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【和風】悪役義妹がお姉様の溺愛結婚を壊すまで  作者: 稲井田そう
第十二章お姉様を欲する変質者
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猫神様

「金の……猫」


 富山局長が天を見上げ呟く。


 猫屋敷家の屋根の上にはシャチホコの代わりに猫が鎮座しており、庭は少女漫画原作アニメの金持ちの庭の平均値。そして──敷地内には数多の──猫。


「アァ……ウッウッ」


 福野さんが呻いた。ギリギリ軍人としての理性が働いている。拳を握りしめ、じっと猫を見ていた。ただ小声で、


「かわいいね、かわいい、あんよ、ないねえ。ふくふくだねえ。なにたべてるのいっぱい。いっぱいたべてんだね。あんよ短いねえ。困っちゃったねえ。困っちゃったの? だっこいる? だこ? だっこだっこだっこ、ううんかわい。うりうり、うぃいいん、んーまっ、んーまっ、むっむっむっむっむっ、んーまっ」


 と呟いている。そして触らない。


「猫お好きですか」


 福野さんは突然こちらに振り向いた。


 私は首をかしげる。正直、動物に好きも嫌いもない。それにネットの動物至上主義かつ迷惑かけても動物命だったり、そうした思想のせいで動物を危険にさらすようなダブルスタンダード系のよく分かんない人種がすごい嫌いだった。福野さんとのかかわりで、緩和されたけど……さっきの金持ち嫌いが水社一心の影響で緩和されたのと同じように、福野さんを通じて……色々変わったのかも。


「人慣れしていると分かっていても、触ってはいけないんですよ。飼い猫だからといって、触ってもいいわけではありません。猫に負担をかけますし、噛まれた場合、人間は死ぬ。野生は絶対触らない。飼い猫は、飼い主がいいと言ったら。それでも触りたい場合は、自分のお腹を撫でるといいです。温かいから」


 そう言って福野さんは自分のお腹を撫でていた。熾窪が絶句しており、加寿は「猫好きなんですねえ、へー!」と特に気にしてないようだ。女に興味ありすぎて男は何してもどうでもいいってことなのだろうか。蝦蟇貪は「なんなんだお前んとこのは」と富山局長に軽く呆れる程度で、ほぼ受け入れている。ちょうど皇龍清明様に隠れ、猫屋敷様には見えてない。


「お前、もうちょい、見えんようにせえ。本当にもう、耐えてんのはもう、偉いから」


 真原さんは福野さんの肩を叩き、奇行を隠す。


 そんな福野さんを皇龍清明様はじっと見ている。さっきからなんで皇龍清明様は福野さんを見ているんだろう。


「ではどうぞ屋敷の中へ」


 猫屋敷様の案内の元、私たちは屋敷の中に入っていく。内装は全部猫だ。伝統工芸と猫コラボの屋敷。高そうと思う内装に全部猫の意匠が組み込まれている。


「我が一族の歴史はご存じで?」


 長い廊下を進んでいると、猫屋敷様が降り返る。たとえ声を発することが出来ても、千年桜は恋と咲くを全部読んでいるので知っていますとは言えない。酒呑童子は「知らない!」と首を横に振り、蝦蟇貪が「帝都で聞いているものと異なる可能性がありますよねえ」と薄く笑った。


「ほら、皇都の人間は、帝を守らなければいけない。本当のことを、こちらに伝えるかどうか」


 蝦蟇貪が同行した理由が分かった気がする。こういう時の会話のすり抜けだ。皇龍清明様は言わずもがなだし、真原さんは……皇都という場だとさらに気を遣い苦しいだろう。富山局長も、真原さんを気遣い本来のポテンシャルが発揮できるかわからないし……そもそも、傷ついた人間に言葉をかけるほうに得意が向いている人だ。


「遥か昔、一匹の猫がおりました。飼い主に大層可愛がられ、愛されていましたが──その愛情を上手く返すことが出来なかった猫でございます」


「上手く返すことが出来ないって?」


 酒呑童子がすかさず聞く。


「爪で引っかいたり、飼い主を拒絶していたのです。心のうちは異なっていましたが、自分が愛情を返すことを、知っていても出来なかった。恥ずかしい、今更、こんな自分が、少し撫でさせて関係が変わるのが嫌だ──そう思っていた矢先、飼い主は猫を手放しました」


 そこまで話をし、猫屋敷様はこちらをまた振り返り、じっと私たちの反応を伺った後、話を続ける。


「酷い。猫は思いました。復讐の代わりに、新しい主人にうんと懐いてやりました。頭を撫でさせ、自分から近づき、新しい主人が前の主人にこんなにもかわいいと話をすればいいと。後悔しろ。ざまあみろ──そう思っていた矢先のことです。前の主人が死んだとの知らせが入りました。自分の恨みが届いてしまったのかと不安になりましたが、新しい主人が話したのです──ああ、今日なのか……と」


 そこまで聞いて、察した。


「前の主人は自分の命が残りわずかだと知っていました。なので、譲渡先を探したのです。自分が死んだ後、野良猫にしてしまうのはあまりに無責任だから。猫は悲しみに暮れ、自分はなんてひどいことをしてしまったのだと後悔し、あの世で詫びなければ、そしてもし許してもらえて、嫌われていなかったら今度こそ、自分の気持ちを伝えようと決意して──長く生きました。飼い主を長く想う心の清らかさに神はいたく気に入り──猫を神にしたのです。その猫こそ、我が屋敷の奉る、猫神様になります」



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― 新着の感想 ―
猫神になって飼い主には逢えたんだろうか…… どうしたの皇龍清明様ww 前世の知り合いですか?w
ああwww福野さんw耐えた…!!!?理性めっちゃ偉い〜!!!福野さんの小声でめっちゃ荒ぶってるの好きwwいっぱいたべてんだねが愛を感じますね。ふくふくの愛されて健康的な猫ちゃんさらに可愛いですよね。急…
福野さんを気にする皇龍様が気になっちゃってもう
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