エルフ達の動向
「勇者との仲はいいのか?」
陶器のカップに入った茶をすすりながら、ハイエルフの男は、その茶を陶器製のポットから注いだ侍女に尋ねた。
「いつも、今のような調子で・・・夫婦仲は良すぎるくらいです。夜の方も・・・というより夜以外でも、哀れな声をあげておられます。」
侍女の答えに、
「ふん。そうか。魔王打倒のために、エルフ・・・ハイエルフから選ばれたほどの者が・・・しょせんは女というところか、人間ごときに、勇者とはいえ。」
と吐き捨てるように男は言ったが、侍女もそのことには同意しているような表情だった。彼女はインの侍女である。もちろんハイエルフである。
男はハイエルフの部族長の一人だった。スウ・インや傍に立ち侍女の出身部族である。オウ族の族長マガ・トキである。彼は、インのハイエルフ地域の領地に彼女を訪ねてきていたのである。彼女の屋敷は、勇者の領地の隣あい、というより他成同士になる地位が与えられており、その2つの領地が隣り合っている場所に2人の邸宅があったから、ここは2人の屋敷である。
「本当にお前を連中は殺したのか?」
「何度も言ったと思いますよ。自分を裏切って、殺した女を妻にできるものか?と。部族長様ならどうなのですか?」
スウの質問に対して、彼は少し考えてから、
「俺にはできないな。しかし、それは人間と人間、ハイエルフとハイエルフだ。ハイエルフと人間との関係ではない。卑しい人間にとっては、ハイエルフ、我々のような高貴な存在は、どんなことがあっても得られるのであれば、全てを許すことができるものではないか?その逆は絶対ありえないが。」
「そんなことはないですよ。同じですよ。人間は自分が卑しい存在だなんて思っていませんよ。プライドも無駄に強い連中なんですよ。勇者様が私をとてもとても愛していたからといって、無理だと思いますよ。可愛さあまって憎さ百倍ですよ。私も、そう思いますよ。だから、私は彼と一緒に殺されたんです。だから、彼は私をわすれることかせできずに、今度こそは愛しているというところですよ。」
と彼女は自信満々に言った。
その話をしていた最中、何か騒がしさを感じた。
するとインは、
「あ、勇者様が来たようです。少しばかり席を開けますわね。あなた、部族長様のお世話をお願いするわね。失礼やご負重がないようにね。久しぶりで、彼はきっと私と少しゆっくり2人っきりで話をしたいでしょうから・・・つきあってやらないと、拗ねるので・・・。申し訳ありません。」
と言っていそいそと部屋を行ってしまった。
「しばらくはもどってきませんよ。勇者と2人きりで話が長引くと思いますよ。ベッドの上で、裸になってくんずほぐれつして話をするので・・・。いつものことですよ。」
「勇者を手玉に取ってくれている、というとことろ・・・か?」
「どちらが手玉に取られているのだか・・・。確かに、勇者はべたぼれのようには見えますが・・・。これでいいのかどうか・・・。」
「特に、2人の間には問題はないか・・・。」
「はい。逆に、それが不安です。」
部族長は黙った。その彼の前に、コップを置いて、ワインを注いだ。
「確かに、ワインは・・・味の良いワインを作れるようになりました。勇者、この地でどういうブドウの種があるのか、山ぶどうがどういうものがあるのか、どう混ぜて発酵させたらいいのか、ということを知っていたかのように手際よく・・・。」
「そうか。」
侍女は、彼の諜報役である。スウ・インは、自分の周囲はかなりハイエルフで固めていたし、当然自分の部族のハイエルフ達が大半だった、当初は。しかも、部族側で送り込んだ者達だった。それ故に情報役には事欠かなかった。それでも全員ハイエルフではなかった。ハーフエルフはいたし、人間すらいた。もちろん、自分の部族領の者達だった。それは、人間領にある彼女の領地でも同様だった。彼女が素早く自分の領地の屋敷や領内の管理に必要なハイエルフ達を集めることができなかったからである。ハイエルフの高位の貴族出身とはいえね彼女自身のために自分の家から引き抜ける人数はそんなにいなかったからである。
だが、そのうち彼女は次第に部族から派遣?されたハイエルフ達の数を減らし始めた。自分の家の侍女達の親族、友人、知人関係から人材わ集め始めたからだ。さらにハーフエルフの比率も増えた。ハイエルフということになっていても、他のエルフの血が入っている者を積極的に雇用し始めたからでもあり、ハーフエルフそのものも確実に増やした。それも、自分の部族に関わらず雇用もしたり、自分の部族領の中とは言え、自分の手づるから選んだハーフエルフを雇うようになった。だから、部族長の方により忠誠度の高いハイエルフもハーフエルフもかなり少数派になっていた。それでも、そういう者達を彼女は完全には排除しなかっただけでなく、相変わらず自分の身近や重要なポストに置いていた。
ダークエルフも、複数の人間達もいるが、夫である勇者との連絡役として置いていた。




