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悪役義妹がお姉様の溺愛結婚を壊すまで  作者: 稲井田そう
第十一章お姉様に惚れる人気キャラ
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水社一心と保健体育

 水社当主が、水社夫人の結婚を渋っていたのは……そういう結末を避けるためだったのかもしれない。でも水社夫人が大丈夫だと説得したか、強行して──、


「駄目だったのを、お前が捻じ曲げた……ってことになるんだろうな」


 水社一心は拳を握りしめた。私がミヤシロ様に霊力を注いだ。皇都で有名な水社夫人と、皇龍清明様の婚約者相当の霊力を持つ私の二者による霊力供給なので、お互い生きて帰れた。


「ああ」


 水社一心は暗く頷く。この話になると絶対暗くなるので、しんどい。


「お前の身体……」


 この時間によるしんどさも身体によくない。というか水社夫人は嗅げば感情が分かる異能を持っているけど、真原さんの話だと異能が無いみたいだった。そっちのほうが今は気になる。


「いや、それは」


 水社一心が視線を逸らした。


 何?


 繊細な話題というより、子供が嘘がバレて焦るみたいな顔だった。


「お前、べ、勉強とかしてないのかよ」


 してましたけど。枯賀家出るまでは。しっかりと。見栄前提の習い事まで参加させられてましたけど。


「……コミックスの巻末特典にないのかよ」


 びっくりした。そんな言い方あるか。何で本人の情報を知るのに本人からコミックスの巻末特典に誘導されなきゃいけないのか。しかもこの口ぶり絶妙にSNS投稿でよく見てた。せっかく買ったのに巻末特典何にもない、みたいな。レビュアー一心じゃん。


「……夫婦じゃないと無いような、接触で相手に、異能が無い場合、ごく稀に、そういう場合が、ある。だからよそで聞くなよ。屯所の中にある図書館で……本とかにあるだろうから、読め」


 水社一心が床を睨みつけながら言った。なるほど。千年桜は恋と咲くは子供も読める話なので、そういう設定は流石に出せない。


 水社一心の顔を見れば呆れたようにこちらを見ていた。漫画みたいなへの字の口だ。


「……本読む時は……、一人で行くな。色々、あるだろうし」


 なに?


 この世界だと「異能に伝わる研究」みたいな感じじゃなくて表紙とか題名の時点でガッツリどういう方向性か分かる書籍ってこと?


「そういうわけじゃないだろうが、俺も分からない。もしもがある。人の目があるし、万が一があったら……一人でお前が、読んでて、色々あるだろ」


 水社一心と視線が合わない。保健体育の方向性は大事な教育、恥ずかしがるべきじゃないものであれ、それはそれとして授業中の態度で立ち位置が変わったりする危険もある。社会的、人間としてどうかではなく、学校生活はそういうものなので。


「学校……」


 水社一心はぼそっと呟く。


「お前が、学校通ってた時、そういう勉強したのか」


 はい。いや、してない。お前の考えてることは。


 私はすぐに訂正した。水社一心は私の想像する学校を知らない。自分の身体に関する授業や、いわゆる水社一心の言う「夫婦じゃないと無いような接触」については、医術や自分の権利的視点で、椅子と机のある教室で女学園みたいな学び方をするが、千年桜は恋と咲くではそういう学び方ではない。接触そのものを同性の家庭教師に知らされる……といった、和歌により恋文を送り合う時代のやり方だろう。


「ああ……そうか」


 水社一心は少し落ち着きを取り戻した。


 それに、ネットが盛んだったし、他人の投稿を見るだけなのに隙間に性的な漫画の広告が挟まれてたりで、この時代の少年少女より、私のいた時代の少年少女のほうが、そういう方向を見聞きするのは多いので。だから、ご想像と異なりますので。


 私は水社一心に念を押す。


「そうか」


 だから、温度感が分からないけど。


「温度感」


 お前の言う、はしたなさみたいな。お前がそういう方向をどう捉えてるのか、知らないし。コミックスの巻末特典にそんな設定ついてても、逆になんか、読者的に気まずいし。


「まぁ俺は、ノベル一巻でいなくなる奴だったからな」


 すごいな水社一心の順応。


「お前のほうこそ」


 水社一心は早口で返す。


 なにが。


「心が読める相手に、そんなふうに読める前提で話すのは、凄いなと思う」


 それは、千年桜は恋と咲くの知識を活用してるにすぎない。


「知識で分かってても、そうはならない。それに、たとえ、俺の異能を理解していても、他人は……違うんだろうなと、今は思う」


 はぁ。


「じゃあ、気をつけろよ」


 女子寮の前で水社一心はサッサと帰れと言わんばかりに手を振る。どうせお前風呂場で会うだろと内心ツッコめば「まぁな」と、何の更生余地もない犯行予告が帰ってきた。



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― 新着の感想 ―
なんか久しぶりに一心の「少年」を感じた。少尉とかやってるけど、まだ10代の男の子だもんね…! そして相変わらず風呂に着いてくるストーカー一心笑
一心かわいいな がんばれ
シリアスな話から急に風向きが変わってわろてしまったw保健体育始まってしまったw。 「……コミックスの巻末特典にないのかよ」くっそww「レビュアー一心じゃん。」お腹痛いww。かわいそうに一心くん、お年頃…
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