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悪役義妹がお姉様の溺愛結婚を壊すまで  作者: 稲井田そう
第十一章お姉様に惚れる人気キャラ
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水社夫人

「水社家ってそんなすごいんですか、神様、可愛いですけど……軍は、可愛いをそこまで重要視しないじゃないですか」


 福野さんはミヤシロ様まんじゅうに視線を移した。


「お前もうさっきからずっと、よそで聞かれたら殺されることしか言うてへんからな」


 真原さんが注意した。伊能局長が若干苦笑しながら「知らないと、そうなるかもしれませんね」とフォローする。千年桜は恋と咲くでは腹黒王子様キャラで「無知は罪ですよ」と人を詰めていた面影は一切ない。


「水社夫人は元々ご令嬢だったんです。皇都の。本来なら……先代の帝の相手として候補に入ってもおかしくはない。現在の皇都の要人の、夫人と同じ年頃の男性の婚約者たる、そういう令嬢でした……女性にとっては嫌な話になるので、枯賀さんは気分の良くない話になりますが」


 伊能局長は視線を落とす。そこで察しがついた。蝦蟇貪が私にしたような話だろう。


「僕から話すよ、伊能くん」


 富山局長が割って入った。しかし。


「いりません。子持ちにそんな話させられるか」


 伊能局長が富山局長の配慮を一刀両断した。富山局長が「え」と戸惑う。伊能局長は少し視線を鋭くしながら、「霊力はあって異能がない家を、皇都は重用するんです」と、淡々と話した。


「代々自らの異能を誇っている家は、相手が自分の家より特殊、貴重な異能だったとしても、渋るんです。その子供が、代々継いでいる異能じゃなくなるかもしれないから。なので、帝含め皇都の要人──特殊な異能を持つ人間は、結婚相手に霊力が高く異能を持たない家を、ひときわ大事にするんです。そういう家で水社夫人は生まれたんです……」


 結婚して血を繋げるために、大事にされている家。


 特殊な異能であればあるほど、その血の存続は重要視される。


 異能がないことが重要視される。


 蝦蟇貪が以前、子供について話をしていたが、こういうことを知ってのことだろう。


「家柄もありますし、家が家ですから、求められているのは良妻賢母です。そのような教育を受けるわけですが……その、夫人の気質が……」


 伊能局長は言葉を選ぶ。真原さんが「滅茶苦茶なんよ」と、フォローに入った。


「夫人、めちゃくちゃなんよ。軍は、家のことあるから軍に入れる気ないし夫人も入る気ないて、なっとったんやけど、何でも首突っ込んで、問題解決してを、一人でするみたいな。軍がやらなあかんことを、やっちゃう。一応民間人の枠でや。だからもう、止められへん。不法侵入でしょっぴくにも家のことあって手出し出来ひんし、善意で動いとるからあれやけど犯罪に興味出たら終わりやっていう破天荒ずっと繰り返しとって」


 真原さんの語る過去に、驚くことが出来なかった。


 やりそうという感想が強い。


 枯賀家の諸々について怒りに打ち震えていた時みたいにやったんだろうと思ってしまう。


「で、本当なら水社家の結婚相手になる資格はあれど、水社当主が、そういうんは興味ないってやってんのを、夫人が、ドタドタドターッて、押しかける感じで、結婚ってなってなあ。せやから、水社夫人のまわりだけ、ちゃうんよ。あらゆる法則と法律が、あの人のまわりでは、機能してへん」


 真原さんは首をサッと横に振った。


 福野さんが「異能無しで霊力ありで?」と首をかしげる。すると伊能局長が「戦い方の感覚が優れすぎてる……野性的……」と首をひねりながら答えた。


「霊力を込めた拳による打撃、霊力による加速、霊力による相手の異能の打ち消しと言いますか、相手が水や炎、雷といった物理で干渉可能なタイプは、まず、勝てないです。感覚を支配する異能も、野生の勘で対処されると聞くので……霊力で圧倒すればなんとか……ただ、戦闘の才能が、ずば抜けていたんですよね」


 悟った。


 酒呑童子タイプだ。


 それは、皇都からしたら怖いわけだ。


 だって家柄上無視できない、おそらく皇都と価値観が違う、正義感と行動力のある、最強の何か。


 私が政治とか国を動かす人間なら、一番怖いもん。


 命がけで突っ込んできそうだし。


「滑空してた言うて、色々、面白おかしく足されとるんもあるかも分からへんけど、強い言うくくりには入れられへんくらいの人や」


「じゃあ真原さんは水社少尉の母親と面識あるんですか」


 福野さんが問う。「全然、聞いた話と、遠くで見たとか、そんな感じやで。末端兵が関われる人やないし、巻き込まれて死にたないし」


 巻き込まれると死ぬ規模なんだ。酒呑童子と一緒だ。


「それに、水社は、色々あるやろ、結婚した後、しばらく、色々やるみたいな。せやから、水社少尉が生まれる前の頃に、色々見て、聞いてってだけや。そういうのは、富山局長が詳しいんちゃいます」


 真原さんが話を振ると、富山局長は「まぁ、ねえ」と私を様子をチラッと伺った。


 私が水社家に居候状態なのは知られているので。気を使っているのかもしれない。


「まぁ、有名な人だったよ。結婚前は。結婚したらもう、水社家の人ってなったから、分からないけど……結婚前は、結果的にね? 軍に協力する感じだったから、状況的には……酒呑童子と似てる……」


 富山局長は結果的を強調した。


 今でいう酒呑童子のポジションで君臨している、水社ママ。


 皇都の人間がよからぬことを考えているなら、心強い味方ではあるけど、真原さんの言ってたとおり、国全体の問題に発展しかねない。それなら私が皇都の人間に詰められたほうが断然いいだろう。


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― 新着の感想 ―
以前『一心ママは嗅覚で感情を察知する』みたいなことを末理ちゃんが心の中で言ってたような気がするのですが、嗅覚での感情察知能力が一心ママの生まれつきの異能でないならば、水社家に嫁いでから後天的に得た異能…
「軍は可愛いをそこまで重要視しない」そうです…ね!!! 「無知は罪ですよ」と人を詰めていた面影は一切ない。」あああ伊能局長良かった…。「子持ちにそんな話させられるか」良い人〜!!! 両方ある人じゃなく…
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