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悪役義妹がお姉様の溺愛結婚を壊すまで  作者: 稲井田そう
第六章 お姉様を面白がるあやかし
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真原さんと郷田


 前に真原さんは姉と妹がいるような話をしていた。


 同時に、母子家庭ということか。


「上に、四人おってなぁ、母親が最初の旦那と結婚して、いっちゃん上の娘が生まれて、その後、浮気してん。その浮気相手の男との子が、二人目の姉。その後、旦那と別れて。子供いるん隠して知らへん若い男と付き合うて、三女出来て家のこととか、結婚してたことあるとか全部バレて逃げられて、また浮気して……で四人目の姉」


 母親以外と血が繋がってない。


 三女全員、父親が違う。


「で、そこに、よそから、僕抱えた男が登場して、母親と結婚して、双子出来たんやけど、父親、あやかしに食われて死んだんよ。結果的に、上四、下双子に挟まれた僕なわけやけど、上も下も変わりもんやし、全員異能もちゃうねん。性格もちゃう。父親のアレコレあるから、男なんかゴミや思うとるのもいれば、母親嫌っとるのもおって、色々いる。だから家の話になると、だるー思うわ。何気なく父親について話す奴とか、母親に土産にしますわみたいに言うとお父様にも~みたいに言ってくる奴、仕方ないけど反吐出る」


 真原さんの声に、怒りは混ざってない。


 今まで投げかけられた言葉に対して、そういう判断をした人間に対して、軽蔑が向けられていた。


 多分彼は、その場で言い返すことも否定することもしなかったのだろう。その場に合わせて。場を乱さない返し方をした。


 仕方ないに、真原さんが諦めてきた一端が込められている気がする。


「せやから、晴れもんみたいに扱いたいわけやないねん。僕が憎んでいる……許してないねん。はは。そういう奴らになりたないから、あんま触れへんけど、そういう僕のこだわりやから、誤解せんといてくれると嬉しいわ」


 真原さんは軽く笑って、「真原くんの御家庭の事情はこれで御開きです」と、自分の胸に手を当て、マジシャンとかサーカスのピエロみたいな動きをした。


 私は会釈で返す。


 申し訳ないなと思った。気を遣わせている。家庭事情のこともだけど、父親のこともあるのだろう。


 枯賀の父親はあやかしになった。みんなは……私が戦わないように配慮しているけれど……さっさとこの刀ぶっ刺して霊力吸収して殺したい。今は山でグダグダしてるみたいだけど、暮日村の……村民のこともある。奉公の時にお姉様にどう接していたか分からないけれど、だからといって枯賀の父親の脅威に苦しめとも思わないし、何より暮日村なんてお姉様を虐げたのだから枯賀の父親に苦しめられちゃえばいいとゆったりしている間にお姉様が狙われたら嫌だ。


 周りの目を盗んで、枯賀の父親をさっさとこの刀で殺しに行く。


 暮日村の人間たちへの制裁は、保留。酒呑童子のこともあるし。それに、伊能局長がおそらく輝宮寺の名誉への配慮で襲撃事件を新聞社に流し、代償として世論から「軍人大丈夫?」という不安が発生しているので、軍人が村を襲撃したなんてバレたら、軍人への風評被害が出てしまう。


 軍に入ってから、動きづらくなってきた。


 前は、簡単に火がつけられたのに。


 というかこの刀……相模局長が触っても、野狐禅の霊力だけ吸ってたようだし、水社一心に触れても大丈夫そうだった。あの時はとにかくそうするしかないとの想いだったが、野狐禅の霊力をあらかじめ吸わせていたからそうなったのか、刀の性質が変わったのか絶妙に分からない。


 普通に私今、霊力0だし。今もなお吸われてる……だろうし。


 考えていると戦闘局が見えてきた。入り口傍に郷田の姿が見えた。


 郷田は私や真原さんを視界にとらえた途端、ギロ、と睨んでくる。


 なんだその目。


「なんだその目」


 うわー郷田と同じことを思ってしまった。


 終わりだ。この世の終わり。郷田と一致するなんて嫌だ。おおいやだいやだ。悍ましい。お祓いしてもらおうか悩んでいると、真原さんが「いやぁぼちぼち眼鏡も考えとるんですけどねえ、郷田曹長」と軽く流す。


「そちらの新人ですよ」


 郷田は即座に訂正してくる。そして敬語だった。同じ階級だが、真原さんのほうが年上なので、敬語でも不自然ではないが……郷田、そういうの考えるタイプか?


