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【和風】悪役義妹がお姉様の溺愛結婚を壊すまで  作者: 稲井田そう
第十二章お姉様を欲する変質者
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福野さんの中の皇龍清明様

 え、怖。


 福野さんどんな話題に変えるかと思いきや、何?


「は?」


 熾窪が本気で戸惑っている。加寿も運転しながら「へ?」と困惑した。


「皇都でってことですか?」


 加寿がおそるおそる尋ねる。


「あの人、強いのは知ってるんですけど、戦ってるの見たことあるし。軍の、なんの人なのかなって。何歳くらいなんですか? 天将位って、軍の階級にないじゃないですか。なんの人なんだろうなと思って」


 福野さんは平然と言った。まって。じゃあ福野さんは皇龍清明様に対して「なんなんだろうなこの人」「強いけど何の人か分からないな」と思いながら列車に乗っていたってこと?


「皇龍様は、人間に近しい存在ではあるが……人ではない……」


 熾窪がおそるおそる言う。


「あやかしなんですか?」


 福野さんが直球で尋ねる。全部剛速球。


「いや、神に近しい存在ではあるが、神ならず……なんていうか、神様に関わる家があるだろ。ほら、帝都言えば水社みたいな」


「かわいいおうち」


 福野さんが納得するが、違う。それだと女児向け玩具の二つ名みたいになってしまう。


「皇都で言えば、俺の家やさっきの猫屋敷様みたいな、神を奉る家と、神の血を引く存在の間くらいに、中間の存在があって、そこの上位の存在というか。特徴としては莫大な霊力と長命を持つ、神様とも言えない、天に近いお方だ」


「長生きなんですね」


「……ん、あ、ああ」


 熾窪は福野さんの相槌に困っていた。こういう時、真原さんが必ずツッコんでいたけど、あれがどれだけ大事だったか痛感した。


「だから、あの人の年齢は、正直分からない。人間なら一年おきに年を取るものだし、相応に、加齢が発生するがあの人は衰えるみたいな概念がない。死ぬことが……無いというか、消滅に近いようなことを、聞いたことがある。神と同じで、跡形もなく」


 そう。皇龍清明様および暗天妖王は死なない。


 暗天妖王は邪気の塊なのでお姉様の光のパワーで滅ぼせるが、皇龍清明様……限りなく陰の者であれど内面は光寄り、光属性に分類される。


 光属性の死の手段──消滅は、穢れすぎて魂が壊れ消滅するという最悪な流れだ。


 つまり、神は邪悪な穢れでしか死なない。寿命が無い。


 流れとしては、ミヤシロ様みたいに、何かを施す力が無くなる、民に何もできないと自尊心が削れる、自尊心が削れ過ぎた結果魂が穢れてくる、消滅。


 神の死はこういう流れだ。外部勢力により、暗天妖王の瘴気を浴びて穢れて死ぬといった他殺めいた死因もあるけど、仕組みは精神的に追い詰められたことによる消滅だ。


 私は水社一心をちらりと横目に見た。


 こいつの前でする話じゃない。


「皇龍様が結婚しないのって、そういうのもあるのかもしれませんね。百年前からいたらしいし、人間は百年生きるのを目標にする人がいるくらい、遠いことですし。結局、30歳くらいの嫁もらっても、50年経てば嫁だけ死んで、子供も死ぬでしょ。自分より先に」


 加寿が口をはさむ。「なんだ30って、その具体的な数字は」と熾窪がツッコんだ。熾窪は加寿にはツッコめるらしい。まぁ、それだけ一緒にいるからだろう。


「だって、見た目年齢的にギリじゃないですか? 皇龍様20代……大人びた、え、まだ10代なのって驚かれる外見とも言えるわけで、精神年齢というか生きてる経過日数で計算すればもう、90歳くらいのお婆さんが適齢ですけど、孫とばあばじゃないですか。それで恋愛関係って言ったら、取り締まり対象にはなるじゃないですか」


「取り締まり対象って」


 熾窪は怪訝な顔をするが、私は加寿にもそんな考えがあるんだと感心した。


 年の差恋愛モノ、創作としては好きだけど、色々問題も付随するし。


「だって、老婆が被害者の結婚詐欺もしくは、老婆が加害者の性犯罪もあるし、その逆もしかりで。軍が末理さん見合い相手に選ぶのは分かるんですよ。霊力があるからって。今無いみたいですけど。でも、自然な恋愛って、無理ないですか? 奇跡的にこう、10歳以上年の差あるけど、実は幼い側には同世代くらいの魂が入ってます、みたいな、精神的釣り合いが、ギリっていうか。それだったら俺のほうがよくないって思ってるんですけど」


 加寿がバックミラー越しに私を見た。


 結論、俺を選べ、みたいな話?


 アホ?


 ちゃんと聞いて損した。


「っていうか末理さんどんな男好きなんですか? 僕みたいな男好きじゃないっぽいのは分かるんですけど」


 自覚あるんだ。


 確かに私は顔がいい、美形とされる男が、あまり好きではない。嫉む。


 なんか、いい暮らししてるんだろうな、くたばっちまえばいいのにが勝つ。前世からだ。前世女だし、自分の性別に違和感を覚えることもなく、女が好きなわけでもないのに、顔のいい男を見ると、いい暮らししてそうだな、くたばっちまえよ、とつくづく思っていた。そうした男の中でも特に「こんなかっこいいですけど実はこんな変なところもあるんです」「実は人に引かれるんですけどこんな趣味あるんです」と、毒を吐くことや露悪を好み、それをアイデンティティにするような一部のキモい人間が本当に嫌い。「自分クズでーす」と開き直ってるのも嫌いだ。キザならキザに振り切ってるほうがいい。



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― 新着の感想 ―
私もちゃんと加寿さんの価値観を「ふむふむ」と読んでいたので、最後の最後で末理ちゃんと同じ感想になりました笑 グイグイ来るくせに微妙に引き際を弁えている加寿さん、好感度がギリマイナスにいかないですねぇ……
そういや、一時期に「俺、実はアニメとか大好きなんですよ」って言いだすイケメンが増加していた時期があるけど、末理さん的には嫌いなタイプの上位ランクだったのかな
福野さーんっ!! 説明回ではあるけど、水社家まさかのシルバ〇ア枠。 加寿自覚あったんだ。 身体接触や性的な冗談とか2人で出かけようと誘ってもいないので、セクハラ判定はし辛く会話も一般論とか世間話と言…
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