ダークエルフ②
「勇者よ。私の何が分かると言うのだ?」
とダークエルフの女が押し殺した声で、抗議するように言った。彼女の目の前には、勇者センシュウ・イチジツがいた。彼の人間界の領地に完成した彼の邸宅、まだ未完成部分があるが、一応住めるということで彼は移り住んでいた。その屋敷の一室に、女ダーエルフのエン・チュウを彼が呼んだのである。彼女は、ハイエルフへの抵抗を続けていたダークエルフの部族を彼女は率いていた。抵抗とは言っても、戦うだけではなく、交渉もしながら、時には従いながら、硬軟両方での対応をし続け、半独立を図ってきたのである。
「ハイエルフの女を妻にして、毎日ベッドで共にして、その女から我らのことをふきこまれているのではないか?」
その言葉に、センシュウは少し心が痛んだ。
だが、彼が口を開いてしばらくすると、言葉が出なくなった。
「な、何でそのことを知っているのだ?」
自分だけしか知らないことを彼が知っていたからだった。
「教えてやろう。お前自身から聞いたんだよ。」
「は?なにを言っている?私は、お前と今日初めてあったはずだ?」
「私が魔王を倒して後、パーティーメンバーの亜人達に殺されて30年後に俺が転生した時。」
「は?」
「私が魔王を倒した後、巧に彼らの暗殺を逃れ、彼らとの共存を望みつつ、彼らに備えた時。」
「何を?」
「私が魔王を倒した後、私を暗殺しようとした奴らを返り討ちにして、亜人達を押しつぶそうとした時。」
「は?何を言いたいのだ?」
「私のよき戦友であり、同志であり、副官であり、側近であり、将軍であり、相談相手であり、信頼していたお前が私に教えたものだよ。そして、今4回目の人生は私は生きている。3回とも大きな犠牲が出た。今回は、それをより少なくしたいのだ。そのためにまた、お前に、お前達に協力してもらいたいのだ。」
「は?」
彼は、その3回とも、彼女が彼の恋人であり、妻であったことは言わなかった。彼女のうっとりしている愛らしい顔、魅力的な裸体、抱き心地、肌の感触、一体感、体温、臭い、喘ぎ声が脳裏に浮かんだ。それを何とか精神力?で押さえつけて、
「人間とともに、ダークエルフとして独立した地位を得るため、4度目も、私に協力しろ。」
目の前のテーブルに両手を押し付けて、彼女の方を見た。動揺しながらも、
「エルフとしての誇りを捨てて人間になれと言いたいのですか?」
彼女達ダークエルフを受け入れ、勇者の領民としてにんげんと同様の権利を与える、人間の間では差別を禁止する等の方針についていっているのだということは、センシュウには分かった。過去3回、彼女は同様なことを詰問してきたからだ。
「エルフとしての誇りを持ち、エルフとして生きればいいだろう。そのことを問題にはしない。人間の間で、人間と平等に暮らせる、亜人達に対して人間と同様に待遇させるためだ。このままエルフの中でエルフではない、汚れた存在として祖別され続けたいか?それとも、人間とともに行動して、ハイエルフなどのエルフ達と対等の存在として生きられる世界を作るか?3回、私とお前はそれを成し遂げた。4回目は、そのために払う犠牲を少なくして、もっと完璧に成し遂げたいと思っている。そのために協力しろ、私の領民として、家臣として、部下として、副官として、戦友として、協力者として。」
妻として、という言葉と衝動を飲み込んで、彼は訴えた。
「私は、ハイエルフの女を妻にした。亜人達の分断のためだ。だが、まだもう一つ理由がある。ハイエルフの長い不老と寿命だ。この戦いは長く、忍耐強く続けなけれればならない。私は、今の時点の私のまま長く生きなければならない。私はあの女と魔法誓約をする過程で、それをコピーした。私と共に、長く、人間とダークエルフのために戦え。まあ、過去に戻って転生すると、かつて彼女に持った、信じていればこそだったが、淡い想いが強く感じてしまったことも、あの魅力的な体が欲しいと思ったのも事実ではあるがな。エルフをこちら側に取り込むという目的は・・・ある意味本末転倒的なところがあることは事実だがな。」
と最後は苦笑いを浮かべていた。
「すまん。お前を裏切ってしまった。」
と言いたくなった。それでも、犠牲を少なくすることを目的に考えたことであるのは事実ではある。
「愛する妻達を捨ててまで・・・。」
彼は、幾度も、そして今も悔やんだ。また、このまま彼女を抱きしめたくなった。その衝動を何とか、彼が抑えつけた時、彼女は片膝を床につけて、跪いた。
「勇者様の目的を達成するために、勇者様の半身としてこの身を捧げます。」
と彼女ははっきりした口調で言った。
「ともに、また戦ってくれ。」
彼は、立ち上がり、テーブルをまわって、彼女の前に立ち、手を差し伸べた。彼女は、しっかりと彼の手を握った。彼はその手を握り返した。温かい福森としっかりと下弾力とそれでいてて柔らかい感触だった。そして、見上げる彼女の顔、その真剣な、真っ直ぐな表情は記憶にあった。この場面は既視感を感じた。3度あった。そして、3回とも彼はこの直後、彼女を強く抱きしめた。その時の彼女の体の感触も、想いも思い出した。だが、彼は踏みとどまった。
「これからの方策を説明する。」




