼は黒い結晶を掲げる。


「ならば計画を前倒しにする!」


黒い光が空へ放たれ、巨大な魔法陣が広がる。


魔法陣の中心から、さらに巨大な黒い門が姿を現した。


アルトは顔色を変える。


「まずい!」


「星間転移ゲートだ!」


門の向こうから、ゆっくりと現れ始めたのは、これまでの奈落級をはるかに超える黒い超巨大戦艦。


その艦首には、不気味な王冠の紋章が刻まれていた。


アルトは剣を抜き、低く呟く。


「来てしまったか……。」


「アークタイタン帝国先遣艦隊。」


ユウトは目の前に広がる光景を見つめ、決意を固める。


黒き星間転移ゲートがゆっくりと開く。


ズォォォォォン……


空が震え、大地までも揺れ始めた。


その門から現れたのは、一隻の巨大な黒い旗艦だった。


全長は二十キロメートルを超え、異世界のどの都市よりも巨大。


艦体には無数の砲門が並び、中央には黄金の王冠を模した紋章が輝いている。


アルトは思わず息をのんだ。


「皇帝直属旗艦……《エンペラー・ノヴァ》。」


天空商盟のレイシアも驚愕する。


「これが……銀河帝国アークタイタンの力……。」


旗艦の中央が静かに開く。


そこから、一人の男がゆっくりと宙へ歩み出た。


黒と金を基調とした皇帝の装束。


白銀の長髪。


深紅の瞳。


圧倒的な威圧感をまといながら、まるで空を歩くように進んでくる。


アルトが静かに頭を下げた。


「……陛下。」


ユウトは驚く。


「えっ?」


アルトは苦々しく言う。


「彼が銀河帝国アークタイタン皇帝――カイゼル・アークタイタン。」


周囲の空気が一変する。


ただ立っているだけで、強大な魔力と未知のエネルギーが周囲を震わせていた。


皇帝カイゼルは静かにユウトを見つめる。


「異世界人……。」


「その力、本当に興味深い。」


ユウトは警戒しながら尋ねる。


「あなたが虚無教団を操っていたのか?」


しかし皇帝は首を横に振った。


「違う。」


その一言に全員が驚く。


「虚無教団は帝国の配下ではない。」


「利用していただけだ。」


ゼノスの表情が凍りつく。


「な……?」


皇帝は冷たく続ける。


「役目は終わった。」


その瞬間、皇帝が指を軽く鳴らす。


パチン――。


ゼノスの胸に金色の光が走った。


「ぐあぁぁぁ!」


体が粒子となって崩れ始める。


「皇帝……なぜ……!」


「弱者に価値はない。」


その一言だけを残し、ゼノスは完全に消滅した。


虚無教団の兵士たちは恐怖に震え、戦意を失う。


ユウトは怒りを隠せなかった。


「仲間だったんじゃないのか!」


皇帝は静かに答える。


「仲間?」


「違う。」


「帝国に仲間という概念はない。」


「あるのは能力だけだ。」


その言葉にレイシアは眉をひそめる。


アルトも拳を握り締めた。


皇帝は再びユウトを見る。


「ユウト。」


「我が帝国へ来い。」


「お前の力があれば、銀河すべての物流を支配できる。」


「飢餓も貧困も戦争も消してやろう。」


ユウトは首を横に振る。


「そんな世界は望まない。」


「誰かに支配される平和なんて、本当の平和じゃない。」


皇帝は少しだけ笑った。


「……面白い。」


「余を拒絶した者は数千年ぶりだ。」


その時、ユウトの通販画面が突然光り始めた。


『■■■システム更新中■■■』


『新機能を確認しました。』


『銀河ネットワークへの接続を開始します。』


「え?」


画面に見たことのない文字が次々と表示される。


『宇宙通販 解放』


『星間物流システム 解放』


『超文明カテゴリ 解放』


『銀河級アイテム購入可能』


アルトは目を見開いた。


「まさか……。」


「通販能力が進化した!」


皇帝も初めて驚いた表情を見せる。


「銀河ネットワークだと……?」


ユウトの画面には、これまで見たこともない商品が並び始める。


惑星開拓ドローン


恒星エネルギー炉


重力制御装置グラビティ・コントローラー


次元シールド


超光速航行ユニット


宇宙戦闘機スペース・ファイター


ユウトは思わず息をのんだ。


「こんなのまで買えるようになったのか……!」


皇帝カイゼルは静かに微笑む。


「やはり、お前は鍵だった。」


「ならば、いずれまた会おう。」


そう言い残すと、皇帝は旗艦とともに星間転移ゲートの中へ消えていく。


巨大なゲートが閉じると、空には静けさが戻った。


しかしアルトは厳しい表情のままだった。


「安心はできません。」


「今日の襲撃は、皇帝にとっては様子見に過ぎません。」


レイシアも頷く。


「本当の戦いはこれからです。」


ユウトは新たな通販画面を見つめ、静かに決意する。


「俺は、この世界も、宇宙だって守ってみせる。」


                  次回へ続く

いやー等々銀河級まで広がりました笑

作る側としては楽しいですね。

これからも多分どんどんよくわからないものが

通販から出てきて。

よくわからない事が起きますがよろしくお願いします。

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