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俺にファンタジー世界は早すぎたみたいだ  作者: ノエル・L・ファント
四話 呪いに対し抗う者たち→焦がして
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46 目覚める灼熱の刀、猛る不凍の熱き焔

 最初の猛攻を掻い潜れたものの、まだ、あの怪物の攻撃は止まない。


「こいっ、魔力の糸! くっ、なんだよこの速さ、この力ッ! 今までとは比べ物になんねぇよ!」


『大丈夫、力的には拮抗してる! そのまま押し勝て!』

 いやいや流石に無理だろセタ! 俺はそこまで強くねぇ!


 ソウイチとユノちゃんの方を見ることもできない。ビーム、突き刺し、またビーム。キリがない。攻撃に終わりがない、攻撃できない。


「がっ!」


 頬が切られる。それだけで、臓腑を抉り取られるような痛みが、頬を中心に体の中を駆け回る。血は少ししか出てない、かすっただけだ。だが、この痛みは……


『毒かもね、エル君。慎重じゃ無理かも、急かす気もないけど短期決戦しか勝ち目は無しだ。それに──』


「せめてっ、希望的観測してくれっ! まあ、相手も短期決戦(それ)を望んでるんだ」

 ただ────



 光った。それに気付いた時にはもう、怪物の攻撃は済んでいた。


 左手の感覚が無かった。冷静に考えることができるのは、多分まだそのことに実感が追いついていないからだろう。


 血が、出ていた。皮が裂けて、そこから痛んできていた。すぐさま理解する。


(さっきの光、ビームで……)

 そこで、ハッとなる。ユノちゃんとソウイチは、ユノちゃんとソウイチはどうなった!?


 後ろを見る、さっきまでユノちゃんたちがいたところには、大きな土煙が立っていた。


「まずい、もしかしたら!」

 さっきのビームは俺で無く、彼女らを狙ったものだ。確実に!


『エル君ッ!!!!』


 セタの声。俺はすぐさま怪物の方へ振り向いた。


「う────ッ!! ぐぅぅ!」

 脇腹を、抉り取られるようにビームが放たれる。それをもろに食らってしまった。立ち上がれない。


 怪物は二発目のビームを放つ態勢になる。

 俺を確実に殺すため、尻尾や鋏角を使って覆いかぶさるような態勢になっている。逃げ場など、無い。


 もはや、死ぬことを考える余裕さえない。目の前の恐怖に、争うことしか考えていない。


 怪物は待ってくれない。二発目の、確実に俺を消炭にするような凶砲を、打ち込んだ。


 そして俺は、目を──



「魔闘真流────────()()、奥義」






 瞑ることができなかった。目の前に、刀を持った羽織りの少年が飛び込んできたからだ。

「炎舞 火廻(ひまわり)!!」



 ドゴゴゴッ!! と、大きな音と共に凶砲が、一瞬にして灰燼となって消えた。





「大丈夫か、エルヒスタ・レプラコーン」


「ソウイチ! ……ソウイチ? えっと、誰?」


 まず声色が違った。いつもの調子の乗った声では無く、何か包み込むような暖かさで、それ故に他人を近づけない冷たさを持っている。


 目つきが違った。いつもは今を生きているような瞳をしているが、今はまるで「今」を見ていないような、過去・未来を見通すような目をしている。


 そして──髪の毛を解くように、うなじから、羽織りに隠されていた長い髪があらわになる。


「私の名前は、ココノエ・ロンダー。今は訳あって、ソウイチロウの代わりをしています」


「ココノエ……ロンダー? ソウイチの、代わり……?」


 はぁ、とため息をついてから彼、いや彼女は俺に向かってこう言った。


「下がっていなさいエルヒスタ。ユノ・ワロキアは無事です。あの子のところまで行けば、あなたを蝕む毒は解かれます。彼女は凄い、私よりもずっと。だからさあ、行け!」


「ちょ……」


 咄嗟に言おうとした言葉が詰まる。「ちょっと待て」という言葉が。突然吐かれた強い口調に驚いた訳ではない。俺は咄嗟に理解した。ああ彼は、あの怪物を殺すつもりなのだと。そして、それができるだけの力を持っているのだと。


「エル先輩こっちです!」

 ──わかったよ。催促するユノちゃんの声。


「頼む、ココノエ」


「はい、任せてください!」


 体を引きずって後ろへ下がる、ユノちゃんのところへ。


「魔闘真流剣術奥義、炎舞 火鉢(ひばち)!」


 轟音、そして閃光。ソウイチ、いやココノエと怪盗の戦いが始まった。


    ☆


「凄い……」

 剣舞と4本の腕が、文字通りの火花を散らす。ソウイチ、いやココノエの剣技。その流派、魔闘真流。


 魔闘真流の正式な継承者は、ありとあらゆる武器を扱うことに長けている。剣術から武術、槍術に瞑想術、はては調理術まで、ありとあらゆる行動を、魔力を使って強引に強化する。その極限、技の反復性と平均性を求めた【奥義】は、その術に最も最適な【属性】のような能力を扱うようにして詰め込まれている。


 例えば、俺の使う拳闘術。『一撃の重さ』に重きを置いた拳闘術は、雷と同じような一瞬の力を強化するように魔力を設定する。故に、瞬間火力以外──例えるなら継続戦闘能力は残念であるが持ち合わせてはいない。


 それに比べて剣術は、拳闘術とは真逆の『手数・継続的戦闘能力』に重きを置いている。どんな状況でも、燃え続ける魂の種火のように。


『エル君、魔力の糸の解除を早く』


 ユノちゃんの魔法で、毒が消えはじめている。


「……だめです、エル先輩。これ以上戦場に立つことは……無理です」


 ちっ──意識が少し朦朧としてきた。回復魔法の弊害、副作用。それが顕著に現れる。


「どこまでなら、俺でも戦える?」


「ですから……そうですね、魔法数発──やっぱだめです! もう無理です!!」


 なんだ、ユノちゃんも戦えるってわかってるじゃん。


「魔法数発……ね」




『どうするつもりだい、エル君? 君の体はとっくに限界を超えている。肉体ダメージが薄いのが不幸中の幸い──」

 あ? ()()()()()()? セタさんよぉ、それは違う!


 顔を上げた。半分自虐的に、やつれながらも吐き捨てた。


「幸い。最大の幸いだ! 弱くて柔い俺に、まだやるべきことが残ってんだから、まだやれることがあるんだからなっ!」

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