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勇者よ、それがお前が望んだことなのか?  作者: 安藤昌益


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魔王を倒した

 魔王城への攻撃が始まった。

 人間の軍は火縄銃砲がかなり普及していた。投石器や大小の石弓、破壊鎚も多く使われていたし、魔法や魔法具等の方が個々の銃砲よりも使い勝手がよく、融通がきき、威力が大きい。銃砲が決定的な優位を得ているわけではない。それでも、多数そろえていること、扱う個々の人間の力量、魔力とは関係ないことから、全体の戦力をかさ上げする、人間達の戦力が全体として高まっているということは言えた。とはいえ、個々肉体的な優位、特に異形ともいえる魔族の場合は大口径火縄銃数丁でも倒れない、魔獣もいるし、大きな魔力のある行為の魔族もいる。魔王、いやそれどころか四天王以下でも銃砲は従来の兵器程度の意味しかなかった。そんなわけだかられ、魔石なども組み込まれた魔王城の城壁と守備の軍は、銃砲も加わって総合的増大した攻城力をもってしてもたやすく屈服させれるものではなかった。


「やっぱり一度魔王を倒している。」

 スン・インは、その日何度も感じた。

 イチジツは、渾身の力で魔王城に向けて衝撃魔法での攻撃を行った。そういうことをしては、体力、魔法力を早早に消耗するのは不味いことである。周囲は慌てた。が、その一撃で魔王城の一角が完全に崩れ、一気に城内に軍勢がなだれ込むことになった。魔王城の一番弱い所、魔族兵の手薄な所に炸裂したのだ。この一撃だけで、大局を動かしたのである。全体として、勇者は、力の消耗を最小限に抑えて戦ったいると、彼女は感じた。

 それは、その後の彼の行動を見ると、彼に続いてかけていると、さらに強まった。城内に突入、魔王を求めて駆け抜ける勇者、それに続く勇者パーティ―。心配し、不安を感じて、無鉄砲に考えるより動く馬鹿なんだからと思うメンバーの予想に反して、最短距離で、魔王のいる大広間に突入することになった。

 もちろん無抵抗で駆け抜けめことができたわけではない。立ちはだかる魔族の戦士はかなりいた。どれもが手強い相手だった。少なくとも、見た目でも感じ取れた。特に魔力は、かなりの強い連中が多かった。だが、イチジツは、勇者は瞬殺だった。実力差も大きかったが、相手を完全に知り尽くしていた、見切っていた、というものに見えた、インには。

 そして、とうとう魔王にいる奥の間に勇者パーティーは達した。

 インには、

「やっぱり場所を最初から知っている。」

とはっきり思えた。


 魔王は、人間型魔族だった。その上、巨漢でもマッチョでもなかった。30代半ばのなかなかの美丈夫に見えた、人間的に見れば。

「勇者よ。ここまで余を追いつめたこと、ここまで来ることができたことは褒めてやろう。だが、ここがお前の墓場となる。そして、死体は褒美として丁重に、魔獣に喰わせてやろう。」

と厳かな調子で宣言した。彼の傍らに控える3人の女魔族やその他側近達も、全く動揺などせず、魔王に絶大な信頼感を持っているのだろう、微笑んですらいた。

「え~と、魔王よ。どこかで会ったことがあるか?」

と、なんと勇者イチジツは問いかけた。

「は?何を言っておる。勇者、お前は呆けたのか?」

と魔王は、訳が分からないことを言う、という風だった。その場にいる敵味方全員が同様な思いを持った、インを除いては。


 彼女は思い出した。

 以前、まだ出会ってからさほど経っていない、初めて魔族と大々的に勇者とともに戦った、魔族の部隊を殲滅した、初めて見た、今まで聞いたことすらなかった、の後、戦場にほど近い所で、森の中で急に視界が開けた場所に泉が湧いていて、その近くに美しい花を咲かせて木があった。ここだと思った。彼への好意を示すのにうってつけの、ロマンチックな場所だと思った。もちろん、勇者といえど人間である。ハイエルフの彼女が、ペットに対する以上の好意などは抱くはずもなく、彼女もそんな気持ちはなかった。あくまで、勇者を取り込む、信頼を得る、油断させるためだった。悪寒すら感じるが、自分とエルフのためだと割り切っていた。その時、

