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【和風】悪役義妹がお姉様の溺愛結婚を壊すまで  作者: 稲井田そう
第十一章お姉様に惚れる人気キャラ
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花宵の事業計画

前の前の話?

トランクの荷物の件ですが「荷物無し」でお願いします。すみません削除エピソードがありそれの名残が出ておりました。






 末理が水社家の祠で見つかった日のすべては、今もなお花宵の心に鮮やかに刻まれて消えない。


 最初に異変に気付いたのは水社家に長年使える手代──雑務をこなす使用人の翁だった。末理は普段、水社家の池の周りで剣道の稽古をしているか、翁が外で行うような庭仕事の手伝いをしていた。花宵は水社家の家事を手伝っていて、日中、別行動が多かったのだ。接したいと思えど、自分は人に面白いと思てもらえるような人間ではない、人を楽しませることはできない。近づいて自らの浅さを知られることを恐れ、水社家の役に立つことに努めた。


 自分に出来ることをという正しさに逃げ、逃げたことも正当化していた。


 だから末理が祠に行ったことにも気づかなかった。気付いたのは翁だ。


 姿が見えない。厠で倒れていたら危ないと女中に声をかけ確認させたがいない。何も言わず姉だけ残して消える不義理な人間でもない。自分は水社について口にしてしまった。だから。


 翁は水社家当主と花宵に説明し、祠の浮かぶ池の橋をかけた。そこにいたのはミヤシロ神と呼ばれる、人ならざる異形の神と、見慣れぬ女性と共に倒れた末理の姿だ。


 女性は声掛けによりその場で目を覚ましたが、末理が目を覚ますまで3年が経過した。


 その3年間のすべてを、花宵はよく覚えている。


 ──今は奇跡的に生きています。ただ、目を覚ましても、単に目が覚めた良かったという話には、ならないかもしれない。その覚悟は、持っていてください。


 何人もの医者に見せ、七番目の医者が告げた言葉だ。


 ──一番良い、最良の状態で、虚弱になる。季節の変わり目で体調を崩しやすくなる。気性が荒くなる。塞ぎこみやすくなる。そういう代償です。悪いほうは、限りが無い。どうなるか分からない。水社家はよくご存じでしょうが。


 末理が倒れるまで、花宵は水社家についても、水社家が何を奉っているかも知らなかった。聞いてもそれとなく濁されていた。その理由が末理の昏睡で知った。


 水社家は代々ミヤシロ神と呼ばれる神に霊力を捧げる家。


 引き取った子供がそんな話を聞けば、捧げる義務を感じる。それを避けるため、水社家は花宵と末理に神について話さなかった。水社家は神社を保有しているが、門で隔てており、その門の向こうに行くことは許されなかった。「それは水社家のことだから」と線を引かれていたが、こういうことだったのかと花宵は理解した。


 そうして末理の状態や水社家を知っても、末理は目を覚まさない。無力さを抱え、自分に霊力があれば末理はこんなことにならなかった。自分に霊力があればと己を呪う日々の果てに末理は目覚め軍に行った。


 行かないでほしかった。ずっとそばにいてほしい。


 わがままで自分勝手な願いだ。それに、それを叶う何もかもが花宵にはない。


 大切なものを守れる異能も霊力もない。


 でももう二度と、末理にあんな目にあってほしくない。


 そんな自分に、なにか出来ることは。


 悩みぬいた果てに、神社にやってくる人々が長い坂を上がり汗だくになるのを眺め、気付いたのだ。手ぬぐいに刺繍をしようと。


 末理が昏睡の間、末理が助けたミヤシロ神や水社夫人と会話をしていて、「知られる」ということがミヤシロ神の力になることを知っていた。


 花宵は奉公先で身に着けた刺繍を水社家で度々褒められていた。仕上がりを見た水社夫妻は「配るのではなく売ろう。これは対価を得るべき仕事だ」と話し、神社で売ればたちまち売れた。


 そこから、事業を立ち上げるまでになった。今では手ぬぐいだけではなく、周辺の店と連携し、飲食物や衣料品の販売も手掛けている。


 今日花宵が目指しているのは、ミヤシロ神を用いた饅頭の包装紙のほか、一筆箋などの印刷を依頼している印刷所だ。花宵はその印刷所と、ちょっとした縁がある。


 花宵は昨年夏、実業家の青年と見合いをした。


 その青年は、あやかしだった。


 厳密に言えば、狐のあやかしが実業家の青年に化けていたのだ。


 つまり花宵はあやかしと見合いをしたわけだが、その狐のあやかしは死んでしまった青年の代わりに見合いにやってきていたらしい。


 見合いの終わりかけに事件が起き、その後、狐のあやかしが化けていたことが分かった。その後も末理を誘拐するまでの事件を起こしたあやかしだが、それは末理を守る、助ける為だったと一心から聞いた。


 末理を助けた、狐のあやかし。


 元々、青年の件であやかしに惑わされた者同士。


 向こうの印刷所は青年という大きな取引先を失ったばかりと聞いて、助けられないかという意味で仕事を依頼した形になるが、その後、狐のあやかしについて知ることとなった花宵は、深い縁を感じている。


 経緯から、夫婦と顔を合わせれば、事業に関することだけでなく本当の青年について話す。


 結果ではなく過程を何より大事にする性格で、実業家なんて肩書きとは裏腹にずっと質素に暮らしていたこと。


 周りの人間の祝いは盛大にするのに、自分には無頓着で、派手なものより地味なものを好むこと。


 自分だけが得をする、自分が損をして誰かが得をする二択だと、必ず自分が損をするほうを選んでしまうこと。


 競争の業界にいるのに、誰よりも競争が苦手なこと。


 不器用でなにかが下手な人間が好きで、そういう人間にばかり投資すること。


 青年──輝宮寺啓介に関する話を聞くたび、花宵は、己の浅慮を恥じた。


 自分は末理の為に見合いをしようとしていた。


 しかし輝宮寺啓介は、きちんと妻を探していた。


 結婚という将来の希望を夢見て。















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― 新着の感想 ―
トランクの件承知しました!ありがとうございます!! ああああお姉様自分は楽しませられるような人間じゃない、浅さを知られるの怖くてあまり接しなかったのか…そんな中で急に昏睡3年〜!!!!自責…気づいたの…
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