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勇者よ、それがお前が望んだことなのか?  作者: 安藤昌益


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エルフ達の動向➁

 その頃、センシュウとスウはベッドの上にはいなかった。ベッドまでいくまで待てなかったため、抱きあって唇を吸い合っているうちに堪らなくなったのだ、その場で相手の来ているものを脱がせ、全裸、完全にではないが、そこまでしている時間にやっぱり耐えられなかったのだ、相手の体を嘗め、揉み、なでまわして、そして対面で一体になって腰を動かしまくっていた。

 ひと際大きく喘ぎ声をあげて、体を痙攣させた彼女は、涎を流しながらぐったりとなり崩れかけた。それを彼は支えるようにして抱きかかえた。

「まったく・・・あなたっていう人は・・・。私がそんなにいいの?飽きないの?」

「その言葉はそっくりそのまま返したいけど・・・。とにかく君を愛しているし、それに私は言いものは使い込めば使い込むほど魅力を感じる性格なんだよ。」

「何か褒められているような、古くなったように言われているような・・・。まあ、あなたが私に夢中だということは分かったわ。私もあなたに夢中よ。安心なさい。」

「安心したよ。もう君を手放す・・・失いたくないからね。」

 二人は、また唇を丹念に嘗めあった。


「そろそろ行くわ。うちの族長をそのまま、置き去りにしておくわけにはいかないから。直ぐすませて・・・、それからゆっくりとね。」

 妖艶な、そして淫乱な顔だった。それは彼にとっても好ましい顔ではあった。

「ああ、私も家臣たちに帰ってきたことを伝えて、指示をしないといけないから・・・それをすませて君の族長に挨拶に行くよ。大事な妻のことを、よろしく頼まないといけないからな。」

「ええ、わかったわ。」

 二人はそそくさと副を着ると、部屋の両側のドアからそれぞれ出た。その際、チラッと振り返って相手を見た。


「ふふ。すっかり私に夢中なんだから、あの人は。可愛いわよね、そして頼りにしているわよ、私の勇者ちゃん。まあ、私も夢中だけどね。それに彼無しだったら、あいつを殺して、生き延びたとしても、ここまでになっていなかったわよね。どうしてあいつを殺すことに、同意していたのかしらね?勇者様、しっかり利用さてもらうわよ。まあ、私も利用されているわけだけど。持ちつ持たれつよね。」

 彼女は、したたか心の中でほくそ笑んだ。勇者を計画通り、他の亜人メンバー達と共謀して殺していたら、

「よくやった。」

と褒められて、恩賞をもらっただろう。地位も名誉も富も得られただろう。各地に領地を与えられるということはなかっただろう。そして、今のようにハイエルフ、いやエルフ全体の上に立っているようにすら思える立ち位置はなかったろう。自分の部族の族長にひれ伏すこともなく、かえって自分が上位に立って話ている。自分の一挙一動、一言が彼らを動かしている。この上なく、あらためて考えると、快感すら感じる。それに領内の発展、勇者と彼が推薦する者達によって、はこういうことが可能だったのか、というものだった。エルフとして求めるものが、新しい形も取って、今まで以上に得られている。決してあっという間に得られたというものではないし、少しづつ進行中と言うところだし、色々と領主としても苦労、気配りもしないといけないが、はっきりとそれが実感できる。かつて自分が満足していたのは、停滞した辺境のように思えてきていた。そして、彼を殺して、無事だったら、あの男、本来の婚約者、正式な婚約はしていなかったが、互いにそう思っていた・・・はずである、花のような美貌の、そして気配りも快活さも聡明さもあるハイエルフの男の顔を思い出したもと結婚していただろう。あの頃は彼に夢中だった、少し夢中だった。勇者の好意を得るため、あくまでも心を許し、油断させるために、彼に近づいて媚を得る行為には、良心すらうずいたものだった。それをエルフのため、ひいては彼のためだと思って耐えたものだった。それが今では、その元婚約者は褪せてしか見えなかった。勇者に抱かれて、この上ない快感を得たことも理由の一つだ。自分が勇者の妻となったと知って、それほど間を置かずに他の女、自分より身分の高い家の出身のハイエルフと結婚した、元婚約者は。それがね自分が裏切った?せいではなく、前々から付き合っていた、自分とどっちが先かわからないくらいだった、悔しいから調べさせたのである、のである、その女と。それも理由の一つだ。さらに彼の妻だったら、今の立ち位置はなかった。それも理由の一つだ。だが、一番の理由は自分の保身、栄達のためにエルフを他の亜人達に売るような活動をしていることだった。それは、勇者が言ったからでもあるし、彼は殺された人生で30年後に転生して自分の元婚約者が他の女と結婚して、エルフを裏切り、他の亜人達の傀儡になっていたと説明した、今、彼女の進む人間との共闘に反対する一派に元婚約者がいるからでもあった。

「私を裏切った。」

という彼女の想いが、彼女はそう思おうとしたとも言えるが、さらに元婚約者を色褪せさせたのである。

 ちなみに元婚約者が結婚する女は、センシュウの言ったとおりの女だった。


「俺は、あの女にずっと未練があったということか?」

 彼女の臭いが自分の体からブーンと鼻孔に感じたセンシュウは思った。かつて、ともに長い時間、苦楽と快感をともにした妻達に罪悪感を感じて、良心に痛みを感じた。彼女達は彼の裏切りを知らない。この彼の人生、世界では彼の恋人にも、妻にもなっていないからだ。だが、知っている、彼は、彼女達の献身、優しさ、支え、肉体の感触、共に得た快感を。

「できるだけ犠牲を少なくすること・・・そのためだ、全ては。」

と思おうとした。

 そして、

「あいつは、こうなる女でもあったんだな。3度殺してようやくわかったということか・・・。まあ、あいつも本当に幸せになれるということだ。30年間生き伸びた・・・2回は・・・本妻ではなかったからな。」

 事実ではあるが、無理やり理屈をつけているとは感じた。それでも、それで考えることは止めにした。


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