 福野さんには当たりが強いのに。福野さんは……郷田より年がちょっと下……だとは思う。階級も下だ。


 現状階級としては私が末端の二等兵だ。霊力が微妙な新人は二等兵スタートになる。霊力が高ければ水社一心みたいにエリート少尉様からのスタートだ。あいつは家柄、ミヤシロ様の加護由来の霊力の高さ、心が読める異能なので、一番優秀な新人がスタートできる位置よりワンランク上のスタートだった。


 枯賀の言霊異能は貴重だが、そもそも珍しい異能を持ちつつ霊力0のパターンはない。


 珍しい異能があればそれだけ霊力がある。


 これが常識なのだが、私の場合、霊力が0。


 軍の判断としては、「いや……異能あるしなあ……霊力0だけど……人材不足だし」という苦心の果ての二等兵だ。


 そして福野さんは上等兵だ。二等兵のまま働いていると自動的に一等兵に進んでいき、一等兵の状態で長く働いていたり功績が認められると上等兵に至る。


 上等兵のあとは、試験を受けると伍長・軍曹・曹長……とランクアップしていく。


 真原さんは現在曹長だ。局長は各局のトップ。その上に各局の局長を束ね、帝都退妖軍の最高責任者がいて、その上はもう完全に現場に出ない上層部だ。軍人ではなく政治家とかそっち寄りの人たち。コミカライズや実写化で、会議室で円になって喋ってる人々である。


 こんな感じの階級編成で、年齢は違えど、真原さんと郷田は同じ曹長だ。


 真原さんは西の帝都退妖軍に入り一旦やめたらしい。その場合おそらく一等兵スタートになる。だから真原さんの視点だと、同期は大抵もう一つ二つ上に階級になっていることが多い。


 一方で郷田は……多分普通に試験受けて、曹長までいっている。


「まぁ、いっつも暗い中でこまい作業ですからねぇ、枯賀は新人ですし、地上出ると眩しいんでしょうねぇ。こういう場所に慣れてないから。環境整えるにしても、予算もないし」


 真原さんは食えない笑みを浮かべた。こう見ると本当に裏切りそうな雰囲気しかない。実際は予算に……倉庫拡大の予算を切実に求めているだけなのに。


「それに僕は曹長にそんなかしこまられるほどの家でもないですけどねぇ、枯賀みたいな御嬢様育ちでもないんで。僕ほらよそもんですから、こっちの男の作法なんて分からへんですけど」


「皇都退妖軍の軍歴があるじゃないですか」


 なるほど、軍歴考慮か。そういえば、輝宮寺の件で調査局に各局の人間が集まった時、真原さんは「出戻り真原」と馬鹿にされていたが、郷田は『お道具係』とあくまで管理局全域を馬鹿にしていた。真原さんを侮辱したのは、別の局員だ。


「途中でクビになったんでねぇ、無いも同然ですわ。実際、こっちではなあんも考慮ないし」


「クビじゃなくて、部下を見捨てた上官殴っての除隊処分ですよね。十四から特例入隊して、曹長まで行ってた」


「よう調べてはりますねぇ、調査局の作戦に参加して、なんか目覚めはったんです? てっきり戦闘一本やと思うてましたけど……立派な異能もお持ちで」


「いや、普通に……そういう経緯の人間に対して、生半可な態度では……」


 郷田は口を濁した。


 そういう経緯の人間ってなんだよ。


 水社一心に対するてめえの態度はなんなんだよ。


 こいつもしかして、真原さんに対して「上官も殴っちゃう真原さんかっけー‼」みたいなこと思ってるんだろうか。


 正直、部下を見捨てた上官殴る問題については、腑に落ちる部分はある。前から真原さん、部下を庇わない上司については、めちゃめちゃ殺意向けてたし。


 私自身、暴力は許せない‼ みたいな倫理観もないし。


 というか郷田は何?


 こいつ水社一心が年下おぼっちゃんだから舐め腐ってるのかと思いきや、逆にあいつが階級が上だから喧嘩売ってるのか?


 いやでも福野さんにも絡んでたし私にも絡んできてたし……。


 郷田が他人を馬鹿にするポイントが分からない。



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― 新着の感想 ―
>よそから、僕抱えた男が登場して、母親と結婚して、双出来たんやけど、あやかしに食われて死んだんよ。   主語が分からんから、双子が死んだのと間違えました…
お家予想以上に複雑…。仕方ないの一言、家がうまくいってる人というのは悪いことではないけど、お家に事情がある人の事に気づけないこともあって、触れられたくない話題を軽率に言ってしまうことがある。じゃあ必ず…
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