郷田ライン
郷田は……お姉様がいい暮らしをしていなかったことを……分かっている?
千年桜は恋と咲くを既読済みなんてことは絶対にない。
暮日村は田舎……ではあるが、田舎だから貧しいなんてことはないし、田舎でデカい家に住んでる富裕層だっている。特に暮日家は……貧しくはなく、お姉様だけ貧しい暮らしを強いられていた。
お姉様が貧しい暮らしをしていたと、見破った?
今現在、お姉様は水社でいい暮らしをしているのに。今日だって綺麗な着物を着ている。水社ママが娘が出来た気持ちと言って喜んでいるような話を前に聞いた。
郷田はお姉様の立ち振る舞いで、お姉様の過去の暮らしを見破った?
郷田は、貧しい家の出……?
私は先ほど、妙に介助に慣れていた郷田の様子を思い返す。
水社一心は、やけに郷田に肩入れしていた。
水社一心は過去私を、病気か何かで死んだ人間だと誤解していた。普通に、家族の世話で人生がどうにもならなくなった──と私が思ってのこと。
「こんな風に、兵糧丸作れたりする人間のほうが、必要だ。軍人は、あやかしがいるから、飯にありつける。そうでなくても異能を持って、霊力使って悪さする連中がいれば、食いっぱぐれない。そういう仕事です。大層な志掲げてるのは、一握りだ。人を守りたいだの、家柄がどうの、趣味ですよ。普通は、住む場所が出来る、人間扱いされる、飯に困らないために……軍人以外になれそうもない、戦うしかできない、何者にもなれない、成り損ないの仕事だ。こういう風に、色々、地道に出来る人間のが、胸張るべきですよ」
郷田は静かに、いつもよりずっと冷めた調子で話す。
普段絡んでくるときは横柄で威圧的だからむしろ幼く感じるが、年相応の落ち着きがあった。
なに⁉
郷田って何?
っていうか検査したみたいな話してたし管理局に連れてきたってことは、郷田ってお姉様が私のお姉様ってこと分かってんの?
分かって案内して気遣ってくれたの⁉
復讐か⁉
お姉様を復讐に利用するのか⁉
殺そうか悩んでいると水社一心が「おい」と、短く注意してくる。
「成り損ないなんて、そんなことありません」
先ほど気弱そうに俯いていたお姉様が、声を震わせた。
「戦うって、すごいことです。勿論……争いとか、誰かが傷つくのは、違うと思います……けれど、軍にお勤めの方々があやかしと戦ってくださっていることで、守られている命があるのは事実です。生活の為であろうと、お金の為であろうと、関係ない。生活が無いと生きていけない、お金が無いと、暮らしが出来ません。成り損ないなんて、無い」
お姉様は、俯き、言葉を時折詰まらせながらも、きっぱり言い切った。
「それは、戦いしか出来ないと言いますが、守るしか出来ないって言い方も、あると思います。私は、何も出来ず守られている私が、言うのは……とても、とても、どう……私は……気高いことだと思うんです」
そして、しどろもどろになりながら、言葉をさらに紡ぐ。
お姉様は、守られるだけの存在だ。
でもそれでいい。守られるだけのお姉様でいいのだ。
戦う必要なんてない。そもそも戦い自体いらないのだから。
傷つく人間がいるから、戦うわけで。
いわば余剰。
それを自分で立つ、戦うだの、白々しい。
自分で立つ足すら最初から折られてどうにもならない人間がいて、自立したいのに王道から遠ざけられて、「守られるだけのヒロインなんて」という否定が出来るくらい価値観が持てる生活で。
恵まれた人間の、羨ましい選り好み──と考え、郷田を見る。
こいつが、水社一心と私、そして福野さんをピンポイントで狙う理由。お道具係だと馬鹿にするわりに、真原さんに敬意を払う理由。
恵まれたと自分が判断した人間が気に入らないのか。
水社家は金持ち。枯賀も皇龍清明様と政略結婚が可能なレベルの資産はあると……見られている。
富山局長は局長なので、それなりに恵まれ認定はされてるはず。
福野さんの家庭環境は分からないが、金持ちの真似事をするみたいなことを福野さんは話していた。
実際の資産状況は別として、金持ちの真似事をしているなら、金持ちに見えるわけで。
共感も肯定もしないが、行動や言動の根幹にあるものは、想像できた。
郷田が、自分の行動に共感も肯定も求めてないことも含めて
章の区分けを細かく+登場人物設定を削除しました。
登場人物は、活動報告にてリニューアルオープンしました。
理由は活動報告だと文字のサイズと背景の色を変えられるという利点があるからです。
・ツイッターで小ネタは呟かない→宣伝と更新報告と作業共有程度
・noteは完全に私個人の考え方の話をする
という感じで小ネタを人質に宣伝をするみたいなことにならないようにしており、活動報告でも宣伝も行うのですが、いつも読める位置に配置したりURI固定しておく+加筆の場合はこうしてあとがきで少し報告する感じでやっていきたいと考えています。
感想返信・誤字報告修正を行いました。ありがとうございます。




