鶏ささみって高レベルなの?
「遅れて悪いね」
緩いウェーブのかかった黒髪を靡かせ、晴臣が右手を挙げた。
「地毛?」
白髪隠しの短い金髪。秀之が眉を顰める。
「淳は真っ白だな……」晴臣が言う。
淳の肩まで伸びた髪は、金よりむしろ総白髪。
2025年。
秀之の自宅スタジオに三人は集った。
淳と秀之がユニットを組み、晴臣主宰のイベントに出演する。
晴臣は打ち合わせを兼ねた訪問だ。
◇◆◇
ゴスの帝王曰く
『ハゲは妥協ではなく、まさに王冠』
「やべえ、カッコ良すぎ」感涙する秀之。
「いや、でも、王冠?」首をひねる淳。
「輝いてるな」光を指さす晴臣。
インタビュー記事が映し出されたタブレットを覗き込む。
ほぼジジイの三人。
「尿酸値、気になるんだが」
「逆流性食道炎で喉がイガイガする」
「………」
項垂れる二人をよそに、無言を貫く晴臣。
「もう、レバー食えねえ」天を仰ぐ秀之。
「唐揚げよ、サヨウナラ」遠い目をする淳。
「最近、“ゆし豆腐”なるものがあると知って気になる」微笑む晴臣。
「晴臣、一番不健康そうで健康だよな」
「相変わらずガリガリなのに」
「……そうだねぇ」
秀之と淳は還暦まであと少し。
晴臣はすでに数年前に還暦を迎えている。
「体質?」
「なんで、そんなに健康?」
「元々、味の濃いものと油っぽいものは苦手だから。和食、美味しいよ?」
「大酒飲みなくせに」
「芋焼酎好きだよね」
「今は嗜む程度だよ? いや、いつまで俺を吊るし上げてんの? お前達の不健康は自業自得だろ」
「人間ドック行かないとな」
「この前胃カメラ飲んだよ……」
「全員煙草はやめたけどねえ」
はぁ。
三人同時にため息。
「明日ジムだわ」
「俺、ボクシング」
「そのままちゃんと続けなさい。その後飲みに行っちゃ駄目だぞ」
「「はーい」」
「オッサンが揃って手ぇ挙げて返事すんな」