「懐かしいな。」

と彼は突然言った、しかも同意を得るかのような調子だった。

「?」

という彼女の顔を見て、

「何課の勘違いだ、多分。記憶が近藤されてしまったようだ。」

と軽く否定してしまった。そもそも、彼女も初めて来たところで、たまたま見つけたのである。

 その後彼女は、

「私は、人間のことなんて、つまらない存在としか思っていなかった。でも、あなたを見ていたら、そんなことは思わなくなったのよ。」

と事前に考えていたことを言うことができた。その時、嫌で嫌でしかたがなかったが、両手で彼の両手を握り、頭を、髪を彼の肩に摺り寄せて、さらに大サービスとして頬にキスして、さも恥ずかしいという体で逃げるように駆けだしてやった。これで彼の好意を得たと思った、確信した。その後は、彼女は彼の恋人に近い存在として周囲に認知され、彼の暗殺に関してはまず彼女が・・・と言うことで了解がなされることになった。

 勇者はしかし、他のメンバーにも、初めてのことなのに、以前にそれがあったということを確認することを彼女は何度か見た。その時は、何を呆けているのよ、と笑っただけだった。それらの好意が、勇者センシュウ・イチジツが既にかつて体験していたことであり、メンバー達もそれを記憶していないか確認したのだということを突然理解した。自分達が、前世なりの記憶を持っていないか、確認していたのだということを知った、と思った。


「では行くぞ。」

と勇者は魔王達に挑みかかった。激しい戦い、息も切らせぬ攻防。パーティーメンバーが入って行けない速さ、激しさ。それは魔王の妃達や側近たちも同様だった。

「見切っている。」

とインには思えた。魔王の攻撃は、ギリギリで空をきり、その度に勇者の反撃で傷ついた。それがある程度続いた後、雄姿やの渾身の攻撃が魔王に炸裂して、魔王は大きなダメージを受けた。それからは、魔法の攻撃が見切られているという感じはしなくなった。受けたダメージで攻撃パターンな変えたのだろう。前回、勇者の前世の二人の戦いとは異なる展開となったからだろう。ただし、受けたダメージで魔王の方がはっきりと守勢に回っているのがわかった。

 魔王が必死に反撃に出て、激しい戦いとなるたびに魔王は完敗し、戦いが苦しくなるばかりだった。

「勇者は本当に既に1度魔王を倒しているのだ。」

と確信した。

「ぎゃあ。」

とインと対峙していた魔族騎士の体が燃え上がった。イチジツが援護、魔王の相手をしながら、してくれたのである。

「私の心配をしてくれる暇があったら、早く魔王を倒しなさいよ。」

と彼女はイチジツの方を見て怒鳴るとともに、迫ってきた魔族騎士を風魔法のかまいたちで切り刻んで倒した。


「く・・・。回復できぬ。」

「悪いな。傷口は、治癒も、回復も、できないようにしてある。そろそろとどめをささせてもらうよ。」

と彼は言って、魔王を蹴りで倒すと、一気に切り刻み、黒墨にしてしまった。魔力も、生命力も感じられなくなっていた。彼はさらに、黒墨かした魔王の遺体を踏みつぶし、さらに焼却してしまった。魔王様の仇、とばかりに挑みかかった3人の妃も躊躇なく瞬殺してしまった。勇者は魔王を倒した。これで、しかし終わりではなかった。まずは、毒の短剣をもつたイン・スウが、いかにも勇者と勝利の喜びを分かち合おうと、勇者が無事で安心したということで、抱きつくという動作を装って、その短剣を突き刺す、その後は寄ってたかって、ということが計画されていた。 


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