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15 ようやく村と親子再会

月一ペース(泣)

神は、殴る。2発殴る。

そう決めた。


殴ったね! 親父――、とか言ってきたらもう1発殴る。


道具袋にカウントされた『天神薬アフォナー』。9本。

空間に浮かんでいる文字だけのそれを、見て。


僕は決めたのだ。こんな危険なものを持ったままはごめんだ。



「ねえ、スラリーダー。スライムのみんなでこれ飲もうよ」

こんなやばいのは早く消費したほうがいい、と。




というわけで。

これでどうにか3本消化。

クリスレインには飲みかけのを1本渡してるから、残数6。



ああ、こんなやばいのは精神的に毒だ。早く何とかしないと。

中二病をこじらせた奴への対処みたいに早く何とか!



なお、当然なのだが。

スライムたちがパワーアップしていたが、それはそれ。

僕のレベルとか、いえ、もういいです。そっちのほうがそんなあほなー、だよ。



神め、絶対殴るからな。2発だ。絶対殴ってやる。



そして、ようやく着いた村。その門。

門番なんていませんね。村にそんなのを期待なんてしてませんよ? ええ、してませんとも。

頼むから真っ当な普通の人を。


クリスレイン? もう少しおしとやかを手に入れて欲しい。

レベルアップで手に入る……わけないけどさ。




村の門には「ようこそレイン村へ」。


日本語。表記がひらがなとカタカナと漢字。


……。日本じゃないのに! 日本語!

やはりここは『ふりーわ』か! そうなのか? やっぱすぐにログアウトを!


できなーい!! なんでだよ! 村に着いたらログアウトなんてできるだろうが!


あれか! 宿かやっぱりモノリスかそれとも何か! 寝ないと駄目とかか!

早く受験勉強に戻らないと! 

受験勉強は一流アスリートの日常と同じみたいなもんなんだぞ!

1日の遅れは3日くらいかけないと戻せないんだぞ!


もう『ふりーわ』はいいから早く! ログアウトを!





と、思いつつも目の前のイベントは無視できません。

何のって? そりゃあ再会の親子イベントだよね!


「何て無茶をしたんだクリス! お前は死ぬつもりか!」

「うぅぅ、でも」

「でも、じゃないわクリス。あなたが頑張ってるのは知ってるけど、私たちの病気はすぐに死ぬわけじゃないわ。それよりもあなたがそんな危険になって死んでしまうのが、私には自分の死よりも怖いのよ」

「おがああざああああん」


うん。感動。世界名作劇場の感動シーンみたいな感動。

村の皆さんも……って、あれ? 微妙な表情?

そのちらつかせる目線の先は、僕。僕だと?

ははは。僕はタダの初心者さんですよ? そんな目を向けないで。


うーん。僕のようで……どこか遠くを。

あ、違うな、これ。


僕の後ろ……。


軍隊のように整列するスライムの皆様。

一糸乱れない。

いや、軍隊だこれ。


その先頭にいるスラリーダーに、そそっと近づいて一声。

「スラリーダー。ここ、感動の場面だから、ほら、今の状態だと村の人が引いてない?」

「オサム神さま……。多分何やってもここの村の人は引くよ?」

おや? そうなのかな? 想像してみよう。


例えば。

スライムたち大号泣。

感動のあまり、リーダー「感動した」。


うん。想像して申し訳ないけど。

これは引く。



他いこう他!

スライムの祝福編。これならどうだ。


マジシャン部隊の花火。

メディック部隊の神々しい光とか。

ナイト部隊とかの感動の叫び。


引くな。

うん。タダの村人が見たら、そんな魔物にはドン引き。いや逃げ出すな。


……他っ! 次だ次!


スライム大道芸。

何をどうするか分からない。

人型になればいいのか? 大魔術か? それとも建国すればいいのか?



……駄目だもう僕には全て人がドン引くシナリオしか描けないっ!



「……でしょ?」

「これに落ち着くってことがよく分かったよ」

さすがはスラリーダー。リーダーは伊達ではないということだね。

でも、あんまりいい雰囲気じゃないよねー……。

「全体待機! この感動の場面を崩すな! 我らは空気だ! これはオサム神の言葉でもあるぞ!」

ってスラリーダー。その号令はいらない。やめてくれえ。



「で、クリス。あの男の子と……スライムたちは何なんだ? 見る限り悪そうな感じはないが」

「ええ、あなた……って、あのスライムたちもしかして、あの話の」

「お母さん、知ってるの!?」


涙と鼻水に濡れる顔を、飛び込んでいる母の服でぬぐう少女。

その一面を僕は見た。

うん、見てしまった。それはまあ、いいんだろうか? いや、見なかったことにしよう。

感動の場面に、そんな場面はいらない。そうだよね。


「草原の覇者、『極みスライム』よ。しかもそれが軍団……。王都でも防げるかどうか」

「つまり彼らは『極みスライムアーミー』というわけか」


……クリスレインのお母さん、もう少しネーミング何とかならなかったんですか?

そしてお父さんのほう。あんたもネーミングセンス駄目だと思う!

そのままスライム軍団、で落ち着いてもらったほうがこっちも安心だよ!

なんでそこだけ英語にしちゃうかな! 何? そういうところでインテリっぽさを出そうとか思ってる?

甘い! 甘いよ! ただダサいだけだから!


「つまり、『極みスライムアーミーwith初心者オサム』ってことね!」


クリスレイン。何で指差して言ってんの!?

しかも笑顔で!

ほらご両親が『初心者!?』とか驚いてるし! あ、村の人たちにも伝染してるし!


人の職業をばらしやがって!!



って怒りたいけど、やめとこう。

感動のイベント中なんだから。

後からどうなるか覚えとけ……! スライムたちにさっきの汚い場面を言いふらしてやるからな!!

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