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勇者よ、それがお前が望んだことなのか?  作者: 安藤昌益


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ダークエルフ➂

「本当に手際がいいわね。これを見ただけでも、二度目の人生だと分かるわね。」

 スン・インは、センシュウ・イチジツの、人間領域内の領地の一つ、彼の最大の領地である、の様子を見て思わず呟いた。

 彼女の前には、ダークエルフの村というより都市が既に出来上がっていたのだ。あの日から、僅か2年足らずである。エルフは基本的に都市などは作らない。エルフが、というより亜人は基本的には都市を作らない。基本的には作らないというのは、集落、村が大きくなって、かつ周囲に砦等の防御施設が作られる、規模の大きい部族長他貴族、有力者の館や神殿がその内部に作られると都市のように見えるし、都市的な機能を多少とも持ち、王都とか首都とか都市として言われることがあることと、人間が作った都市に入り、それを補修、改修した結果に彼ら独特の都市となることがあるからである。それ以外は、彼らの領域にある都市は、人間が作り、人間達が住む都市である。人間達というのは、エルフの領域では人間とハーフエルフということである。それは、ダークエルフも同様である。

 それがここでは都市を作っている。しかも、人間の都市というわけではなく、ダークエルフ達の都市というべきものである。彼らもエルフであるから、自分達の聖樹と言うべきものがある。それを中心にした木々が多い、まるで都市の半ばが森のような、都市の中に森があるというものだった。人間がかなり協力しているし、同様にハーフエルフ達もいる。ダークエルフ達も都市建設に携わった。しかし、設計も、建設も、そのための資材の調達、内部の農地や外側に広がる農地、牧場も主導したのは、勇者イチジツだった。ある意味、彼が作ったダークエルフの都市だった。そして計画通り、全てが進んだ。

「全く、4度だというのに、今頃になって気が付くことばかりだな。」

と彼は心の中でため息をついていた。


 ダークエルフの都市と言っても、住んでいるのはダークエルフだけではなく、人間もハーフエルフもかなりいる。そして、ダークエルフ達、そこに住む領民達はコミューンとして、ある程度の自治権を認められていた。あくまで、センシュウ・イチジツが統治者であり、彼の代官が常駐はするが。

 他のエルフ族のコミューンも、より小規模だがあるが、事情は同じである。そして、彼の領内の亜人のコミューンは、ダークエルフを中心としたエルフだけではなかった。ドアーフ、オーガ、オーク、獣人ものもあった。共通するのは、彼らの村。都市が素早く完成したこと、彼らが種族内で冷遇、差別されている部族であることだった。


「く・・・この汚らわしいダークエルフ達の前で微笑むなんて・・・で、出来るはずな・・・なくはない・・・我慢よー!」

「な、なんて醜いオーガの村だなんて・・・ダークエルフの方がずっとましだー!」

「ドワーフの連中はどうしてくさい臭いばかりだすのよ。しかも汗臭いやつらばかり・・・。」

「こ、こいつらオーク?オークの中で醜いと差別されていた・・・人間と見れば・・・少し違うくらい?」

「獣人たち・・・色々・・・ハーフの連中より人間に近い?でも獣臭がするような・・・。ペットと思えばいいんだー。」

と心の中で叫ぶ勇者の妻は、勇者の領地で叫んでいた。

 それでも、ダークエルフ達でさえ、この部族は特にハイエルフとの確執が強かったのだが、彼女を勇者の妻として、はっきりと守るべき最優先の存在として認識していることがはっきりわかったので、彼に同行しての初の視察際には、ちゃんと微笑んで挨拶を返した。ただ、そうして自分の領民でもあると認識すると、信頼感を感じるようにもなっていた。そのことに彼女はこの時ははっきり感じてはいなかったが、次第にそれに侵されていった。


「や、やっぱり・・・ダークエルフもエルフだって分かったわよ。」

といつの間に見つけて、何時の間に作ったのか分からない温泉専用の別荘で、勇者とともに温泉につかりながら、ふてくされるように彼女は認めるように言った。

 ちなみに、自分の領地には、彼は公共の湯屋を作らせてもいた。

「そうさ。大事な君を守らせる、守ってくれる連中だよ。無理はしなくていい。慈愛なんかどうでもいいさ。彼らを利用するために、微笑んで、保護してやればいい。ギブ・アンド・テイクでいいんだよ。そう言う関係が強い。私達の愛の次にね。」

と言って彼は彼女を抱きしめた。

「これは・・・個々の温泉は前の人生で?」

「君と早く楽しみたいから優先したのさ。」

「誰とここで、こうして入ったの?エルフの寿命を得たのでしょう?どこのダークエルフ?」

 疑う顔になっていた。

「君がいなかった世界だった・・・。30年以上後のことだ。多分まだ生まれていないはずだ。今は君がいる。関係ないだろう?」

といって強く抱きしめながら、手の先を胸に、下半身に伸ばした。

「もう、あなたは・・・。私だけよね?」

「当り前さ。」

 2人は唇を押し付け合った。

「ああ、今度はお前だけを妻にする。3度殺したお前を、こうして愛してやるよ。」

と思いながら、すっかり自分に甘え、共犯者となり、それに染まっていく彼女に少し意外なものも感じた。

「こいつの本性というのはどっちだったのだろうか?」

と彼は心の中で思った。いや、猫をかぶっているのかもしれない。短剣を突き刺す直前まで、自分に好意を持っているように振舞っていたではないか?今回だって、自分の転生の話、半ば嘘ではあるが、をされるまでは、殺す気満々で嫌々ながらも、好意をもっている素振りをしていたではないか?とも思った。

 単に自分の半ば嘘の話を信じて、自分とエルフの保身のために振舞っているだけかもしれない。

「それでもいいか。その位の方が、気が楽だし、頼りになるからな。」

と思って、彼女を抱き上げて湯からあがり、寝室に向った。


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