16 くつ! くつ! くつ!
日用品ほど手に入りにくいっていうのがゲームの世界かもしれません。
剣とか鎧とかって日常的には使いませんよね? ね?
日本刀? あーあれは日用品ですようちにもあります家のものとは別にマイ日本刀(ぉ
「オサム君、改めて娘を送り届けてくれてありがとう。それに貴重な薬まで申し訳ない」
イベントが終わり、各々が家に帰る姿を見届けてから、村長の家で、クリスの父親から言われた第一声。
言葉はいいが、目線が僕の頭の上。
ああ、スラリーダーですね。
安心してください。彼はいいスライムですよ?
ほら、リーダー。君も主張すべきだと思う。
「人間よ、オサム神様に敬意が--」
「まてえええっ! あ、ちょっと待っててくださいね! リーダー。いい。主張はなしだ。いいスライムってことだけ、いや、手出し無用何もしなくていい」
頭の上の問題を両手で掴み取る。
部屋の片隅へ速攻で移動。とりあえず、村長には笑顔。
よし、ばれてないな?
スラリーダーには、作戦変更指示。
命令させろとか、いろいろやろうぜ、とかじゃなくて。
何もしないでくださいませ、だな。
「しかし、クライッシュ・ドメッシュナー病は恐ろしかった。感染したのかどうかは分からないが、クリスが出かけてから、妻もかかってしまったからな。無限道具箱の能力者はこの村で私たちだけだったから、本当に危なかった」
「無限道具箱? ああ、『無限なるカバン使い』の説明からの引用ですね」
「ん? 『無限なるカバン使い』? 何のことだ? 無限道具箱と似た言葉だが」
「お父さん、オサムは『初心者さん』だから能力のことも中途半端なのよ」
おい、そこのクリスレイン。失礼千万もいい加減にして欲しいぞ。
どう考えても称号のことに決まってるだろうが。プレイヤーについてる称号の知識についてならある程度は知ってるし、そもそも『無限なるカバン使い』は持ってるから言ってるだけ、……いや待てよ?
この称号が、NPCにも適用される、というのは『ふりーわ』では何も言ってないな。
注釈すらない。当たり前だ。
あくまで『称号』はプレイヤーのみに与えられていて、NPCにおいては確かに能力としては存在しているが、それが『称号』ゆえの能力とは名義つけられていなかった。
ということは、だ。
僕の『称号』と彼らNPCのスキルとは名義が違う。正確には違う、かもしれない、だ。
あくまでその可能性が存在するならば、もしかしたら、NPCのスキルの能力そのものも、『称号』の能力と違う可能性が、ある。
この推測の根拠はプレイヤーの特権である、例えばおみくじシステム。
皿に言えば先ほどの村長とのやり取りからNPCには称号システムも存在しない、のだろう。
ということは、まあ、つまるところ、あれだ。
うわ、何それってやつ。僕だけ知ってる僕だけの攻略法という名の『ふりーわ』知識。
そうなると、だ。
僕だけ強くて世界制覇とか、どんな中二さんよ?
申し訳ないけど僕は受験生。勉強しないといけない年頃なんだよ。
早く日本に帰らないといけないのに。あ、神をぶん殴ってからだけど。
「ああ、『初心者さん』でよくもまあ、こんなところにしかも貴重な薬まで……。何はともあれお礼を」
「お礼!? じゃ、靴ください! いい靴を! 切実に! 本気と書いて、もとけ、と読んでもいいくらいマジで!」
「おおっ? い、いいぞ。それくらい大したことない。ミリア」
「はい、あの靴ですねあなた」
ミリアと呼ばれた女性、――クリスを大人にして、もうちょっと女性らしさを強調して、おっとりさを加えたら、こうなるだろう、という栗色ウェーブのセミロング。
そして、それなりに体格のいい爽やか系の夫。
人生勝ち組か。いや、村長の時点で勝ち組なんだろうけど。ハハハハハハ、リア充爆発しろとは言わないぞ? この勝ち組め爆発しろ。
っと、その爆発しやがれ、もとい、勝ち組から生まれた、凶悪なる、いやもとい猪突猛進のじゃじゃ馬ガール。
「なによオサムその目は」
「いや、強く生きろよ、みたいな」
クリスの今後の心身共々の成長を期待しよう。
そうして、目の前のテーブルに置かれたのは、靴。
識別しなくても分かる。
某メーカーをパチったようなスニーカー。
まさか、と思うが、いやそんな偶然があるわけがない。
……識別してみるか。やな予感はぬぐえない、だが! 男なら進むのみ!
『スニーカー』
よし! おかしい名前はない! タダのスニーカーじゃないか! ハハハハハ! 脅かしやがって!
全く、タダのスニーカーに恐れるものなど何もない!
『スニーカー』:ここではないどこかで作られた、ただ1つの靴。
選ばれた者にしか履けないが、大体履ける人の元へ、かつとんでもなく靴が必要な人にし
か履くことを許されない、いわば究極のマジックアイテムの1つ。ゆえに壊れません。
どんな場所でも悠々自適にダメージレスな徒歩の旅から凶悪な敵の討伐までこれ1つ。
誰だよ! タダのスニーカーって思った奴! 出て来い! 僕だ! なんでだよ!
いや、助かるけど! 凄く助かるけど!
まさか、神め。
ひのきの棒、スニーカーとなれば、後は布の服かステテコパンツ、ナベのふた、中華なべとかを装備道具として用意してないだろうな。『ふりーわ』で噂されていた実装予定の武防具たち。
もしそんな装備をしてたら、違う意味というか、勇者だな。
……僕だったらなりたくないなそんな勇者。もしそんな装備を手に入れたら、それで神を殴ることにしよう。
こっちも屈辱だがそっちも屈辱だろ?
「多分、これは君にしか履けないだろうというか、靴なのは分かるが、村人全員が履こうとしても駄目だったんだ」
「いや、それ呪いとかも考えません?」
「その線もあったろうね。だが、履けないなら履きたくなるもしくは履いた姿を見たくなる、それが……、そう! 人間!」
目が輝く村長。そんなガッツポーズみたいな気合入れながら言わなくてもいいって。
うん。村長、あなたのそんなDNA、娘がしっかり引き継いでます。
なので、極力抑えてください。
「まあ、そういうやつなら、頂きます」
とにかく ようやく ねんがんの くつ を てに いれたぞ !
クリスマス? そんなものがあると思うな!
クルシミマス? あ。それはある。日常的にある。困るくらい売るくらいある。
ベリークルシミマスってやつですね
あ、皆様にはメリークリスマスで。




