あやかし大襲撃(簡易版)
「ったく、なんでこいつらついてくるんだ。俺は、戦いは一対一がいいし、横から茶々入れられるのが一番嫌いなんだよ……」
あやかしたちは酒呑童子が呼んだのではなく、酒呑童子に集まって来たものらしい。
標的は……私だろう。
「お前は適当にしてろ、とりあえず……殺す、格下の雑魚相手にこんだけ集まって気持ち悪いんだよ」
酒呑童子は戦う気らしい。
私はしばし悩んだ後、空に向かって手を伸ばす。
「おっ、えっその刀……え?」
「お前そういえば猫又倒したんだよな……お前雑魚すぎて無理だろ、いや、その刀で何とかなかったのか、お前どうやった?」
私は刀をいったん小脇に抱え、右の人差し指、左の人差し指を立て、二人を表現し、つんつんした。
二対一。
「バカの考えてることは……分かんねえな……うーん、ああ、誰か、いたとか?」
私は力強く頷いた。
「そうだな、勘だけどそんな感じするわ、お前は、捨て身わけわかんねえ戦い方するから、隙見つけて最大火力でどうにかできる奴がいたら、いけなくもねえな。まぁ捨て身は技じゃねえけどな。ただお前が、ずーっとド根性で猫又の攻撃躱すだけでも勝てたはずだし、特に力で叩き潰す奴は、一発どうにもできなかったときが危ない、お前が捨て身で死んでたら、そいつが一発外した瞬間にそいつも死ぬぜ」
酒呑童子は論理的に捨て身技に対して突いてきた。この間はドゥンとか言ってたくせに。
「たとえば、こんな風になぁ‼」
酒呑童子は口角を上げ、地面を蹴り上げ飛び上がる。酒呑童子が立っていた地面がえぐれていた。
そのまま垂直にとんだ酒呑童子は、輝宮寺の屋敷を襲ったあやかしに似た、飛行型あやかし三体に飛び掛かると、虚空から金棒を取り出し、振り回した。
酒呑童子のメイン武器だ。
持ち手はかなり細身で、絵本の世界で棘がツンツンついている刀でいうと刀身の部分は、赤黒い炎が揺らめくデザイン。
しかし素材は鋭利な刃。シルエットが金棒に見えるだけで、殺傷力は高い。
酒呑童子は複数体のあやかしを一瞬にして斬りつけ、そのまま大型のあやかしを一刀両断してしまう。
眺めてるだけではいられない。私も傍にいたあやかしに向かっていく。
「丁度いい、お前の根性見せてみろ‼ 実戦だ‼ 数は多いがそいつらは俺の分身よりずっと弱いからな‼ わーはっはっはっはっはっはっはは」
酒呑童子は楽しそうに戦う。私は酒呑童子が認識していないようなあやかしを倒しつつ、飛行型のあやかしの攻撃をかわし、その背に乗り上げた。
今まではしなかっただろう戦い方だ。前の私なら、そのまま受け止めて斬りつけるか、腹を蹴り上げて刺す戦法になる。そのほうが確実だから。
でも、投げやりじみた確実さよりも……今は。
「いいなそれ楽しそうだァ‼ おら飛べ‼」
酒呑童子は大型あやかしを掴む。、一応、自販機二台分の高さがあるあやかしだ。それをそのままま黒い瘴気めがけ投げ込んだ。
「うはははははは」
そして大型あやかしに飛び乗り、ぶんぶん金棒を振り回し、周囲のあやかしを攻撃する。
バカのサーフィンじゃん。
私の今の戦い方、これなの?
酒呑童子に稽古つけてもらった私の戦い方って──バカの戦い方。
あやかしと対峙しながら悩んでいれば、光や炎で出来た弓や球が飛んできた。それらは確実にあやかしを狙っていき、攻撃が放たれた方角からは、軍人たちの姿が見える。
「あやかし確認‼ あやかし確認‼ 報告と大きく異なる‼ 強力なあやかしではなく群れ……あ?」
郷田および戦闘局の人間だった。
「なんでお前が出動してんだよ、お道具係はさっさと退避しろ、どけ」
私のそばに来た郷田は言うが、退避の暇なんかない。
そもそも今は乱戦状態だ。
「郷田曹長、あの、あやかしが、あやかしを討伐してます」
郷田の部下らしき軍人たちが酒呑童子を差す。
郷田が私に絡んでいる間にも、酒呑童子は嬉々としてあやかしを倒していた。
「強力なあやかしが、群れを引き連れてきたわけじゃないのか?」
郷田は混乱していた。酒呑童子はあやかしの中でも異端枠。あいつの考えを理解するのは常人には無理だろう。私は仕方なく、うんうん頷いた。
「じゃああいつはなんだ」
郷田は問うが、私にも正直分からない。とりあえず郷田を無視して戦おうとすれば、「お道具係は引っ込んでろ」と私の襟首をつかんで後ろに下げてきた。
「討伐はこっちの仕事だ。さっさと屯所で御符でも数えてろ」
郷田は支給の刀であやかしを斬りつける。私は郷田を無視し戦おうとするが、「邪魔だ」と私が狙ったあやかしを先に郷田が倒してくる。邪魔なのはお前だろ。あやかしごと斬ったっていいんだからなと郷田の背にいるあやかしを狙った。
それにしても、黒い瘴気からいくつもあやかしが湧き出てくる。軍人の増援もあれど追いつかない。
あれをどうにかしないと駄目なんじゃないか?
瘴気に視線を向けていれば、しゃらんと神楽鈴が鳴った。
ゴロゴロと雷鳴が遠くから響きはじめ、空に暗雲がたちこめる。
「あ」
酒呑童子が不機嫌そうに黒い瘴気に振り返った。
酒呑童子の視線の先には──、
「久しぶり」
黒い瘴気から、野狐禅の姿があらわれた。




