ややこし現在地・クソデカモーニングコールをそえて
「起きろ‼ もうすぐ日が昇るぞ‼」
ドシン、と揺れと共に絶叫され飛び起きる。何かと思えば自室の枕元に酒呑童子が立っていた。
びっくりした、爆発でもしたのかと思った。
何でいる?
何?
奇襲?
驚いていると「稽古だ‼ 立て‼」と酒呑童子は声を荒げた。
バカなの?
というか軍、侵入されてない?
野狐禅の時といい結界破られまくってない?
一応、軍の屯所には結界が貼られている。あやかしに突撃されたら困るから。でも、あやかしの中でも入っちゃダメな人型クラスがこうも簡単に入ってくるって何?
いや……人型クラスの強敵だからこそ、結界も敗れる……というか、人間に擬態すると、センサーが発動しない……?
というか何で私の部屋分かってんの?
というか何で私が屯所にいるって分かってんの?
そこまで考えてハッとした。私、外出る時は軍服を着てた。秋服も冬物も水社家から持ってきてないし、まともにあるのは春夏兼用の寝間着しかない。
いやでも何で私の部屋が分かってんの?
「ふっふーん‼ 驚いた顔をしているな。俺様が何でここにいると思っているんだろう」
当たり前だろ住所割られたんだから。
驚きながら見上げていれば酒呑童子は得意げに笑う。
「来たからだ‼」
うわーバカ!
見ればわかる‼
この意味の分からなさは、私の無言のせいじゃない気がする。
「普通、強い奴は自分からいかないらしいが、俺はどこにでも行く‼ 自分から行く、強い奴‼」
はぁ。
確かに酒吞童子は、作中、自分から現れていた。アニメ配信のコメント欄では「連続出勤」「無休鬼」と言われてたし、「おまいつ」と細々流れていた。意味は、お前いつもいるな、らしい。
私が気になるのは、なんで私の部屋を突き止めてるんですか、というところだ。
「そして、慎み深い‼」
酒呑童子は高らかに宣言する。言葉の意味、分かって言ってるのだろうか。
「雑魚にも配慮する‼ 強者の余裕だ。軍は……なんかあれだろ、こういうことして、よく分かんねえ奴を、こうするんだろ」
酒呑童子は、「こういうことして」の部分で敬礼をした。「こうするんだろ」という部分で、自分の手首を掴んだり、逮捕され手錠をかけられ運ばれる犯人のポーズをとる。
軍人は犯罪者を逮捕するのが仕事ですよね、と言いたいのだろうか。
私は普段ジェスチャーで意思疎通を取っているけど、こんな風に見えているのだろうか。
管理局の面々に対し、負担を強いているとは思っていたけど……。
「それと、根性の足りねえあやかしをウッて」
酒呑童子は殴るポーズをする。
「それする前に、稽古してやる‼」
ようするに、勤務前に稽古をつけてくれるらしい。
助かるけど、大丈夫だろうか。
朝の月に照らされた酒呑童子は人間態だ。あやかしだと分かる霊力も巧妙に隠されているようで、野狐禅襲撃の時のような警報も鳴らない。
「準備出来たら呼べ‼」
酒呑童子は窓から飛ぶ。どこに行ったかと思えば屋根の上にいた。
着替えの時、出ていくくらいのデリカシーはあるらしい。
感心しながら準備を済ませ、部屋を出て──考えを180度改めた。
全室、扉が全開になっていた。
どうやら私の部屋を突き止めるために、一部屋一部屋開けていったらしい。
屯所の寮は局長クラスにでもならない限り、鍵がない。防犯的にアレだが、鍵がかかってないからと魔が差して盗みをするような局員はいらないという理由だ。
鍵があったら酒呑童子は……全部壊していたかもしれない。
私は恐々としながら、一部屋ずつ他人の部屋を閉めていった。
千年桜は恋と咲くにおいて、三妖士は全員死ぬ。
そもそもお姉様と皇龍清明様が出会ってないので、千年桜は恋と咲くのコミカライズ第1話の内容すら始まってないわけだが、物語が進んでいくと三妖士は全員死ぬのだ。
今のお姉様と皇龍清明様の出会いと結婚──実は三百年の時を超えた再会が、一年目の内容でありノベル一巻。枯賀末理とか枯賀のカス父親が細々ざまぁされつつ、最終的に一掃される。その一掃の詳細は、帝都にあやかしの大襲撃が発生し、お姉様を虐げてきた存在があやかしに食い殺されつつざまぁスカッと、お姉様が帝都の民を助け大活躍、皇龍清明様がお姉様を守り胸キュン三本軸だ。
正直、唐突にあやかし大襲撃が始まるわけだが、読者にとっては、和風シンデレラ問わず女性向け異世界ファンタジーで事件が起きるのはある意味当然なので、「ふーん」程度だった。逆にないと、何? ってなるし。
しかし、二巻以降、三妖士が出る。
三百年前のお姉様と皇龍清明様の恋物語について描写されていき、一巻のあやかし大襲撃は元を辿れば三百年前のお姉様を狙うストーカードブ煮込みのせい、と分かるのである。
つまり一巻の大襲撃はたんなるご都合山場ではなく、ドブ煮込みの伏線なのだ。
ドブ煮込みは皇龍清明様が倒すので問題ないし、ドブ煮込みが絡まないとお姉様が三百年前のことを知らないままだし、なおかつ皇龍清明様は──言わないのだ。
三百年前のお姉様に関する諸々を。
なので自分がお姉様を想い続けてきたことも言わない。
三百年前のお姉様を好いていたが、三百年後のお姉様──現在のお姉様にも恋に落ち、大切に想うようになった皇龍清明様だが、数多の登場人物たちから、「お前が愛しているのは目の前の枯賀花宵ではなく思い出ではないか」「死人への恋を生きてる人間に押し付けているだけではないか」と追及され──より一層なにも言わなくなる。
言霊の異能も無いのに言わない。
皇龍清明様は、水社一心とは別ベクトルのキングオブ言葉足らずである。
ドブ煮込みが絡んでいるので、情報共有をしないとまずいと判断しない限り、皇龍清明様は、お姉様に三百年前の話をしない。それどころか「あなたを大事にしたいと思ってるよ」とも言わない。幸せにできる自信がないし、お姉様にいい人が出来たら黙って身を引くおつもりなので、死ぬほど言わないのだ。
もどかしいというレベルではなく、犯罪レベルの無口である。
つまり現在、時間的な意味合いでは、シナリオの一年目に該当している。
しかし、物語的な意味合いでは、シナリオ一年目で始まることが何一つ起きてない。
さらに一年目以降に登場する三妖士が出てきて、うち一匹死んでるし、よく分かんない状態になってる。
これが現在のややこしい状況である。




