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悪役義妹がお姉様の溺愛結婚を壊すまで  作者: 稲井田そう
第十一章お姉様に惚れる人気キャラ
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レスキュー酒呑童子・モグモグ刀

 謎の光の発生場所に向かう前に、私は死を覚悟した。理由は現場を目指そうとしたら酒呑童子に「お前遅いからのせてってやる‼」と脇の下に片腕を回された。子供がぬいぐるみを抱え親と手を繋ぐかわいらしいイラストがあったとする。そのぬいぐるみと同じ運ばれ方で、帝都の上空を新幹線と同じ速度で移動している。死ぬ。足が引き千切れる。口がぶわんぶわんするので閉じるのがやっとだ。


「へへん、速いだろ‼」


 酒呑童子は得意げにしているが、マッハであの世行きかと思った。


「お前は根性あるからな、こんくらいの速さなら、あやかしにならなくても頑張ればそのうち出せるぜ。修行し続ければ」


 無理ある。


 しかもその修行、多分命を落とす。そしてあやかしにさせられる。想像できる。


 ドカン、と地面をえぐりながら酒呑童子は街に着地した。場所は帝都の大通りから一本逸れた場所だ。居酒屋と女性接待の伴う飲み屋が連なり、炉端には退勤中の人間や飲み会のはしご中の男、飲み屋の女性と客の連れ歩きなど、人々は緑の光が明滅する方向から逃げてきている。


「何があった」


「ひいいいい、鬼‼」


 そばにいた酒臭い男が酒呑童子に怯える。酒呑童子はバイト鬼をしているが、こうした……夜の街では知名度が低いらしい。健全鬼じゃん。


「軍人さん‼」


 振り返ると飲み屋の女将らしい女性がこちらにかけ寄ってくる。


「一緒に来ていただけませんか‼ うちの子が……その先の託児所にいるんです」


「駄目だよママ、あやかしが出たんだって、逃げたほうがいい」


 女性は男に引き止められる。帝都の夜の街はカウンター式接待付きの小料理屋を装った形式と、喫茶店を装い女給が接待する形式がある。なぜ詳しいかといえば、管理局以外の局員同士の会話の盗み聞きだ。


 未成年は働けないし、接待する女に子供がいてもおかしくない。それらの子供を預ける場所があれば、嫌な言い方だが儲かるだろう。


 そして女の様子から、緑の明滅拠点と──託児所が近い。


「ガキ狙うあやかしかぁ」


 酒呑童子から表情が消えた。


「安心しろ雑魚、雑魚を守るのはつええ奴の義務みてえなもんだからな」


 酒呑童子は緑の光が発生している場所に向かって飛んでいった。


 逃げまどう人々をかき分けながら酒呑童子の後を追うと、僅かに酒呑童子の背中が見えた。その先には──いくつもの小屋から火の手が上がり、あやかしの群れが人々に襲い掛かっていた。


「おいバカ弟子」


 酒呑童子の声が響いた。


「処刑は任せた」


 え?


 酒呑童子の身体から、大量の霊力が発される。腕をバキバキ鳴らすと、酒呑童子の腕めがけ、天から雷が轟く。金棒が現れ、酒呑童子は掴む。


「命と引き換えだな、悪いけどよ」


 酒呑童子は思い切り金棒を地面に振り下ろした。一瞬にして炎に焼かれた建物が浮き、建物の中にいたらしい子供や人々ががれきの間から見える。


「四十八」


 酒呑童子が呟くと、私の背後に、浮いていたはずの人間が立つ。


「四十七、四十六」


 酒呑童子のカウントダウンと同時に、宙に浮く人間が私の後ろに着地していく。建物ごと木っ端みじんに破壊したあと、人間だけ取り除いている……?


 命と引き換えって、建物を壊すこと……。


「グォウウウウウウウウ」


 そばであやかしが咆哮を上げた。


 酒呑童子が助けた人間や、こちらを狙っているらしい。


 とりあえず人間の救助は酒呑童子に任せておこう。私が抜刀すると、二重鎺が変形した。鎺から黒く細長い手が無数に伸び、私の後ろで男を襲おうとしていたあやかしの頭部を掴むと、ベキョベキョグチャグチャとホラー音を立てながら捕食した。そして今度は襲われかけていた男の腰に巻きつくと、酒呑童子が避難させていた人々に合流させる。


 これやっぱ、悪役サイドの存在だけあって、作法がホラーの化け物のそれ。


 周囲の人間は突然の捕食シーンに怯え、助けてもらった男も泣きそうになっていた。


 助けてるほうも助けられてるほうも、事情がある。慰めるように鎺を撫でれば小指にすり寄ってきた。私はそのまま刀を握りしめ、あやかしに振るっていく。


 六体ほど相手にしたところで、ざっと集団が背後からかけてきた。


「帝都退妖軍対実地戦闘局だ‼」


 水社一心も郷田もいない。おそらく別の隊の人間だろう。今日は非番だと言っていたし。「何があった‼」と声をかけられるが、私は緑の発光場所を指した。


「あやかしが出て、軍人さんがあやかしを倒して、あ、あのそこにもあやかしがいるんですけどずっと我々を助けてくれていて……あのあやかしは違うんです!」


 酒呑童子に救助された人々があやかしを庇う。


「あれは、軍所属の特別なあやかしです」


「ええっ軍所属?」


「そういえば港を救ったあやかしがいるって……」


「噂は本当だったんだ……」


 戦闘局員の話に人々が驚く。秘密裏に暗躍する主人公がとうとう人々の前に現われ、正体を知られる漫画の場面みたいだった。酒呑童子別に姿隠してないけど。っていうか噂されるよなと納得した。だって港の復興作業しながらいろんな場所で働いてたら噂の一人歩きくらいするし。むしろランニングやシャトルランのレベルで噂が広まるだろう。


 私は感心しながらあやかしを無言で切り続けていた。喋らないので。


 そして到着した戦闘局員も加わっていた。避難してきた人間と、たまたまこちらに話しかけてきた戦闘局員だけが、「噂は本当だった」場面を構成している。


「二十六、ガキいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいたああああああああ」


 酒呑童子が絶叫した。耳が裂ける。


 酒呑童子は霊力を使い、丸くて透明なシャボン玉の様なものを作り出すとそこにポンポン子供を放り込んだ。


「一、これで終いだああああああああああああああああああああああ」


 そして、子供を全員詰めた丸いボールを抱えこちらに飛んできた。



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― 新着の感想 ―
「子供がぬいぐるみ〜閉じるのがやっとだ。」wwwほのぼのする可愛いイメージからのマッハ!!!死の飛行!!!は怖すぎるww。末理ちゃん大分酒呑童子氏の無邪気さで死にそうになってること多いなww。 酒呑童…
酒呑童子が街の人気者になる未来が見える 子どもたちのヒーローですね。 ぼくお兄ちゃんみたいなあやかしになりたい!みたいな子どもが出てきてしまう…w
1番ヒーローしてるんだよなぁ
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